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キミとボクの星空に  作者: ハルカ カズラ
6/8

VI.気づきの気持ち


 先輩女子たちの囲みから何とか抜け出した僕の目の前には、凛星りせ、彼女がいた。僕は嬉しくて、彼女に近付き声をかけようとした。


「り……」


「……ここ、人たくさんいて通り抜け出来ないし、向こうから回ろ」


「え? いいの? あの子、凛星のこと見てたよ」


「ん、いい」


 彼女は僕を一瞬見たけど、すぐに向こうへ行ってしまった。確かに僕のことを呼んでいた気がしたのに。気のせいだったのかもしれない。だけど、凛星は同じ学校にいるんだ。それだけでも僕は嬉しくなった。


 さっきまで僕を囲っていた先輩女子たちは、チャイムが鳴ると同時に素早く移動していた。僕は自分の教室を何とか見つけ出して、中へ入ることが出来た。


 教室の中を見回すと、少ないながらも僕と同じ男子は、確かに席に座っていて思わず僕は胸をなで下ろした。良かった、女子高じゃなかった。


 それでもどうしてこんなにも女子ばかりが多いのだろう。なんてことを思っていると、教壇に立つ先生がきちんと説明をしてくれてようやく、理解することが出来た。朝にお母さんが言いかけたことはまさに、このことだったんだ。


 僕と同じように、肩身を狭くしたままどうすることも出来ない少数の男子。かろうじて男子トイレはあったけど、そこは先生たちも使うからやっぱり緊張してしまう。


 僕は休み時間にはなるべく、校内を歩き回ることにしていた。早く慣れるのと、天文部があったらいいな。そんな希望もあったから。


 幸いなのかどうなのか、分からなかったけど天文部は確かにあって、ちゃんと部活として活動しているみたいだった。そこに彼女がいるわけでもないのに、僕は勇気を出して教室の扉に手をかけた。


 中に入ろうとする僕に、一人で本を読んでいた彼女は声をかけてくれた。


「希望の子? いいよ、入って来て」


「は、はい。あ、あの、僕は静月しづき……です」


「綺麗な名前だね。と言うか、今年から共学なりたてだけど、キミは平気だった?」


「な、何とか」


「そっか、そっか~あ、ゴメンね、名乗ってなくて。私は2年の月愛しあって言うの。月の愛って書くんだ。キミは静かな月くんでいいのかな? よろしくね」


「は、はい。月愛先輩」


 何をどう言えばいいのだろう。名前を聞けたのはいいけど、話が続かない。緊張もあって、僕は教室の中を見回してしまった。それに気付いて彼女が声をかけてきた。


「ここへは誰かを探しに? それとも星を見るのが好きだから?」


「えと、僕は星空を眺めるのが好きで、だからいつも歩道橋の所で見ていて……」


「ふぅん? 歩道橋って、通学途中のあそこ? 静月くんって変わってるね」


 あぁ、やっぱり違うんだ。そんなことを聞きたいわけじゃ無いのに。やっぱり、凛星じゃないと通じないんだ。僕は誰でもいいわけじゃ無いんだ。彼女の声、彼女との空間が良かったんだ。


「静かな月くん、どうかした? 天文部に入る?」


「あ、あの僕は……月が好きなんです。でも、それだけじゃなくてだから、あ、後でまた来ていいですか?」


「うん、いいよ。考えといてね、じゃね」


 天文部で星空を眺める……僕はそれだけじゃないんだ。眺めるのに、隣には彼女がいてくれないと駄目なんだ。同じ月の名前をした先輩に出会えた。だけど、僕は教室を後にして彼女に会いたい、それだけを思いながら、教室を探し回った。

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