つるはしを持った転移者14
緩衝地帯に住む村の代表者達と話していた。
「今後、緩衝地帯は亜人国の領土として主張するのを止めようと思ってる」
「どういう事ですか族長?」
「3種族の混血が進み、魔族主導で進めてきた魔族の領土も将来的には第4の勢力として、独立または自治と言う方向になるかもしれない。それは将来的に緩衝地域を3種族の自治区として魔族の血を引く子孫達が広げると言う事になるだろう。その時僕はその平和的な種族に対して、亜人として領土を明け渡す事はできないと言えない」
「ですが、私達があそこを開拓してきたんですよ?」
「そもそも僕は皆に大きく支配しろみたいな事を言って無いと思う。それは当時から亜人国の領土として強く主張するつもりじゃなかったから。村を他人に渡せって言ってるんじゃないんだ。残りたいなら3種族の融和地区の一員にそのままなってくれと言ってるんだよ。そして未来も亜人国の亜人でありたいと言うなら帰ってきて欲しい。その時は村の領土を要求するのは無理だ。2つの願いを両立は出来ない」
「そういう事なら問題は無いです。皆に言って聞かせます。私達が帰りたい場合亜人国に帰る場所はあるんですね?」
「もちろんそれは約束しよう。そうならないための最大の問題は人間にある。そこは全力を尽して対抗できるような強国にする。何度も言うが村に残りたい者は残って欲しい。別に亜人国を捨てたとか思わないから。
その時は村に残っても後で帰りたくなったらいつでも帰ってくると良いよ。どうしてもっと早く言ってくれなかったんだとは言わない、後からでも絶対居場所を作ると保証しよう。だから迷わなくて良いから」
不安だと思う。そんな顔をした村の物が安心した顔になった。
「今でも魔族だけが住む地域、人間だけが住む地域。亜人だけが住む地域がある。必ず混血し無いと住んではいけない地域じゃないから。あまり心配しないで欲しいんだ。私も亜人が混血に飲み込まれてるって気持ちは持ってる。ただそれは人間も魔族も持ってる。亜人だけが抱えてる不安じゃない。強制的に交われとされてるわけじゃない。そんなに自分達を追い詰めないで欲しい。
さて、それでも言っておきたいのは、僕達が小さな国の頃から人間と渡り合ってきたのは、魔族が同盟してくれて後ろを守っていてくれるからだ。今更大きくなったので偉そうにするなと傲慢になるのは?どうかと思ってる。
皆から魔族が融和地域を支配してるわけじゃないと聞いてる。あそこは今でも魔族が支配した領土なのにだ。僕は魔族を単純に信じてるわけじゃない。今の魔王は信用できると思ってる。魔王が2種族の融和に亜人を加えてくれて3種族の融和地域を認めてくれた場所だ。その魔王の理想みたいなものを僕は一緒に守りたい。それが苦しかった時支えてくれた恩人への恩返しだと思ってる。
それでも村をスグに魔族に明け渡せと言われたら僕は君たちのために戦うつもりだ」
「族長ありがとうございます」
「ただし、村に残りたいじゃなくて、融和地域に残ると決めたものはもう亜人国の人間じゃない。それは融和地域の住人なんだと思う。その人達に僕が何かいう事は無い。新しい住人として生きて欲しい。
それは置いておいて、あそこは魔王も手放すんじゃないか?と考えています。それはあそこそもそも人間の土地ですからね…、互いに取った取られたを繰り返してる場所なので。そういった争いを無くすのに第4の独立国、自治区と言うのは僕も賛成したいです」
一人の代表が話す。
「じゃ亜人国だけが2国に挟まれるのですか?」
「確かに問題に見えるよね。どうだろう海の大地が出来た今、僕らってこれからモンスターと一緒に住むだけで森が領土とか言い張らなくても良いんじゃないかな?と思っています。境界の森は亜人国の国というよりモンスターと亜人が共存する国なんじゃないですかね?」
「確かに」
「人間がモンスターの地域を攻めたくないのはある程度分かってますからね。魔族も人間もこの森をモンスターを駆逐して開拓しようなんて言ってきたら追い返しますけどね。
何度も言いますけど、僕はあなた達を捨てるわけじゃないですからね?僕は見捨てるわけじゃないです。3種族の融和地域がもたらす平和を支持します。その平和が亜人国の村が犠牲になってると感じる平和なら僕は戦いますからね?」
「はい族長分かってますよ」
ふーなんとか問題が解決した。所謂実効支配と言う奴だ。これは正直汚いと思う。じゃ何のために広げたのか?と言うと僕はずっと一貫して亜人を種として残す事が最重要課題だと思ってる。国として残すのは2番目に考える事と思ってる。奴隷的扱いを受けないならどこに住んでも亜人は亜人。
僕と認識のズレがあるかもしれないから。そのズレを持った亜人は帰ってくれば良いとおもってるから。そうじゃなくて単純に土地に拘るだけなら亜人国と切り離して残れば良いと話しておいた。特に全員戻って来いと強制はし無い。亜人国の戦力として考えていたけど、まあそれは理想だ。その時が来たら戦力としてはもう考えない。
今このタイミングでこんな話をした僕に亜人国を助けるため戦って欲しいと言ったら協力してくれるだろうか?後々問題になるから明確にしておいたけど、それによって帰属意識が薄れて兵士として期待してたのに村から兵隊を出してくれないかもしれない。不誠実だとは思う。だがタイミングを遅らせればよかったか?と思うずるさを抱いてしまう気持ちもある。
今このタイミングで言ったのは、結局自分にとって損なタイミングだからだと思う。自分勝手、自分本位と言うのはおそらくそういう計算が絡み合ってるんだろうなと思う。だから僕はそれを捨てた。駆け引きで誠実さを見せる事は出来ないと思うから。嘘が下手じゃトップとして駄目なのかな…。
ただちょっとだけ計算があった。人口が5000人になった。半数以上は兵隊として集めて良いと思う。十分に備蓄をして、森の村は魔族の血を引くものには村に残ってもらい。後モンスターが少ない半島から出来る限り兵力を持ってくる。
大雑把な情報から人間は1万の兵隊はまだ居ないと見てる。相手が1万に対して、こっちは半分の5000で良い。個体の差が倍近くでも対等に渡り合える。人口の3分の2ほど兵隊として集めて問題が無い。約人口8000になるまで相手が1万届かないなら様々な敵戦力を減らす軍事的な行動を開始しようと考えている。
要するに、まあ緩衝地帯の住民を戦力として数えなくてもなんとかなる目処が立ってきたからと言うのが大きい。争いをしてるなら汚い綺麗も無い。だが同盟国に対して汚いと感じる事をしてはいけない。兵隊と兼用の住民に開拓させての実効支配はそういう問題がある。
国もまた変化しつつある。国の中で様々な技術の高いものを集めて職人が多い人間の居住区と協力させようと思ってる。後は僕の居る森の中で最大規模の村に知識の集積地のような場所を作ろうと思う。特に僕が触れたいのが大きい。そういった知的なものに刺激されたものが、僕の回りに集まってくれれば良い。
とにかくあれもこれも様々な事が足りない。




