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奴隷ちゃん7

 僕(吉田健一)は族長に頼まれてレイヤと魔王への使者として、魔族の国に行く事になった。


「ニーアまでつれてくる事無かったんじゃない?」


 ニーアは僕達二人の子供。もう赤ん坊じゃなかったけど、まだまだ小さかった。


「魔族の国を見せて上げたいから。それに亜人国とかなり深く関わってるようで、私達が亜人国の使者だと言う事は危険じゃないと思う」

「んま大きな国家レベルの策謀とかに巻き込まれるとかはなさそうだね」

「それにしても私ずっと街に住んでたから新鮮。人間の国と本当に変わらない」

「族長に聞いた、元は2種族同じ種族だって話。これで真実味が増すね」


 のどかだ。のんびりと懐かしい。と言うか僕は子供の頃いたわけじゃないな。そもそも大陸が何もかも懐かしい風景なんだ。文明の未発達がもたらすより自然に近いライフスタイル。街の宿屋に何泊か泊まって魔王の住む大きな町に到着する。


「え???」

「どうしたのレイヤ?」

「私この町知ってる」


 そうか、彼女魔族の国に居たもんな。大きな町だった話をしてたから。ここだったのか。すぐには魔王に会いに行かずに僕らは町をぶらぶらした。レイヤが何を見ても懐かしさそうな顔で眺めていた。しばらくしてレイヤは涙を流し始めた。


「ニーアを連れてきて良かった。亜人国に来て正しかったね。こんなにも早く私が住んでた町に来れるなんて」

「人間の国に居たら難しかっただろうね」


 城なのだろうか?もっと何か貴族の館程度のところに到着した。


「レイヤ、これ魔王の城なの?」

「ああこの国の城は多分1つしかないと思う。国境に近い魔王城だけだと思う。複雑な気分。ここ私がメイドとして勤めていた館かも」

「かも?って」

「いやだって、他にも似た館あると思うし記憶違いかも。魔王だよ?」

「まあそうだね。とにかく中に入ろう」


 中に入るとここは魔王の居住地かも?と思わせる。召使と言うよりは部下の様な人がわんさか居て家と言うより官僚組織の建物と言う感じがある。やはり魔王の館なんだと思わせたのは他に入り口近くに衛兵が居て僕らは足止めされたから、話をして後は相手に任せた。


「ああすみません。事前に連絡があれば通したのですが、亜人国の使者でしたか」

「ああこちらこそいきなり押しかけ申し訳ありませんでした」

「亜人国には伝えておいたはずなのですが」

「急遽いつもの使者の人がこれないので、魔族の国と言う事で私達が頼まれました。それでこちらを」

「ああ分かりました。案内するのでしばらく奥の部屋でお待ちください」


 手紙を渡すと、僕らは部屋に案内されて待つことになった。しばらくして対応してくれた人がまた訪れた。


「魔王様は、特に問題が無いとの事で、返答を書いたのでまた届けて欲しいとの事です」


 そういって手紙をまた渡された。


「所で、お名前はなんとおっしゃるのでしょうか?うっかりして聞き忘れていました。以前の使者の方と違うので聞いて来いと魔王様に言われまして」

「はい、私はレイヤこちら夫の健一です。この子が子供のニーアです」

「了解しました。またしばらくお待ちください」


 しばらくすると、なにやら応対していた人が急いで戻ってきた


「レイヤさん、健一さん。お子さんと共に魔王様が是非会いたいと仰るので会って貰えないでしょうか?」

「ええ使者ですから当然だと思います。良いですが、子供まで良いのですか?」

「ああ逆に是非3人と会いたいと魔王様は仰られていたので3人でお願いします」

「分かりました」


 魔王の所に案内された。応対の人が扉を開け去って行ってしばらくするとレイヤが固まっていた。僕がニーアを抱いていたので良かったけど。危なかった。別に言葉は通じるけど、それでもレイヤの方が慣れてるだろうと基本レイヤに任せていた。


「バルムなの?」

「うん、レイヤお姉ちゃん」


 そう返答した声は子供の声じゃないが、何か幼い子と年上の女の会話のようだった。


「レイヤどうしたの?」

「ああ健一さん申し訳ありません。あなたには何がなんだか分からないですよね。レイヤはこの家でずっとメイドをやっていたんですよ。私が子供の頃から彼女の事は知っています」


 バルム・ロンデン。彼が今の魔族の国の王。すなわち魔王。


「魔王って、2,3Mはある巨人だと聞いていたのですが」

「いや、すべてがそうじゃないですよ。それはそれで事実ですけどね。私は他の魔族とそれほど変わりません」


 失礼を承知で心の声で言うなら弱そう…。


「弱そうだと思いました?」

「いえいえ」

「あはは、良いんですよ。そんなには強い魔王じゃないですよ。突然討ち取られた先代の魔王様の中継ぎの様に回ってきた魔王に過ぎませんから。私より相応しい人が同じ時代にいくらでもいると思いますよ」

「でも、人間の国では恐ろしい魔王だといわれてますよ。今までの魔王と違うし、何をしでかすかさっぱり分からないが、結果だけは大した事をしているとの評判です」

「私には私の戦い方があると呑気にやった結果ですね」


 魔王は立ち上がってレイヤに抱きついた。


「会いたかったレイヤ」

「ええバルムどうしたの?」

「まさか結婚して子供まで居るなんて、僕はレイヤが好きだったんだよ。女王として迎えたかった」


 僕はとっさにニーアを庇うように身構えた。


「ああ健一さん安心してください。今更どうこうしようとは思っていません。私はレイヤと一緒になれなくても、生きて再会してまた家族の様に接してくれればそれだけで満足です」


 僕は彼の言葉に嘘があると思えなくて警戒を解いた。


「私は健一が好きで、家族を愛してる」

「うんそれで良いよ。私も君が突然消えてしまって動揺しただけで、思いを打ち明けられなかった事を悔やんでるわけじゃないから」

「えあなたの家でやった事じゃないの?」

「それが違うんだよ。どういう魔法を使ったのか知らないけど、あれよあれよといろいろ決まって君が居なくなった。僕の家がやった事は、それに対して一切邪魔をするなと父から伝えられていた事を守っただけで、しかも僕はまるで知らなかった。知っていたのは、君がもうすぐ居なくなるって事だけだった。その事は知っていた。ただどうやっていなくなるのか?はさっぱり知らなかった」

「魔王様でしょうね」

「おそらく、300年後についてどうやってここまで綿密に人を動かせたのか?さっぱり分からないけど。直接はしらないけど、あの人は本当に凄いね。僕ら魔族も300年なんて生きられないのに、生きられるような魔法を掛けてしまうんだから。ひょっとして彼は転生者なのかい?」

「それは分からない。確かにちょっと今思うとあれは魔王の力と違うと思う」


 しばらく魔王は沈黙した。


「僕はレイヤへの思いはあっさりしてたというわけじゃないです。それでも信じて欲しいのは彼女の幸せな家庭を壊す事と両立し無いだけです。すべてはレイヤに会いたいから今までの僕の戦略はやっただけです」

「なんだって!」


 僕は思わず声を上げた。同じ人を好きになった僕は、今まで魔王が巻き起こした数々の事が一人の女性に対する思いに繋がっていたと聞いて、何か知らないけど心が動いてしまった。嫉妬とかじゃないと思う。


「いやー私そんな対した事はして無いと思うのですが」

「たいしたことだよ」


 レイヤが返した。


「私が何をしたの?そこまで私達って親しかった?」

「レイヤ君が奴隷の魔法を掛けられて心が変化してたの知ってるよ。それでも君を人形だったなんて思ってない」


 魔王が何か言おうとしたが、僕とニーアの方を見て辞めた。


「僕はもう目的は果たした。亜人国に帰るの?」

「はい」


 僕はレイヤの返事を待ってしまった。


「でもこれからも家族として来てくれるよね?」

「はい、私達は何度でも来ますよ。それでも魔族の国には住みません。人間と魔族の間の亜人国にいるべきだと思っています。そして私達があの国を好きなんですよ」

「ありがとう。話題を変えて使者の話しをしようよ。魔族は動かないよ。でもそれで良いの?」

「実は一切その事知らされて無いんですよ」

「良くそれで引き受けたね…」

「ニーアに見せたくて。後族長が私を頼ってるのが分かりました。その思いに答えたいというのがありました」

「私とレイヤの事は知らないんだよね?」

「はい。そういう策略で私をよこしたわけじゃ無いです。いつも皆謎の魔王として居ないんじゃないか?なんて言ってますよ」

「あはは、たまたま会う機会がなかっただけで隠すつもりは無かったんだけどね」


 魔王は手紙を見て


「ええーっとね、僕が推測で話すと族長は僕に借りを作りたくないように見える。だから僕が情報を掴んでも動かないでくれと言う事かと。そこは重要なので書いてないけど知りたくなったから」

「それって私ホイホイ話したら裏切りになりませんか?」

「君の立場が苦しくなるような事しないよ。どんな真意があるのかな?と知りたくなって」

「私がここまで言うのは使者としては失格だと思います。ただバルムと私が知り合いと族長は知りません。だから独断でいろいろ言ってしまいます。健一も協力して?」

「ああ良いよ」

「族長は魔王の事を信用して無いよね?」

「うんそれで良いよ。ただ何を考えてるか分からないは人間の国も同じなので、族長が疑い深いわけじゃない」


 レイヤがしばらく考えて


「私は、二人は直接話すべきだと思う。バルムなら良い子だからね」

「酷いなもう大人なのにレイヤお姉ちゃんは」

「そりゃ確かに使者としては遣りすぎだと思うけど、良いんじゃないかな?」

「うん」


 僕らは、ゆっくりしてきて欲しいみたいに言われたので、あーだこーだいろいろ話した後も、しばらくここでお世話になる事になった。なんとなく僕は族長が僕もついていく事になったのと、ニーアを連れて行くことに何も言わなかった事で、僕らをここに逃がすようにしたんじゃないか?と感じていた。


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