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好きな人とキスしないと出られない部屋に閉じ込められたら、両片想いが成立した件

作者: Romanoff726
掲載日:2026/05/06


分明、いつも通り眠りについたはずだった。


目を覚ますと――


「……は?」


そこは見覚えのない部屋だった。


壁に貼られた紙には、こう書かれている。


『キスしないと出られない部屋』


「な、なんだよこれ……!」


そして、すぐ隣には――


「んー……これ、どういうことなんだろうね〜?」


同じクラスの女子、園田ヒヨリが座っていた。


淡い空色の髪を指でくるくるといじりながら、いつも通りののんびりした口調でそう言う。


……いや、全然いつも通りじゃない状況なんだけど。


「相沢くんも、寝て起きたらここにいたの?」


「う、うん……」


ヒヨリは壁の紙を見て、小さく首をかしげた。


「“キスしないと出られない部屋”、だって」


「……見えてる」


試しに黒い扉を押してみるが、びくともしない。


「……ダメだ。開かない」


「そっか〜」


軽い返事。


……いや、もうちょっと焦ってもいいんじゃないか?


視線が合う。


ヒヨリの表情は、相変わらず穏やかだった。


(さすが園田さん……落ち着いてるな……)


「じゃあやっぱり」


彼女はあっさり言った。


「キス、するしかないよね?」


「っ!?」


思わず声が裏返る。


「そ、それって……俺と、ってこと?」


「うん。だって出られないし」


あまりにもあっさりしている。


「園田さんは……その、嫌じゃないの?」


「んー?」


少し考えるようにしてから、ヒヨリは微笑んだ。


「嫌じゃないよ?」


「……っ」


心臓がうるさい。


「ちなみに私、キス初めてだよ?」


「お、俺も……」


「じゃあ一緒だね〜」


そう言って、ヒヨリは一歩、距離を詰めた。


「男の子のほうが、リードしてくれると嬉しいな」


「な、なんで俺が……!」


でも、もう彼女は目を閉じている。


……逃げられない。


覚悟を決めて、ゆっくりと顔を近づける。


鼓動が、痛いくらいに響く。


そして――


そっと、唇が触れた。


柔らかかった。


ほんの一瞬なのに、頭の中が真っ白になる。


離れたあとも、しばらく言葉が出なかった。


「……これで開くかな?」


ヒヨリがそう言った直後――


ガチャン、と音を立てて扉が開いた。


「……開いた」


「ほんとだ〜」


ヒヨリは立ち上がり、こちらを振り返る。


ほんの少しだけ、頬が赤い気がした。


「ねえ、相沢くん」


「な、なに……?」


「さっきの、初めてって話……本当だからね?」


「う、うん……」


彼女は少し照れたように笑って、言った。


「だから――責任、取ってほしいな」


「え……?」


「つまり」


一歩、近づいて。


「付き合ってほしいってこと」


頭が追いつかない。


でも、答えは決まっていた。


「……うん」


ヒヨリは、いつものやわらかい笑顔で頷いた。


そのまま、ほんの少しだけ顔を寄せてきて――


「これで、やっと素直になれたね」


さらに、小さな声で囁いた。


「ちゃんと、二人きりにしてあげたんだから」

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