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文芸部にて  作者: おじん
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私の好きなこと

 美術館の建物に入ると先輩は慣れているのか私のチケットも買ってきてくれる。

 快晴の休日だという理由もあり人は多くはない。私と先輩は2人でじっくりと鑑賞していく。フミ先輩は簡単な説明をするだけで多くの事は教えてくれない。私の考えることを阻害しないように配慮してくれているのだろうか。

 

やっぱり先輩は私より多くの事を知っている。


 出口から出てきたときには先輩を見ていたのか、作品を見ていたのか分からなかった。


「せっかくだから何かキーホルダーでも買おうよ」

出口には美術館のショップが開かれている。私は手を引かれて中に入る。普段の先輩と比べてテンションが高い。


「いいですけど、そうだな」

フミ先輩の選んだキーホルダーを見る。フミ先輩が美術館の中で一番多くの時間を使っていた作者の代表作をデフォルメしたキーホルダー。私たちが生まれるずっと前に活躍した芸術家らしい。


「じゃあ、私はこれかな」

ひとつのキーホルダーを持ち上げる。先輩は私が何を選んだのか気になるようだ。単純で浅いと思われたくなかったのだが、これが好きだと思ったのだから仕方がない。


 アナログが多いなかでコンピューターで作品を作る若い芸術家の作品をデフォルメしたキーホルダー。


「それかわいいよね。古実さんにぴったりかも」

からかわれているのか褒められているのか。嫌な気持ちにはならない。


 それからスマホのアクセサリーとしてストラップを付ける。先輩は以外にも不器用でガラケーのストラップ用の穴に通せないみたいなので私がやることにした。


 先輩のガラケーは相変わらず傷一つない。しかしストラップホールには塗装が剥がれた跡がある。


「ケータイにストラップ着けてたんですが?」

先輩は以前はあったんだけどと短く返す。


 美術館の前のベンチで休憩をする。先輩は美術館の中で脱いだコートをまだ着ていない。体のラインが出ていて部室で見る先輩より光が当たっていて肌が透明感を増している。


なんだか直視出来ない。


「今日はありがとうね。おかげで楽しかったよ」

「いいえ、私も楽しかったです」

ふたりの間に微妙な間が出来てから先輩は話を続ける。


「今度は古実さんの番だね」

私は何の番なのか分からずはてなのマークが頭に浮かぶ。


「次は古実さんの好きなことに付き合わせてよ」

そういうことか。

 確かにそれは自然な流れなのかもしれない。


私の好きなこと。


 それはフルートの演奏。ソロでフルートを吹くのは勇気が出ないからコンサートにでも誘えばいいのだろうか。悩む。


「まあ、そのうち計画します…」

先輩は何かを見通してはいるが踏み込んでは来ないようで笑顔だけ浮かべている。 

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