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そっと目を逸らす灯火の光は、しかし瞞し。

 真尋の誕生日は七歳からの例年、兄の慎司と義姉のみなきと三人きりのパーティーを開いている。

 料理好きなみなきがホールケーキや真尋の好物をたくさん作ってくれ、慎司とお金を出し合ってプレゼントが渡された。

 いまでこそ正社員として豊かな生活を支えてくれるふたりだが、学生時代はバイトをいくつも掛け持ちして、ようやっと暮らしていた。

 それでもご馳走はいつもの食事より豪華で、プレゼントだって立派すぎる品ばかり。この日のためにふたりがどれだけ無理をしたか、どれだか時間も手間もかけたか、想像にかたくない。

 なのにふたりとも苦労の跡を見せず、何気ない笑顔で祝ってくれる。真尋がこの世に生を受けたことを、心の底から喜んでくれている。

 大切に想ってくれているんだ、と単純だけど改めて実感できた。

 ケーキの上で揺れる蝋燭の灯火が、三人の顔を穏やかに照らす室内。

 たった一日だけだが、一年でいちばん恵まれた日。

 だけど同時に立ち篭める黒い靄が、その輝きを曇らせる。

 ――――本当に欲しいものは、いくら足掻いても手に入らないから。

 頼りなくか細い蝋燭の火が消えてしまったら、きっと……。

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