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2. 翼竜の祖先

 この頁には私の勝手な想像を書いています。

 翼竜の翼が空を飛ぶために使われていたことは、古生物学者たちの定説になっています。ですがその翼は、初めから空を飛ぶために発達したのでしょうか。


 翼竜の翼は、手の薬指 (前肢の第四指) が長く伸びて、そこに膜が張ってできています。一方、ラゲルペトン科の手の薬指は、他の大勢の爬虫類と同じように短いままです。


 翼竜とラゲルペトン科をつなぐ翼竜の祖先の化石は、今のところ見つかっていません。中途半端に指が伸びていて、中途半端に膜が張っていたと考えられていますが、そんな手がなんの役に立つのでしょう。長い指は地面を歩くのに不便ですし、小さな翼では空を飛べません。


 私は、翼竜の祖先はまず薬指が長くなったのではないかと考えています。木の上で暮すイグアナは、後ろ足の薬指 (後肢の第四指) が長くなっています。イグアナが枝に摑まるように、翼竜の祖先も長い指で枝に摑まっていたのではないでしょうか。


 長い指は食べ物を探すのにも役立ちます。アフリカのマダガスカル島にはアイアイ Daubentonia madagascariensis という猿が暮しています。日本語の名前はユビザル (指猿) です。名前の通り、アイアイの手の中指 (前肢の第三指) は細長く伸びていて、これを木の穴に差し込むことで、中にいる昆虫を引っ張り出して食べるのです。エピデンドロサウルス Epidendrosaurus という小さな恐竜も手の中指が長くなっています。この指の本当の使い方は分っていませんが、古生物画家のルイス・V・レイ先生は、エピデンドロサウルスが長い指で昆虫の幼虫を引っ張り出している絵を描いています。歯の形などから、古い種類の翼竜は昆虫を食べていたと考えられていますから、翼竜の祖先もアイアイと同じような餌の採り方をしていたのかもしれません。


 腕の膜は、指が長くなった後にできたのだと私は想像しています。猿の中には、木から木へと跳び移るのが上手い種類がいます。もし、腕に膜が張っていれば、より遠くの木へ跳べるでしょう。猿の仲間ではありませんが、東南アジアにはヒヨケザル (日避猿) Dermoptera という獣がいて、大昔の翼竜のような飛膜を持っています。この翼で木から木へと飛び移るのです。エピデンドロサウルスに近縁な奇翼竜きよくりゆう Yi qi という恐竜も飛膜を持っていました。エピデンドロサウルスにも飛膜があったのではないか、と考える古生物学者もいます。


 私の想像が正しければ、翼竜の薬指が長くなったのは、元々は木の枝に摑まるためです。餌を採るのにも使われたかもしれません。その腕に膜ができて、空を飛ぶための翼に転用されたのだと思います。生き物の進化ではこのような転用がたびたび起っていて、前適応 preadaptation と呼ばれています。

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