表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

魔物討伐、出会い、驚愕

人々が魔術を使う事が当たり前になった時代。

彼らは、各々の魔力に沿ってクラス分けがされており、一番低いDクラス、Cクラス、Bクラス、Aクラス、Sクラスとなっていた。

取り分けAやSクラスともなると、人口はがくっと減り、他クラスからの羨望の眼差しを受けることになる。

実際、力量の差で言うとD<C<B<<A<<<Sとなり、AとSの力の差は歴然。

―――しかし、そんな中で一つの噂が囁かれ始めた。―――


Sクラスよりも更に上のSSクラスと、最強の名に相応しいSSS・・・トリプルエスクラスがある、と。





"静かの森"の奥深く、アトランティア王立魔術学院。

国内随一の魔術学校で、そこの最上級生・・・5回生は全員がAかSクラスという圧倒的な実力を持っていた。

ある日のこと。

アトランティアの4回生が、学院の外に広がる"静かの森"で魔物討伐授業を行った。

4回生には、120人のうち4人のSクラスがいた。

闇属性に特化した、早乙女祐希。

水・氷属性に特化した、東雲佐織。

火属性に特化した、堂嶋銀。

雷属性に特化した、宍戸燐。

この4人の他は、36人のAクラス、そして80人のB+クラスで構成されていた。

魔物討伐の真っ只中、一人静かの森をさ迷う影があった。

「なんなんだよー・・・そもそもスレイプニルなんて激レア、出るわけねーだろ・・・」

8本足の馬のような姿をした魔物、スレイプニルを捜索するその影は、4回生Aクラスの御空伊澄。

既に開始から3時間半が経とうとしているが、一向にスレイプニルが現れる気配はない。

「あぁぁーーーっ!!!マジで何処にいんだよーーーーっ!!」

広大な静かの森に、伊澄の悲痛な叫びが響き渡る。

その時。

「・・・ん?」

伊澄は突然振り向いた。

視界の端で、何かが光ったような気がしたからだ。

しかし、伊澄の背後には何もない。

「気のせいか・・・」

そうひとりごちてまた歩き出そうとすると、今度はぴしぴしと何かが割れるような音が聞こえてきた。

怪訝に思った伊澄が再び振り返ると、そこにはとてつもなく大きな卵が転がっていた。

「・・・は?」

その上その卵は広い範囲にヒビが入ってきており、今にも割れそうな状態になっている。

ぴしっ。

軽い音を立てて、また卵にヒビが入った。

「おいおいおい、嘘だろ・・・」

伊澄の前で、どんどん卵は割れていく。そして。

『・・・かあさま・・・?』

卵の中から出てきたのは、竜の子供だった。

「え、ちょ、何?竜!?」

伊澄は驚いて飛び退った。

竜の子はもそもそと動き回っては”かあさま、かあさま”と言っていたが、はたと伊澄を見据えた。

『誰・・・?かあさまは、どこ?』

「母様って・・・母竜のことか?困ったな・・・」

『ニンゲン?』

「そうだよ」

どうやら竜の子は伊澄に興味を持ったらしい。

「お前、名を聞いてるか?」

竜は普通、卵として生まれ出た時に母から名前を教わるため、この竜も自分の名前くらいなら分かるのではないか。

そう思って出た質問だった。

『リュート』

「リュート、か。いい名前だな・・・俺は伊澄だ。御空伊澄」

『イズミ・・・』

竜の子は何か考え込むような仕草を見せた。

『イズミは此処で何をしていたの?』

「あぁ・・・魔物を探してた。スレイプニルって奴だよ」

『すれいぷ、にる?・・・』

リュートは何か考え込むような素振りを見せた。

暫くすると、ぱっと顔を上げ、

『イズミ、こっちだよ!』

と言って翼を広げた。

「・・・っええ!?」

いきなりの出来事に戸惑いながらも、伊澄はあたふたと立ち上がって走り始めた。

子供とはいえ竜と言うだけのことはあり、リュートはとても速く、伊澄は魔術で補助をしていてもついていくのがやっとだった。

『イズミ!はやくはやく!』

「ちょっ・・・おい、速すぎ・・・」

リュートに手を掴まれ、ほぼ引き摺られるような形で茂みを抜けると、そこには大きな崖があった。

その崖をよく見てみると下の方に洞窟ができており、洞窟の入り口上部には引っ掻いた様な跡があった。

『ここにいる』

「・・・すげーなリュート!入り口の上に引っ掻き傷がある洞窟は、スレイプニルの住処なんだぜ!知ってたのか!?」

『ううん、においがしたんだ!』

「匂い、か・・・。」

竜の一族は嗅覚が優れており、はるか彼方からでも獲物や敵の匂いがわかるという。

「・・・じゃ、ちょっと待ってろリュート。」

スレイプニルは、見つけるのに手がかかる魔物であり、Aクラスである伊澄にとっては仕留めることなど簡単だった。

『うん。まってる』

じめじめとした洞窟の中を伊澄は進んでいく。

やがて視界が開け、大きな空間のなかにスレイプニルが寝ているのが見えた。

息を潜めて印を結ぶ伊澄。

(効けよ・・・!“氷の息吹”!!)

ぴきぴきと音を立てて、スレイプニルのまわりが凍っていく。

ひやりとした空気を感じ取ったのか、スレイプニルが目を覚ますが、その身体はもう凍り付いており、動くことはできなかった。

どさりと魔物は倒れ、それに自分の印を刻み付けて学園に転送した伊澄は、意気揚々と洞窟から出た。

「ただいま、リュート」

『イズミ!おかえり、できた?』

「ああ、リュートのおかげだ」

よしよしと頭を撫でてやると、照れたように頭を擦り付けてくるリュート。

その時、ほんの少しだけ、伊澄の髪が揺れ動いた。

ばっ、とリュートが頭を上げる。

『かあさま・・・!?』

「っおい!?どうしたリュート!!??」

『かあさまのにおいがした!イズミ、イズミ、こっち、はやく!!』

「かあさまって・・・母竜・・・」

伊澄は自分の顔から血の気が引いていくのがわかったが、リュートに引っ張られているため抵抗は叶わず、仕方なくそのままついて行った。

『かあさま!!』

急停止したリュートに、どうした?と声をかけようと振り向いた、その時。

「・・・は・・・?」

伊澄は、自分の目が信じられなかった。

そこにいたのは、こちらに背を向けて立っている、自分の同級生でSクラスの東雲沙織と、



血まみれの雌の竜が倒れていた。



                                      続く







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ