表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EtR  作者: みんとっ!
2/6

第二話

 日常一


 この日記を書き始めた理由は、僕が学校の男子数人からいじめを受けているからです。


 昨日はお弁当が全部食べられたからとてもお腹がすいていたし、その前は僕が絵を描いていた大事なノートを燃やして消火しなきゃと言って水に浸し、わざとビリビリにされました。


 毎日のように続くいじめは日に日にひどくなっていて、明日が怖くて仕方がありません。


 どうかこんな日々が、人生が終わりますように。



  胸の内に秘めて絶対に外に漏らさないように、昨晩も紙に書き留めて蓋をした。


 母から教わった「人からされて嫌なことは自分はしてはいけないよ」という言葉を守り抜く為に、そして母に心配をかけないように笑顔を貼り付ける。


「おはよう、学校行ってきます」


「行ってらっしゃい、気をつけてね。


 遅くまで遊ぶのもいいけどたまには早めに帰っておいでね」


「…うん。わかったよお母さん、じゃあ行ってくるね」


 登校中によく“意味”について考える、


 ヒトはよく生きることに理由など必要ないと言った。

だが自分はどうしてもそうは思えなかった。

死ぬことにこそ理由など必要ないが、死なない為には苦しくても尚必死に掴み、もがく為の理由が必要である。

ならばそれこそが生きる理由になり得るでは無いだろうか。


 では、僕の生きる“意味”は何なのだろうか。


 まだ見つけられない、もしくは見つけられないことを怖がって探すふりをしている。


 見つからないことを理由にしてゆらゆらとただ生きている。


「…今日は、……何をされるんだろう」


「ねぇ、」


 不意に声がした


「!?」


 透き通るほど綺麗な声


 流れは決して弱くなくとも、泳ぐ魚がはっきりと見えるほど綺麗な川


 そんな声だ


「ごめん、驚かせてしまった」


「い、いやっ!大丈夫!こっちこそごめんね、気が付かなかったよ」


 改めてその少女の方に体を向けた


 目が合った


 白い


 真っ白な髪


 真っ白な肌


 真っ白な服


 例えるならばそれは、




   まるで「天使」のようだった。




「ねぇ、質問してもいいかな。」


「あ、うん!いいよ。」


 少し上ずってしまった。


 それもそうだ


 今目前にいる少女は、あまりに容易く年頃の男の子の初恋を奪い去れる。

そう思えるほど可憐な容姿をしていた。


「なら……」


 ここら辺でこんな見た目の子は居なかった


 道案内か、それともそれ以外か。


 何にせよ最初の出会いは肝心だ。


 この出会いをいい思い出として、或いは……きっかけになんてなってくれたりして──



「君はどうして罰を受けているの。」



 ──最悪だった。


 彼女は僕がいじめられている現場を見ていたのだ。


「ぁ…えっと、その…」


 あまりの衝撃で笑顔が崩れていることに気がついた。


 ただ、もう遅かった。


 落ちた。


 自分の部屋以外で涙を流したのは、一体いつぶりだろうか。


 また一粒落ちる。


 止まらない、こうなってしまったらもう自分の手では止められない。


 嗚咽が、声が抑えられなくなってきた。



 ──────そうだ、彼女。

さっきまで目の前にいたあの少女はどうなったのだろうか。


 目を擦りながらゆっくりと少女の顔を見た。


「え…」


 少女は理由も分からないまま


 静かに涙を流していた。


 少女は自分の涙に触れながら困惑しているようだった。


 まるで初めて見た物を触って確かめる赤ん坊のようになんども、なんども目から流れ出ていることを確認して驚いていた。


 彼女はあまりにも無垢であった。


 そんな違和感を確かに感じながら、でもただ一つ僕の中で変化があった。


 嬉しかった。


 彼女になら、僕の苦悩を話してもいいかもしれない。


 そう思えば、僕らの出会いは思ったよりも悪くなかったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ