表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あいしていると伝えたくて  作者: さこと
1/7

第一話

シファラは生まれてからずっと、黒い壁に囲まれていた。ジメジメしたそこには、足のたくさんある虫ぐらいしかいない。真っ暗な空間では、足の数などわからぬが、近くで見たときに、なんとなくの形はわかった。

シファラはまだ話すことができない。話しかけてくれる人がいないからだ。3日に一度やってくる人間は、食べ物を渡すとさっさと立ち去ってしまう。

シファラは知らないが、食べ物は、保存食で最低限の栄養があるが、おいしいものではない。

シファラには強い感情がなかった。暗闇で、寝ているか、食べているか。自分が何歳かも知らないシファラはほとんど何かを考えることができなかった。


「生きているんでしょうね?」

低い声だったが、シファラにもちゃんと聞こえた。そして、扉が全開した。明るい。

シファラは目を閉じた。

「なんてことだ!私の姪をこんなひどい目にあわせていたなんて」

シファラは叫び声に驚いてかたまった。

「シファラ、私のかわいい姪っ子」

その声に、シファラがゆっくり目を開くと、そこにはキラキラした男性がいた。


キラキラした男性は、シファラが初めて見る人間だった。何かを言っているが、シファラにはほとんど理解できなかった。

「兄さんの子どもに間違いないのに、ひどすぎる。私が連れ帰る」

「待ってください。公爵様がお帰りになってから」

マンタス公爵家の執事バローは、必死に止めるが、男性は黒い部屋に入ってきて、シファラの頬に触れた。

「今日は寒いのにこんな薄着で。とてもこんな牢屋みたいなところに置いて帰れない」


「シファラ。僕は君の父の弟だよ。リュート・グロリアスっていうんだ」

優しく話しかけながら、リュートはシファラを抱き上げた。たしか10歳になるのに、

肉はなく、骨だらけという容貌に、兄とはいえ、許せない気持ちが強くなる。

「もう何一つつらいことはないからね」

キラキラした男性に言われて、シファラは首を振った。

「ない。シーちやう、ここ、いりゅ」

リュートはシファラの幼いしゃべり方にまたぶり返しそうな兄への怒りをおさえて、

優しく微笑んだ。

「シファラは君だよ。ちがわない。

僕と新しいおうちに帰るんだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ