つるはしを持った転移者18ー2
次は時間との勝負。時間を掛けつつ、同時に時間を掛けてはいけない。この間の見切りと王国全体の情報の把握がかなり難しかった。しかし、王国へは情報は行ってるのは分かった。でも思ったとおり動きがすごく鈍い。当然周りの直接的には軍のつながりが無い地域は動かない。
事前にこの情報を掴んでいたのでゆっくり攻めることにした。次の地域の問題は、兵士がばらけて存在する事だ。だから逆に相手を動かすようにした。当然前と兵士の規模が違う。予め調べた貴族の建物を出来る限り破壊する。次に防御のしっかりした軍事施設はすべて壊していく。これを繰り返す間に集まってくる東側の地域の兵士を出来る限り殺す予定だった。
「増援を頼むーーー」
そこら中でこういった伝令が飛び交う。以前と全く戦略が違う。僕らはもうこの地域に存在する兵力を把握してる。亜人部隊500人が、小さな小さな存在を殲滅していく。誰でも分かるのは対抗する数だ。だから彼らは急いで集まろうとする。当然500人を正確に把握なんてさせない。夜明けが来ても全容をつかめる兵士なんていないだろう。
彼ら自身が僕らのために生贄を集めてくれている。ただ大きな問題があって、ゴーレムは攻撃を受けたらいつかは壊れてしまう。だからゴーレムは敵を殺すのが目的じゃない。ひたすら立てこもるための建物や施設を壊してるんだ。これこそがゴーレムを軸にしたポイントだった。集まって欲しいが、実際固まって集まって欲しくないんだ。
夜明けまでに半分以上この地域の兵力を減らして撤退した。2000人居た兵士を約500、600人まで減らした。全滅じゃないのは不満だったが、一般人が多く住む村や町の住民をまとめて殺すなら可能だが、それを避けたので仕方無いと言える。
「この後どうするのですか?」
ウルが聞いて来た。
「しばらく待つよ。王様に亜人国の仕業だと疑惑を持って欲しいんだよ。それまでは動かない。これからはこの各個撃破やらない。僕も兵士すべてを殺すつもりは無いし、かつそれをするなら僕らだってすごい犠牲を強いる。それは避けたい。
ここからはまったく別の作戦になる。だから相手が僕らだと疑ってないのに自分からわざわざ犯人ですと言う様な事は避けたい。王様が疑いを持った瞬間に出鼻をくじくつもりだ」
「そこまで正確にわかりますか?」
「王国全体の軍をまとめるまではかなり準備が居るからね。それを全く秘密裏に遂行するなんて、あの国の軍隊の制度じゃ出来ないよ。迅速に少数で出てきたら叩き潰してやれば良い。なんのために最も森に近い地区を先に潰したのか。一番早く動ける地区の兵力を壊滅させているからね」
しばらくは何も無かった。出来る限り今回犠牲になった亜人の家族の所に見舞った。ゴーレムがかなり大きかったけど、最後の方は人間も集まってきて、結局100人ほどは犠牲になった。この数の兵士を殺すのに100人ですんだというのは大成功だ。しかも防御戦じゃない。相手が固い建物の中で守ってるのにこの結果。
それでも僕は降伏を許さないと言った事に苦しさがあった。全ての亜人が許してくれるのは分かっていた。覚悟の上の作戦だったから。結局僕は自分がしんどかったんだ。降伏を許さない、そうなるなら一人でも多く殺して死ねなんて言うリーダーが全く攻められないっておかしいと思う。
僕は自分でも分かっていたけど、この国で唯一発展させなかったのは宗教だった。必要ないんだ。僕が神なんだから。国が発展する時なんとなく気が付いていた。人間の国を僕は多く模倣していた、その中で宗教が無いけど良いのかな?って、ああくだらないものいらないってすぐに分かった。人間の国の宗教なんて、僕への崇拝に較べたら生ぬるいって分かってしまったから。
せっせと僕は、モンスター娘を増やしていた。食料は十分にある。犠牲になった100人以上を埋めなくてはいけない。後は次の作戦のためにモンスターを狩るのを規制した。完全には辞めさせてない。ただ次は武にも協力してもらうので、大量のモンスターを使うつもりだ。
次がいよいよ本番だ。全く王様に動きは無かったが、僕はせっせと次のための準備をし始めた。
まだ亜人の攻撃との疑惑は出てなかったが、大騒ぎになっていた。特に攻められた地域は補充のため回りの地域に兵士をこちらによこして欲しいと頼んでいた。半農半兵以外に傭兵などもいるのでその辺りは柔軟だった。もちろん十分時間は掛かったようだ。当然多少強引な兵の集め方もしていた。
この国は徴兵制度が無い。あくまで国民の自由意志だった。しかしそうも言ってられないと言う感じだ。やや強制的な軍の参加。もちろん半農半兵なら今までどおり農民も遣れる。強引なからくりとしてその辺り妥協していた。錬度の低い兵が、低いまま放置されていた。数だけとり合えずという事だ。当然だろう。農民は自分達を支える税を払ってくれるので兵隊だけやっててもらった困るんだ。
それは僕達の国も同じだ。だから僕は農民として専門に従事できる数そろえるまで十分待ったんだから。ある程度軍人の数が回復していたが、全く気にしてなかった。
「それじゃ会議するよ」
「4人で良いのか?」
「大雑把な打ち合わせだからね。話し自体は後で皆にするよ。今回一番重要な伝える事は僕が皆と一緒に森から出る」
一番驚いたのはウルだ。
「聞いてませんよ?」
「あれ言わなかった?」
僕は記憶を探っていた。
「言って無いかも…、んま和平条約が目的でしょ?それ僕が直接やるべきじゃない?」
「でも安全が確認された後で良いでしょ?」
「だからそれが和平条約なんだよ…、口約束で危険になったので分かった仲良くしようって言われても意味無いさ。これでも僕一応強いからね。君はその頃の僕と一緒に狩りをしてたんだから知ってると思うが…。あれから健一の力でまた強くなったし。
ああそうだ健一たちに頼まないと。ちょっといろいろするけど、魔族の力要らないからって援軍は様子見してと」
「俺の仕事じゃないのか?」
「待った待った今回戸村君より武こそ作戦の要だからね。それで誰に行ってもらろうか?と思ってて、レイヤ確か魔族の国に行って見たいと言ってたので新婚旅行みたいになって二人で使者として言って貰えば好都合だなと」
僕はスグにいろいろと公式となる手紙などそろえてレイヤたちに頼んで魔王に会いに行ってもらった。子供も連れて行くそうだ。
「中断しちゃったけど、何の話だった?」
「祐二も行くって話しでしょ?」
「そうだ強いから大丈夫。ってそもそも僕一人でやらないって…」
「そうですね、確かにこれ以上言えば祐二の事馬鹿にしてるみたいですね」
「皆弱い族長守ってあげないとって庇護欲みたいのあるからね…」
ウルが納得してくれた。ただ僕も不味かったな勝手になんでも独りで決めてと思われたかも。話したと思い込んでいた。
「えーっと戸村君、要じゃないけど役割はあるからね。その点今回来て欲しいから」
「うん良いよ」
大事な事を伝えたので、後は細かい事の打ち合わせだけした。




