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つるはしを持った転移者18

 人間との戦いを始めた。ウルドの街の西の砦にて


「おい何か近づいてくるぞ」


 夜中の当直、見張りの兵士が魔族領側の西の砦でそれを発見した。だがそれはそれとしか表現できない。暗くて良く分からないのと、全く見た事が無い謎の存在がジワジワと砦に近づいてきた。

 この砦最大で100人ほど立てこもる事が可能だが、平和な今は常時待機してる兵士の数は10人ほどしか居ない。担当となる100人が交代で常駐する事になっている。


「まるで砦が歩いてきてるようだ」


 彼の声に宿るのは恐怖だと思うが、状況だけは任務として皆に見張りの兵士は伝えた。何かが起きてるのは分かるが、具体性に欠けていて、常駐する兵士の反応は鈍い。


 これこそが僕の要とも言える戸村君の巨大ゴーレムだ。


 見張りの兵士ごと砦を思い切り殴りつけた。当然砦の兵士は死んでしまう。僕にはそれが平気で出来る。やらなきゃ家族が殺されるからだ。だが戸村君には本当に悪いと思ってる。そんなに良い気分じゃないだろう。彼も殺されそうになれば反撃するだろう。

 だがこれは弱いものいじめに近い。だがだからこそこれは効果的なんだ。弱いから殺しやすいんだ。僕の目的は兵士を一人でも多く殺す事だから。それこそが数年に渡って待ち続けてきた相手の穴の調査だから。


 どれだけ相手の数が多くてもそのすべてが集まる前にちょっとずつ殺していけば良いんだ。なんて言うのは簡単だ。やっとその方法を見つけたんだ。50%はゴーレムが僕の作戦の要になる。これによって相手の防御壁を壊してから戦いに挑む。そして建物を壊すのを頼むだけじゃない。その時一緒に大量の人を殺して欲しいんだ。


 やっと事態を把握した兵士の何人かは他の兵士にこの事を伝えに行った。わざと逃した。その中でパニックになって逃げた兵士を地上部隊が殲滅する。亜人だ。特に見た目人間に見えて夜目が効くヴァンパイヤで構成されている。圧倒的な力差でそれほど数が多くない地上部隊に誰かを呼びに行った兵士以外殺される。


「君達に死んでくれとは言わない。だが相手を出来る限り殺してくれ。そのためには危険を冒してくれ。それが死に繋がる事になっても。そして降伏は絶対に許さない。それをするなら逃げてくれ。今後亜人全体の被害を抑える作戦で今の君たちはそのための犠牲になるかもしれない。それでも僕は力を貸してくれとしか言えない」

「何言ってるんですか族長。いつ戦うのか?とずっと待ってたんですよ」

「ありがとう」


 かなりきつかった。危なくなったら逃げてくれ、命を大事にと言いたかったが出来なかった。これは本番じゃないからだ。


 集まってきた兵士に対してゴーレムがふんずけて、蹴っ飛ばして、周りの亜人部隊が残らず殺していった。まだまだ亜人部隊の犠牲者は居ない。


「この程度じゃないな」


 ゴーレムからそう声がした。ゴーレムは遠隔操作で小型ゴーレムが周りの亜人部隊と会話を出来る。


 100人ほどこの砦にはいるらしい。殺した人がその数に近づくように回りの探っておいた大きな館をゴーレムが壊していく。予め潜入してる亜人がいる場合は出来る限り伝えてある。ただ具体性は一切無い。察知して逃げて欲しかった。または仲間の一般人を誘導して欲しかった。出来る限り慎重に破壊していく。さすがに一般人の犠牲は減らしたい。


 大きな館を2つ潰したあたりで、集まってきた兵士を70人ほど殺せた。しっかりとしたフルプレートの兵士なども殺したのでそれなりに命令系統の上の物を殺せたと思う。なおかつこういった敵は歩兵複数人と同様の戦力になる。真っ先に殺すべき相手。味方の被害が、2,3人と言う少数で済んだので撤退した。


「ここはウルド最高の防御を誇る砦を軸にした勢力なので少ない。だが、それだけでも脅威になるからこの人数なんだ。数は少なかったけど、難関を容易く無効化したのは大きい。次からこんな数じゃない。同様に攻撃を繰り返す。

ただ次からは場合によっては別の地区からの援護があるかもしれない。そのためそういった動きがあったら中途半端でも逃げて欲しい。今回の作戦のポイントは少数の兵力とゴーレムによる分断した兵士の殲滅だから。集まられるとこっちの少ない兵力がかなり問題になるから」

「数を増やせばどうでしょうか?」

「それは不味い。もし迅速に500人ぐらいを逃がせる指揮を取れるなら頼んで良いか?」

「いえ族長分かりました」


 決死兵ではある。だが降伏を許してない。殺されても良いが捕まってはいけない。そんな事可能なのか?なら可能だ。それが亜人というとんでもなく強い兵隊を軸に立てた作戦だから。明確に捕まえる意思があっても殺すより捕まえるのは難しい。まして、今の段階で破壊と殺戮を目的とした謎の敵を、捕らえると言う作戦で指示できる人間が居ると思えない。


 ただ僕がいった事は嫌味だ。そんな事いえる立場じゃないが、皆従ってくれてる。


 数日掛けて、ウルドの街の防御のしっかりした場所を全壊させ、兵士を300人ほどにしてしまった。これ以上は無理だった。まず近隣の村にいる兵士はさすがに集まりきらない。最後の村が近い北の門は念入りに時間を掛けて攻撃した。こうする事で近隣の町や村から兵士をもってくるため。300人なら上出来だろう。


「ここからが大変だ。すでに警戒されていたが、それ以外に大きな問題がある。王国全体の兵士が来る可能性も捨てきれない。それが機能するなら作戦を大幅に変える。遅かったらいよいよもう一つの地域を叩く」


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