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心を通わす一つの方法  作者: 空風
1/1

始まりの日

 大学生になって二度目の春を迎えた。

 大学入学から一年間、できる限り目立たぬように過ごしてきた俺には友人といえる奴はいない。もちろん軽い話をする程度の奴は数人いるが休日友人とどこかに行くこともなくほぼ毎日アルバイトをしている。

「ここの数は分母がこんな風になるから・・・」

「・・・あ!」

 とりあえず説明は理解できたみたいだな

「大丈夫そう?」

「今のところは大丈夫です」

 こっちは注意しておかないと止まっちゃうからしっかり気にしておかないといけないな。


 今は自分が中学のころからお世話になっていた塾の先生に恩返しという名目で大学入学から塾の講師として働かせてもらっている。

「早瀬亜矢、個別指導終わったら次は集団の方にも行ける?」

「わかりましたー」

「あと、今日はできる?」

「明日は2限からなので全然いけますよ」


 この塾の講師のほとんどは俺のことを常にフルネームで呼ぶ穴井先生にお世話になった生徒がそのまま講師になっているので塾の指導や生徒対応が終わった深夜0時頃から講師のみんなでカードゲームや携帯ゲームで遊ぶという習慣がある。大体俺は暇人+友人の少なさからほぼフル参加で深夜まで遊んでいた。

今日も生徒が帰った後校舎長と数人の講師の先生たちと人狼で遊んだ。


大体俺が初日の裁判で即死刑にされるが・・・


 私立の大学に通う大学二年生の早瀬亜矢は人と関わることがとても苦手だ。初対面の人とはほぼ関わろうとはせず、大学でも成績は中の下、グループワークを行う講義はできるだけ取らないようにしている。

人が苦手になった理由は両親の離婚が原因だ。家族は両親と姉、妹、そして俺の5人家族だ。離婚の際に姉は母親に、妹は父親に引き取られていった。俺は両親のどちらも選べずに無理を言って一人暮らしをさせてもらっている。姉である優美は3歳年上ですでに働いており、妹の咲は今年から大学生になる。

つい先日まで一緒に住んでいた家族が瞬く間に壊れる姿を見て、人と関わることがとても不安になり避けるようになった。もちろん完全にかかわらないということはできないので人と関わる際はスイッチをオンにして関わるようにしている。

そんな俺でも唯一といっていいほど素で関わることができるのが動物たちだ。犬や猫、ハムスターなど一般的に飼われるペットが好きでよくペットショップに行き眺めている。

家では飼えないからな。今住んでいる部屋がダメなわけではないがたまに家に来る姉と妹がどうも俺がペットを飼うことに反対しているだけなんだが一緒に暮らしていく家族ともいえるペットが嫌われるのは嫌なのでおとなしく家で買うのは控えている。


今日も塾で講師の人たちと人狼ゲームで遊んだ後一人帰宅しているとうちの隣の公園から猫の鳴き声が聞こえる。

草むらを覗くと小さな真っ白い子猫がうずくまっていた。


「小さな声だが、聞こえてよかった。どうやら親とはぐれてしばらくご飯を食べてないのか。うちにくるか?」

子猫はかすかに俺の目を覗くと小さく頭を上下に振りうなずいたように見えた。



この子猫との出会いが良くも悪くも亜矢とその周りの人たちの人生を大きく変える。亜矢の周りに集まり始める動物たち、そしてなぜか近づいてくる同級生や教え子。今までの生活から考えられないような日々が今始まる。




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