好きな人とキスしないと出られない部屋に閉じ込められたら、両片想いが成立した件
分明、いつも通り眠りについたはずだった。
目を覚ますと――
「……は?」
そこは見覚えのない部屋だった。
壁に貼られた紙には、こう書かれている。
『キスしないと出られない部屋』
「な、なんだよこれ……!」
そして、すぐ隣には――
「んー……これ、どういうことなんだろうね〜?」
同じクラスの女子、園田ヒヨリが座っていた。
淡い空色の髪を指でくるくるといじりながら、いつも通りののんびりした口調でそう言う。
……いや、全然いつも通りじゃない状況なんだけど。
「相沢くんも、寝て起きたらここにいたの?」
「う、うん……」
ヒヨリは壁の紙を見て、小さく首をかしげた。
「“キスしないと出られない部屋”、だって」
「……見えてる」
試しに黒い扉を押してみるが、びくともしない。
「……ダメだ。開かない」
「そっか〜」
軽い返事。
……いや、もうちょっと焦ってもいいんじゃないか?
視線が合う。
ヒヨリの表情は、相変わらず穏やかだった。
(さすが園田さん……落ち着いてるな……)
「じゃあやっぱり」
彼女はあっさり言った。
「キス、するしかないよね?」
「っ!?」
思わず声が裏返る。
「そ、それって……俺と、ってこと?」
「うん。だって出られないし」
あまりにもあっさりしている。
「園田さんは……その、嫌じゃないの?」
「んー?」
少し考えるようにしてから、ヒヨリは微笑んだ。
「嫌じゃないよ?」
「……っ」
心臓がうるさい。
「ちなみに私、キス初めてだよ?」
「お、俺も……」
「じゃあ一緒だね〜」
そう言って、ヒヨリは一歩、距離を詰めた。
「男の子のほうが、リードしてくれると嬉しいな」
「な、なんで俺が……!」
でも、もう彼女は目を閉じている。
……逃げられない。
覚悟を決めて、ゆっくりと顔を近づける。
鼓動が、痛いくらいに響く。
そして――
そっと、唇が触れた。
柔らかかった。
ほんの一瞬なのに、頭の中が真っ白になる。
離れたあとも、しばらく言葉が出なかった。
「……これで開くかな?」
ヒヨリがそう言った直後――
ガチャン、と音を立てて扉が開いた。
「……開いた」
「ほんとだ〜」
ヒヨリは立ち上がり、こちらを振り返る。
ほんの少しだけ、頬が赤い気がした。
「ねえ、相沢くん」
「な、なに……?」
「さっきの、初めてって話……本当だからね?」
「う、うん……」
彼女は少し照れたように笑って、言った。
「だから――責任、取ってほしいな」
「え……?」
「つまり」
一歩、近づいて。
「付き合ってほしいってこと」
頭が追いつかない。
でも、答えは決まっていた。
「……うん」
ヒヨリは、いつものやわらかい笑顔で頷いた。
そのまま、ほんの少しだけ顔を寄せてきて――
「これで、やっと素直になれたね」
さらに、小さな声で囁いた。
「ちゃんと、二人きりにしてあげたんだから」




