第四部 第一章 揺れた翌朝
第三部まで読んでくださり、ありがとうございます。
ユメトセツナという名の下で、
蓮・遥・瑠美の三人はようやく“ひとつの音”になり、
初めて大きな舞台に立ちました。
CrossPointでの挫折と再起。
不安も迷いも飲み込み、それでも鳴らした音。
そして、その音を確かに受け取ってくれた人たちの存在。
三人がここまで辿りつけたのは、決して順風満帆ではなかった。
ぶつかり、立ち止まり、逃げ出しそうになって──
それでも、最後にもう一度ステージに立つことを選んだ。
それが第三部でした。
そして第四部。
いよいよ物語は “次の段階” に進みます。
三人が自分たちで気づいた、「足りないもの」。
それは、音の隙間を埋めるための技術でも、
人気を上げるための戦略でもありません。
三人の音を“未来”へ運ぶために必要な、
もうひとつの心臓。
──新しい仲間との出会いです。
偶然か、それとも必然か。
彼らの世界は大きく動き出す。
三人の音が出会うべき人に届き、
その人の音が三人を変えていく。
そんな物語が、第四部で始まります。
僕自身、書いていて胸が高鳴りました。
この出会いがなければ、ユメトセツナは
伝説になどなり得ないからです。
どうか、続きを見届けてください。
ユメトセツナの物語は、
ここからさらに加速します。
朝の光だけが、やけに眩しかった。
CrossPoint の余韻はまだ体の奥で脈打っている。
あの拍手も、あの静寂も、三人が同じ呼吸で音を鳴らした瞬間も。
スマホを開くと、通知の数がとんでもないことになっていた。
恐る恐るSNSを開く。
《#ユメトセツナ が急上昇してる》
《昨日のCrossPointやばかった》
《三人なのに音の密度どうなってんの?》
《ギターの声……刺さった》
《ベースの子、プロかと思った》
《ピアノの表現力バケモン》
《顔を出さないバンドでここまで魅せられるの反則では?》
《ユメトセツナ絶対くる》
画面をスクロールするたび、胸の奥が熱くなる。
ここまでの反響を受けたことなんて、人生で一度もなかった。
昼前、店長からメッセージが届く。
《夜、三人とも店に来れるか? 話がある》
緊張というより、期待に近い何かが心を走った。
店に着くと、遥と瑠美がすでに座っていた。
「蓮くん!」
瑠美が手を振る。
遥はスマホを見せてきた。
「見た? SNS……ほんとにすごいことになってるよ。」
「……ああ、朝からびびってる。」
苦笑しつつ席に着く。
少しして、店長が奥からファイルを持ってきた。
「三人そろったな。じゃあ、聞いてくれ。」
テーブルに置かれたファイルは、ずっしり重い。
店長の表情から、悪い話でないことだけは分かった。
「昨日の中継の影響だ。
ライブ依頼、フェスの声、雑誌、ラジオ……
こんだけ連絡が来てる。」
三人は息をのんだ。
「え……こんなに……?」
瑠美の声が震える。
「僕たちまだ三人なのに……?」
遥も言葉を失っていた。
店長は静かに腕を組んだ。
「だからこそ、だよ。
ここから先に行くには “足りないもの” がある。」
誰も反論しなかった。
昨日のステージで、それははっきり感じていた。
瑠美がぽつりと呟く。
「……音の厚み、だよね。」
遥も深く頷いた。
「CrossPoint の広さでも足りなかった。
三人だけじゃ、押し切れない空気がある。」
俺も素直に言った。
「必要なんだよ、もうひとつの……」
そこで三人の視線が、ふと重なった。
一秒の沈黙。
次の瞬間、三人は同時に声を放った。
「「「ドラムだ!!」」」
カウンターの奥で店長がコーヒーを吹きそうになる音がした。
瑠美は机につっぷし、遥は笑いすぎて涙目になり、
俺は手を叩いて笑った。
「やっぱりそれしかないよな!」
「うん……絶対必要!」
遥は拳を握りしめる。
瑠美は少し照れくさそうに言った。
「……ひとり、いるの。
“すごい子”が。」
俺と遥は同時に瑠美の方を向いた。
窓の外では春の風が揺れ、
新しい出会いを運んでくるようだった。




