不幸な契約を結ぶ悪魔
はあ、と大きくため息を吐きながら悪魔が歩いていた。今日も人間と契約することに失敗して魂を取れなかったのだ。
どれだけ好条件を示そうとも最後には「でも死んだら魂を取られるんだろ?」と言われて断られてしまうのだ。
誰かとても切羽詰まっていて簡単に契約させてくれる奴はいないものか、そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていた悪魔の耳に、誰かが助けを求める弱々しい声が聞こえてくる。
悪魔はしめた! と考えると、すぐにその声のする方へと走っていく。助けを求めているのならば助けることを条件に簡単に契約が取れると考えたのだ。
そして悪魔は、地面に倒れている声の主を見つけると、嬉々として契約を持ちかけた。
それから百と数十年の時が流れ、悪魔はあのとき契約した女性に話しかける。
「おい、あんた、いつになったら死ぬんだよ」
「さあてねえ」
楽しげに笑いながら答えるのを聞いて悪魔はため息を吐いた。
よりにもよって人に化けてイタズラをしていた化け猫と契約してしまうとは。一体こいつに寿命というものがあるのかどうか。
しかも寿命があったとしても、猫は九つの命を持つと言うではないか。
悪魔が魂を取れるのは、まだまだ先になりそうだ。
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