冒険者
充と凛は凄い勢いで謝ってきた。
別にいいよ、と返すと大層喜んでいた。こんなくだらないことで喜んでくれるなんて、僕はとても恵まれているに違いない。それか、この二人の頭がイかれているのだろう。
「で?蓮、これからどうする?武器とか買わなきゃいけないけど、多分買えないよね?」
「あ、前龍皇が金だの武器だの亜空間に仕舞ってたんだよ。だから問題ない」
「……マジでチートだね、蓮って…」
心なしか、充がげっそりとしている。凛はキラキラした笑顔浮かべてるのにな。ホント真逆だなこの双子。
亜空間のスキルを発動し、現れたリストをスライドさせる。リストには入っているものの名前と個数が書かれてあった。前龍皇は几帳面な性格だったらしく、亜空間に入っているものが武器、防具、魔法具、薬品、財宝と順番に並んでいたため凄く分かりやすい。
「充は剣がいいよな…凛は杖か?錬金術のスキルも持ってるし…」
「え、いいのか?」
「ありがたいけど…いいの?」
ボソリと呟いた言葉に目敏く反応した二人。頷きつつ亜空間から刀と杖を取り出す。
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宝刀:阿修羅丸
幾万と鍛え上げられた宝刀
阿修羅という鬼の骨で造られている
持ち主を選ぶ
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世界樹の杖
世界樹の幹から削り出された杖
どんな膨大な魔力にも耐えられる
持ち主を選ぶ
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「はい、これ」
「「気安く渡していいものじゃない!」」
怒られた。何故…。
充は手を震わせながら刀を受け取ると、驚いたように目を見開いた。立ち上がり、部屋の隅に行くと片手で勢いをつけて振る。暫く刀を見つめた後、鞘に刀を仕舞い、満足げに腰のベルトに差した。
それを見た凛は覚悟を決めたように杖を握り、立ち上がってから魔力を注ぎ始めた。杖は白く光り、凛の髪や服がはためく。光が消えると同時に凛は座り込み、床に手をついた。
「「大丈夫か!?」」
「うん…ちょっと魔力を消費し過ぎただけ。体が重いや…魔力が0になったら気絶するのも頷けるよ」
「どれだけ消費したんだ…」
呆れ混じりに充が言う。さっき凄い焦ってた癖に…。
「うーん…半分ぐらいかなぁ?契約って結構疲れるんだね」
「そうなのか?俺は刀を振っただけなんだけど…」
「うぅ…お兄ちゃんの馬鹿」
「理不尽すぎるだろ…」
杖を抱きしめながら凛が充に暴言を吐く。充は苦笑しつつそんな凛の頭を撫でた。なんとも仲睦まじい兄妹である。喧嘩するほど仲がいいってか。
そんな兄妹の絡みを横目に防具を身につけていく。
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火鼠の羽衣
どんな魔法攻撃も跳ね返す非常に魔法耐性の高い羽衣
物理攻撃には若干の不安要素あり
物理以外の耐性はどんな防具にも負けない
魔力耐性も高いので魔剣の攻撃なんか余裕で防げる
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上位龍の鱗鎧
非常に薄く軽い非常に物理耐性の高い上位龍の鱗で出来た鎧
ミスリルの攻撃もそう簡単には通さない
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疾風の魔法靴
風属性の魔石が埋め込まれている非常に軽い靴
風を利用して瞬時に動くことが可能
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碧魔宝珠の耳飾り
純度の高い水属性の魔力が込められた宝石で出来た耳飾り
水の精霊が見えるようになる
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こんなものだろうか。…チート度がまた増した気がするなぁ。気のせいか?
さて、次は武器である。
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霊木の杖
数万年生きたとされる霊木から削り出された杖
どんな膨大な魔力にも耐えられる
持ち主を選ぶ
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凛の杖と殆ど説明変わらないな…。別にいいけど。
着ていた貴族の服は防御力皆無だったし別にいらないので机の上に置いておいた。
凛と充にはどの防具をあげようか。リストを見ながら四苦八苦しているといい感じにチートな防具を見つけたのでそれにすることにした。これ以上悩んでたらいつまでたっても決まらなそうだったしね。
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賢者のローブ
非常に魔法耐性の高いローブ
魔力耐性も高いので魔剣の攻撃にも耐えられる
物理攻撃には若干の不安要素あり
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錬金術師の皮鎧+8
物理攻撃に弱い後衛職のための鎧
物理耐性が非常に高い逸品
何かの拍子で出来た
ワンピース型なのは気にしないことを推奨
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花靴+5
エルフ族の少女が作った靴
装備する者が女性なら魔法耐性が上昇する
装備する者が男性なら魔法耐性が低下する
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風魔宝珠の首飾り
純度の高い風属性の魔力が込められた宝石で作られた首飾り
風の精霊が見えるようになる
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これは凛の装備だ。嬉しそうな顔をしながら物陰で着替えてきた凛は凄く可愛かった。
えへへ、と笑った凛はくるりと一回転してみせる。
真紅のワンピースは膝上10cm程の短さで太腿が露になっている。これが鎧だというのだから驚きである。これを作った奴が男なら、そいつはよっぽどの変態である。靴はエルフ族の少女が作っただけあって、女の子らしく可愛らしい。
充は凛を見て唖然としていた。頬が少し赤い。…おい、妹だぞ。見惚れるな。
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剣聖の鎧
ミスリル製の鎧
長年龍皇の魔力を浴びていたため魔法耐性が増加している
魔力耐性と物理耐性も非常に高い
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ミスリルの靴+6
ミスリル製の靴
魔力耐性が非常に高い
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炎魔宝珠の腕輪
純度の高い火属性の魔力が込められた宝石が埋め込まれた腕輪
火の精霊が見えるようになる
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これが充の防具である。まさに騎士といった風貌をしている。男らしさが滲み出ていた。
「わー、お兄ちゃん格好いい!ちゃんと私を守ってね~?私か弱いんだから」
「うん、分かっ……え?か弱い…?」
「何か文句ある?」
「いや、無いです…」
完全に尻に敷かれてんな…。同情するわ、うん。
凛は黒い笑みを浮かべながら充に詰め寄っている。凛って可愛いけど地味に怖いよね…。