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龍皇龍生は異世界で  作者: 溝野彩歌
第一章
7/8

冒険者

ん?と充と凛が俺の方を見る。

「蓮、何で笑ってるのさ」

「蓮君、何で笑ってるの?」

充は不機嫌そうに、凛は少し嬉しそうにしつつ同じような質問を蓮に投げかけた。

蓮は表情が真逆の二人を見てくすくすと笑う。心底楽しそうに笑う蓮を見て充と凛は、まぁいいか、と自己完結する。この二人は蓮が幸せそうであれば、今起こっていることなど別に何だっていいのである。

全く、おかしな兄弟だ。

「なぁ、充、凛___」

蓮はそう切り出し、思うままに言葉を繋げた。

「___俺は、この世界を変えてみせるよ」

自信に満ち溢れた顔をして蓮は言った。

人族は人族同士で戦争をしている。

獣人族は人族から差別を受けている。

獣人族とエルフ族は人族を心底嫌っている。

獣人族とエルフ族は互い同士としか仲良くしない。

龍族は災いを呼ぶとされている。

魔族は世界滅亡を望んでいる。

争いが争いを生み、太古の文明は朽ち果てた。

利益ばかりを追い求め争いを繰り返せば、待っているのは滅びだけだというのに。

五つの種族は決して、全ての種族(・・・・・)と和解の手を結ぼうとはしない。

何故か。

姿形が違うから? 災いの象徴だから? 世界滅亡を望んでいるから?

断じて否である。

この世界に生きる者は争いを望んでいる(・・・・・・・・)のだ。

これは神の悪戯か、それともただのバグなのか。それは誰にも分からない。

だが、蓮は思ったのだ。アマンが自分を選んだ理由はこれではないか、と。

世界を、有るべき場所へ。有るべき状態へと戻して欲しい。

その願いを蓮に託したのではないか、と。

「多分、前龍皇も変えようとしたんじゃないかな。この、朽ちてゆく世界を」

これほどの膨大な力をもっていたにも関わらず、龍皇は死んだ。

寿命ならわざわざ魂を他人に入れてまで生きさせる訳がない。なら、理由は一つ。

龍皇は殺されたのだ。これより遥かに強い、何者かの手によって。

死ぬ時の記憶は無かった。それどころか、数百年の記憶がごっそりと抜け落ちていた。

その何者かが消したに違いない。自分の正体を悟られないように。

きっと、その何者かは再び自分の前に現れるだろう。

そして言うのだ、また返り討ちにしてくれる、と。

そしてきっと、俺はこう言うのだ。

___上等だ、と。

「…蓮、楽しそうだね」

「うん、すっごく楽しそう」

そう言った二人に、蓮はこう返した。

「あぁ…凄く楽しいよ。俺よりずっと強い相手と殺りあえるんだからな」

死への恐怖は不思議と無かった。

それは前龍皇も同じだっただろう。敵に恐怖を抱かせないことは最高の才能といえる。きっと龍皇はその才能に殺られたのだ。恐怖を感じろというには難しい容姿だったのか、それともただ単に恐怖に気づかなかっただけなのか…。

…まぁ、正直、そんなことはどうだっていいのである。

前龍皇が勝てなかった相手に勝つ。そして世界を有るべき姿へと戻す。それが蓮の目的なのだから。

蓮は一人で満足げに頷いた。パチパチと凛が拍手をする。

「蓮君は凄い子だねー私は嬉しいよ」

「凛、年寄り臭いよ?」

「やだなぁお兄ちゃん。女性に歳のことを話しちゃ駄目だよ~? じゃないと…」

うふふ~、と笑っていた凛から笑顔が消える。あ、ヤバい、と充が悟ると同時に鳩尾に凛の拳がめり込んだ。グギャ、と嫌な音がする。…何本か骨逝ったんじゃね?

「こうなっちゃうから、気をつけてね♪」

「ちょ、待って…今のでHP1/4ぐらい削られたんだけど…」

腹を抱え前屈みになった充が涙目になりつつ言った。脂汗をかいている。…早く回復しないとヤバい気がするのは俺だけか?

っていうか、5000も体力削ったのかよ…。…あれ、凛って魔法特化なタイプじゃ無かったっけ?

「今回復する…えっと、《体力回復(ヒール)》」

充の体が緑色の光に包まれた。充の脂汗が引いていく。ちゃんと効いているらしい。

「助かった…サンキュ」

「別にいいよ、大丈夫か?」

「おう、平気だ…一応」

一応って何。と、喉まで出かかったがギリギリで留めることに成功した。聞かない方がお互いの為だろう。

体力は0になったら仮死状態になり、10分の内に《体力回復(ヒール)》か《超体力回復(ハイ・ヒール)》をかけないとそのまま死亡する。魔力は0になったら意識を失うので《魔力回復(マジック・ヒール)》をかけるか、そのまま放置が一般的な対処法である。

まぁ、回復魔法を扱えるのは教会の神官ばかりで回復魔法をかけてもらうのに多額の金がかかるので、体力が0になっても教会にはつれていかず、大体の人はそこで諦めてしまうのだとか。勿論、魔力の場合は放置である。

「よかったねお兄ちゃん。また一つ賢くなったね」

「くそ…妹の癖に女っ気全開にしやがって…」

「何か言った?」

「何でもない、気にすんな」

充の奴、凛に睨まれた瞬間目逸らしやがった。マジか。

…うん、気にしないでおこう。気にすんなって言ってたし。何より充が可哀想だ。

その後、凛のご機嫌が治り、充が一つ賢くなったところで会話が再開された。

…まぁ、おおよそ30分は待ったけどな。

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