第四部 第六章 揺れる決意
「……教えてくれてありがとう。
そして……黙っててくれて、もっとありがとう。」
亜香里がそう言った瞬間、
胸にふっと暖かい風が通ったような気がした。
俺は少しだけ息を吐き、
ゆっくりと問い返す。
「……亜香里は、どうしたい?」
彼女は視線を落として、
胸の前でそっと手を重ねる。
「……音、聴いてすぐ分かったの。
わたし……三人と一緒にやりたい。」
瑠美が息をのみ、遥がゆっくり顔を上げる。
「でもね……」
亜香里は続けた。
「わたしにも今の立場がある。
しばらく一緒にやってきた人たちもいて……
“今日聴いたから明日から辞めます”なんて言えない。」
その言葉はとてもまっとうで、
誠実そのものだった。
だからこそ、次の言葉に力が宿る。
「でも……決めた。」
顔を上げた亜香里の目は、
迷いがそぎ落とされたように澄んでいた。
「次のライブで、ちゃんと“ごめんなさい”って言ってくる。
ケジメつけてくる。」
瑠美が驚いて口を開き、
遥はそっと微笑む。
「……亜香里ちゃん、本気なんだね。」
「本気だよ。」
亜香里は小さく笑った。
そして、その笑みの奥にある震えを隠さずに言う。
「だから……
それまで、待っててくれる?」
俺は即答した。
「もちろん。
待つに決まってる。」
瑠美も笑って頷き、遥は静かに息をついた。
その瞬間、
“まだ三人だったはずの音”が、
四人を迎える準備を始めた気がした。
正式加入は少し先。
でも、心はもう一緒に鳴っている。
ユメトセツナの“第四の音”が、
確かにそこに生まれ始めていた。




