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龍皇龍生は異世界で  作者: 溝野彩歌
第一章
5/8

勇者召喚

抱きついてきた凛を支えながら蓮が兄弟喧嘩を聞いていると、扉が無駄に大きな音をたてて開かれた。数名がギョッとし、その大きな腹を揺らしながら入ってくる王を睨みつけている。

…もしかして、こういうのも精神値が影響しているのだろうか。後々詳しく調べてみるとしよう。

「おはよう勇者たちよ!朝の食事はお気に召したかな?」

王座に座り、大声でそう言った王はフハハと笑った。蓮は鑑定の魔眼でステータスを確認する。昨日はやる暇がなかったのである。意外と低いステータスに驚きつつ、蓮は王の話に耳を傾けた。

「んなことはどーでもいいんだけどぉ?っていうか、笑い方キモイし。何でアイツらだけ良い格好してるわけ?あたしらにも用意しなさいよ、勝手に人攫ってきてんだからさぁ!」

さっきの金髪ギャル女がつけ爪を弄りつつ文句を垂れた。恐らく、人に絡まないと生きていけない性分なのだろう。でなければ、頭がイかれているに違いない。

笑い方キモイとか思ってても言うか普通。仮にも一国の王だぞ?

「待遇の差はステータスの差だ。彼らは貴様らの二倍強いのだ、諦めて下がれ」

フハハと再び笑う。冷たい視線が向けられるが、全く苦痛ではないらしい。金髪ギャル女が悔しそうに踵を返し、仲間の元へ向かう。意味分かんないし、とか言いながら携帯を弄っていた。そんな金髪ギャル女を仲間が慌ててフォローする。

あんなところでもスクールカーストは現れているらしい。馬鹿じゃねぇの、仲良くしろよ。

充と凛が蓮を庇うように前に立った。恐らく、王に嫌悪感を抱いたのだろう。この世界に来て更に過保護が増している気がする…と思いつつ、蓮は心のなかで溜息をついた。

「今から騎士たちと訓練をして貰う。侍女が案内をするから着いていけ」

王のその言葉を聞き、蓮は慌てて口を開き、

「お待ちください!」

と叫び、前に出た。

王は一瞬不機嫌そうな顔になったものの、すぐに元の顔に戻した。

「俺はこの城を出ていきたいと思っています。勇者ではなく冒険者になりたいのです」

勿論、嘘である。

王は隠そうともせず不機嫌そうな顔をして蓮を睨みつけた。どう思われているのだろうか。

…このまま追い出してくれれば良いのだが。そう思いつつ蓮はニコニコと笑ってみせた。

大体、蓮は呑気に勇者などやってられないのだ。龍皇のいない龍族が何をするかなど分かったものじゃない。神託を授けるとアマンは言ったが、そう簡単に安心してはいられない。龍族は龍皇がいるから暴走しないのである。さっさと龍族にあわないと手遅れになるかもしれないのだ。

充と凛が動く気配がした。今まで動かなかったのは唖然としていたからか、それとも放心していたからか…。どちらにせよ、今邪魔をされると面倒だからなぁ…どうしよう。

「…一人減ったところで支障は出ないだろう。許可する、今晩出ていくといい」

…マジでグッドタイミングだわ。まぁ、支障は物凄く出ると思うけどね。俺、龍皇だし。

「ありがとうございます!」

一応、礼を言っておくことにした。タイミングバッチリでした、アリガトウ。

…さて、問題はこれからである。間違いなく激怒しているであろうお二人さんにはどう説明しようかなぁ…。

これから起こるであろう説教の嵐を想像し、蓮は冷や汗を流すのだった。


王たちが出ていき、部屋に残されたのは蓮と充と凛だけとなった。蓮が恐る恐る振り返ると、そこには笑顔の充と凛がいた。それを見て、蓮は目の前にいるのが人の顔を被った魔王だと認識する。

「蓮、何であんなこと言ったのかな?」

「蓮君、私も聞きたいなぁ。何で?」

ヒクリ、と蓮は頬を引き攣らせた。ラノベでは主人公はクラスメイト嫌われている決定が多いが、少なからず好かれているのも面倒である。こういう過保護な幼馴染みがいると、特に。

ニコニコ笑いながら(ただし、目は笑っていない)聞いてくる幼馴染みの二人に蓮は恐怖を抱いていた。どう考えても笑って誤魔化せるレベルじゃなかった。下手すれば魔王より怖いんじゃないだろうか。…何それ凄すぎだろ。

既に使い物になっていない頭をフル回転させ辿り着いた答えは、

「独り立ちしたかったから…じゃ、駄目?」

これだった。過保護に拍車がかかってヤンデレみたいになってるからね、この二人。早く独り立ちしてこの二人から卒業したいんですよ、こっちは。

「「駄目。危険すぎる」」

即答だった。解説する暇も与えず、二人同時に拒絶の意を示された。…考え事してたの一秒もなかった筈なんだけどなぁ。

「何したら許してくれるわけ?」

「「一緒についていってもいいなら」」

ホント、過保護通り越してんじゃねぇのこの二人。…今更か。うん…手遅れだよな…諦めよ。

「…それは王様に許可取ってくれる?仮にも俺ら勇者だし」

「別にいいんじゃない?あの豚に従ってたくないし。貞操の危機を感じるの」

「凛、それは言い過ぎだろ?せめて豚みたいな王様にしろ、オブラートに包まなきゃ」

笑顔でそんなことを言い合う二人を見て、蓮は大きな溜息をついた。何だよオブラートって。全然包めてねぇよ、寧ろ酷くなってる気がするよ。

…何でこの二人のステータスに毒舌と過保護がついてないんだろ。意味分からん。

「蓮、やっぱり俺らもこの城を出てくことにしたよ」

「蓮君が何を隠してるか知らないけど、安心して!私はどんな蓮君でも好きだからね!」

…神様、ホントこの二人どうにかして。

蓮はそんなことを思いつつ、再び大きな溜息をついた。

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