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偽りの愛と欺瞞
俺は『人としての魅力』というものを、自分自身に感じられなかった。
顔がいいわけでもなく、勉強ができるわけでもない。
運動はどちらかといえば不得意で、クラスでも目立つタイプではない。そこら辺の石ころといい勝負だろう。
唯一の得意分野だって、所詮は井の中の蛙に過ぎない。
世の中にはもっと才能溢れる奴がいて、俺はその中に属さないのだ。
兄貴は俺のことを大切だと言ってくれるし、みなき姉ちゃんも優しくしてくれる。
でもそれって――――俺が家族だからじゃない?
俺が胸を張って自慢できるものなど、高遠真尋のなかにはなにもない。
だけど兄貴は違う。
運動も勉強もできて、なにをやらせても一等賞。
みんなに頼られて、夢を捨てて家族を養う強さと覚悟と、度胸がある。そしてすべてを実現させるだけの才能がある。
――――それに。
みなきがずっと側にいて、ひたむきに愛を注いでくれる。
なにもかも。
俺にはないもの、欲しいものを、兄貴はすべて持っている。
死ぬほど憎たらしくて、死ぬほど妬ましくて、死ぬほど羨ましい。
俺は、兄貴みたいな存在にはなれないんだ。