第一話
ふう、どうしよう。メインと並行してやらなければ・・・
俺はどこにでもいる普通の介護職員だった。だが資格は取っていた。資格を持っているといないとじゃ給料に影響があると言われたんで国試を確実に取りに行ける、高校に進学し、卒業の寒い二月、クラスメイト達一緒に電車に乗って試験会場に行き、見事合格した。
そして俺は地元の福祉関係の仕事に就職した。
高校卒業の年に受け、俺がとった国家資格は「介護福祉士」
高齢者を介助する為の知識と技術を持っていると国に認められた者が持てる資格だった。
この資格を取得したおかげで幾分か給料が上乗せされたのが内心ではすごくうれしかった。初給料は応援してくれた家族の為に使った。
それから約一年。現場になれ、今日も一日を終えた俺はクタクタになった体車を運転し家へと帰ろうしてる時だった。ふと思ったのだコーヒーが飲みたいと。
「コーヒーが飲みたいな…」
思いが口からこぼれた、コーヒーが飲みたいという思い。それを口にした瞬間、俺は無性にコーヒーが飲みたくなった。普段は家にあるインスタントのコーヒー(ミルクなしのスティックシュガーを一本)を飲むのだが、今回はコンビニの少々贅沢なプレミアムコーヒーが飲みたくなったのだった。
だが今は先立つモノが少々心もとなかった。財布の中を確認すると千円札が二枚と小銭が少々。
「残金が…二千円と小銭が少々か。後十日以上もあるのからできれば押さえたい出費だが、ええい、願掛けの意味を持って買う事にするか!」
そう決めると俺は家に帰る道すがらにあるコンビニエンスストアに車を止める。車から降り、息を吐くとそれは白い湯気へと変わった。今の季節は十二月、毎日が冷え込む夜に飲むコーヒーは俺にとっては至福だった。
爺臭いかもしれないが、俺のこの時の年は十九だった。年が明ければいよいよ二十歳になる、大人の仲間入りを目の前にした大人と少年の間だった。
「ううっ寒い。早く中に入って熱いコーヒを買って飲もう。」
俺はいそいそと店内へと入り、店員にコーヒーのプレミアムを注文する。注文を受けた店員は慣れた動作で機械を操作していく。今ではどのコンビニでも手軽に本格的なコーヒーが飲める時代だ。そして疲れている俺にとってそれは嬉しい以外の何物でもなかった。
コーヒーが出来上がるまでの時間俺は時間つぶしの為に漫画を立ち読みし、明日の昼食を買い込みレジに向かい財布を取り出した時だった。なんか眩しいなと思い出入り口を見ると店内に、いや正確に言えばレジの前に立っていた俺に向かって車がぶつかってくるのが見えた。
そして次の瞬間車にぶつかり、吹き飛ばされ、背後の商品棚全身をぶつけた。強すぎる痛みが故にか脳が感覚を遮断したのかを、体の感触が何一つ分からなかった。
「ごほっ‥ゲホゲホッ」
ふと喉に何か生暖かい何かがこみあげてくるのを感じ咳き込み、口から何かが出たのは分かった。それは血の塊だった
何とか視線を下にやると、そこには吹っ飛ばされた時に刺さったらしい商品棚の支えが俺の背中から腹に突き抜けているのが見え、服には刺さっている場所から出ている生々しい鮮血がべっとりとついていた。
(‥…こりゃ、やばいな‥‥)
痛みを感じない中漠然と口元を拭おうと、まだ微かにだが感覚のあった左手を(右手は感覚が全くなかった)使い口元を拭うと、左手いっぱいに血が付着していた。紛れもなく自分の血だった。
そしてどうにか視線を動かすと、突っ込んできた車の運転手が車から降りてきてパニックに陥っているの、何処か傍観者の様に俺は見ていた。
そして微かに聞こえる右耳を澄ませば、レジを打とうといしていた店員の人らしき声を聞き取ることが出来た。どうやら店員は多少の傷を負ったが命に別状はないらしい。
「よ‥か‥った。」
俺の声が聞こえたのか店員は瀕死の状態で商品棚を支えるバーに突き刺さっている俺を見て血相を変えてこちらに来た。
そしてどこから持ってきたのか、タオルでバーが突き抜けている腹部へと押し当てる。すぐにそのタオルは真っ赤になり、店員もうやめていいと言っても店員は首を振っていやがり、少しでも血を止めようと圧迫を続けた。
俺はそんな必死に血を止めようとしてくれている店員の顔を見ようとぼやけかけていた目に力を入れる。
何処かずれていたピントが少しずつあっていき、ようやく店員の顔を見る事が出来た。
「お前‥‥雪…奈か?」
その店員は俺の二つ違いの妹の雪奈だった。まさかこのコンビニにバイトしていたとは知らなかった。このコンビニは仕事帰りにあるコンビニ故に俺もよることが多い店だったのである程度店員の顔は把握していたが、まさか妹がバイトしていたとは気が付かなかった。
確かに最近帰ってくるのが遅く心配していたが、ここでバイトしていたのなら買えりが遅くなってしますのも納得だった。
雪奈は身内びいきと言われるかもしれないが自慢の妹だった。両親が共働きだったせいがよくお兄ちゃんと言って俺の後ろをついてくるお兄ちゃん子だった。
そんな妹は市外の専門に近い高校を卒業して就職した俺より遥かに頭が良く、高校は市内の有名進学校に進学た。その中で俺が何よりすごいと思ったのは何より努力家だったことだった。
容姿・顔立ちも幼いころから整っておりいわゆるモデル顔だった。
ルックスも可愛くクラスメイトと周囲から人気があり周囲から本当に兄弟かと疑われた時期もあった。
そして妹の雪奈は現在市内の高校三年生であった。
体は高校生にしてすでに出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるいわゆるモデル体型だった。
まあ、兄である俺にとっては自慢の妹であったのだ。普通の才能と不細工でもないイケメンでもない普通の顔の俺が唯一自慢できるのはそれだった。
しかしそんな自慢の妹の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!、しっかりして!もうすぐ救急車が来るから、それまで頑張って!」
血が付いてしまうというのに妹はそれに構うことなく、少しでも血を押さえようと赤黒くなったタオルを押し当てる。俺はそんな妹にもう助からないと自分の体の事だからか何となく分かったので、残り少ない命を無駄に使わないために、俺はすっかり重くなった口を開いた。
「ははっ・・・・泣いてんじゃねえよ。バ~カ。いつまでお兄ちゃん子でいるつもりだ‥‥もう高校三年生、もう少ししたら社会人になるんだぞ」
少しでもこの重たい空気を軽くするために、そして泣いている妹の為に俺は力を振り絞って口を開き言った。
「あ、お、お兄ちゃん・・・・だ、大丈夫、すぐに救急車が」
そう言おうとしていた妹の頭に感覚がほぼ無くなった左手で頭を撫でる。左手にまだ血が付いていたのか髪に血が付いたというのに妹は嫌な顔を一つせずにただただ茫然とそれを受け入れた。
「ははは…もう俺の事は‥‥いい。早くしないと服と…髪に…血が付いて取れなくなるぞ…」
冗談交じりに妹にそう言いながら、もういいと左手で妹の頭を撫でてやる。妹は唯々俺が頭を撫でるの受け入れた。もしかしたらこれがもう最後になるかもしれないという事が妹も分かってしまったからかもしれなかった。そして妹の眼に映った自分の顔を見て流石に驚いた。顔の色がもはや青を通り越して土色になっていたのだから。
そこで正気を取り戻したのか妹は再び圧迫をしようとした。
「無駄‥‥だ。もう…俺は‥‥助からない」
「そんなことないよっ!まだ助かるよ!だからお兄ちゃんも頑張って!約束したじゃない!私の結婚式の花嫁衣裳を見るって!」
「ああ、そんな…事を…約束‥‥したなぁ」
それはつい一年前、俺が今の職場に就職する前日の夜だった。不安で夜寝付けなった俺は一人ベランダに出て月を見ていた時だった。
『眠れないの?』
後ろから声を掛けてきて、俺の横に来た雪奈に俺は苦笑いを浮かべた。
『ああ、いよいよ仕事に就くとなるって時になんだが、少し怖くなってな』
『お兄ちゃんでも緊張する事ってあるんだ?』
『そりゃ誰しもなれない事、初めてやることに関しては緊張するもんだぞ?』
すると妹は面白そうに笑った。それも目元に涙を浮かべるほどに。
『おいおい、人が真面目に言ったセリフに対して笑うのはないだろう』
俺は笑った妹に対してそう言うと妹は目元に浮かんだ笑い涙をぬぐうと真面目な表情で言った。
『じゃあ、お兄ちゃん、何か目標があったら、頑張れる?』
唐突にそんな事を聞いて来る妹に不思議そうな顔で妹の顔を見るが妹は何処か真剣そうな表情だったのでふざけず、真面目に返答知ることにした。
『そうだな‥‥確かに何か目標的なものがあったら頑張れるかもしれないな…』
『ふ~ん。だったらこれなんかどうか、私の結婚式の花嫁姿を堂々と見れるようになる』
『いや、それは確かに妹の晴れ着である花嫁姿は見たいが、それはどちらかと言えば父さんや母さんが目標にする事じゃないのか?』
俺は妹がふざけているんじゃないかと思いそう返したが、妹の雪奈は首を横に振った。
『ううん、私はお父さんやお母さんじゃなくてお兄ちゃんに見てほしいの。』
『どうして俺なんだ?』
『それは‥‥秘密』
妹はそう言うとさっさと自分の部屋へと戻っていき、ベランダには俺一人が残された。
『秘密って、なんだそりゃ。』
そう言うと流石に春先とはいえ体を冷やして初日を休むわけにはいかない俺も自分の部屋へと戻った。
だが部屋に戻る途中、先ほど妹が言った『私の花嫁姿を堂々と見れるようになる』が頭の中をよぎった。
『とりあえず、何も目標がないからな~、ならいっそ確かに妹の晴れ着を堂々と見れるようになるってのも悪くないかもしれないな』
そう口にすると思いの外悪くないと感じた俺はそれを目標に頑張ってみる事にしたのだった。
「すま‥ん、どうやら…それの‥約束は、無理‥だな」
「お兄ちゃん!しっかりして!ねえ!私お兄ちゃんに言ってないことが‥‥」
俺は意識がかすれていく中微かに雪奈が俺に何かを伝えようとしていたが、俺の意識はそれを聞き取る事無く、意識は暗闇へと落ちていった。
意識が消えかけていた時だった。どこからか優しい声が聞こえた。
『あな‥まだ死ぬには早す‥す。ですので…らあなたを…に転生‥‥ましょう』
それを最後に、俺、四宮裕の意識は闇へと落ちていった。
どうも、前作品を読まれていた、また楽しみにされていた方、本当に申し訳ありませんでした。
ですがこの話も大筋は変わらないように頑張りますので、どうか温かい目でお願いいたします。
第二話に関しましては、ただいま出来る限り合間を縫って作成しております。急ぎますのでどうかお楽しみにいただけますと嬉しいです。
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