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ハンターの子孫

 ビオル・ザルツはハンター相手の商売人をしている。自分の先祖がミドルハンターだったのが大きい。当時はまだモンスター肉を食べるというのが一般的では無かった。いや今でも一般的では無いが、忌避する人は皆無になった今の場合需要の関係でそこまで一般的なだけじゃなくて。


 当時はモンスター肉を食べるなんて?とそんな風に一般的には忌避されていた。ハンターの間でモンスター肉の大半が食べられて、一部は家畜肉より上手いと言うのは良く知られていて当たり前の事だったが、あくまでハンターの間だけだった。一部貧しい農村などがハンターの、たまに狩ったモンスター肉を食べていたとは言われてるが、頻度が少なく確かな事実だったのか?今となってはわからない。


 そういった常識を変えたのがご先祖様のドルク・ザルツと呼ばれるミドルハンターだった。彼はミドルハンターを引退して、モンスター肉を広めるため肉屋を遣り始めた。当然上手く行くはずも無かった。しかし貧困層向けに安売りで売り始めたのを、きっかけに広まって今では家畜肉に負けない値段で取引されている。


 私の家系ではずっとそのご先祖様のハンターの懐を豊かにすると言う家訓が守れて、私もそれに取り組んでいた。それと言うのも代々我が家系では家を継がない子供たちがハンター資格を取りミドルハンターを目指す事が多かったため、他人事じゃなくなっていたのも大きかった。私の弟、次男も今でもミドルハンターをしている。


 最近取引が多くなったある村の行商人から面白い話を持ちかけられた。


「何か肉以外の素材を集めて利用してる人がいるらしいです。ただ、素材は高い価格で取引される一部のモンスター以外荷物になるので、皆捨ててしまうようで、ハンターから肉を買い取るときに一緒に買取を持ちかけてみてどうでしょうか?私がその買取の人紹介しますから」

「それは面白い。是非呼びかけてさせてもらいます」


 ハンターの懐を少しでも暖かくする。実際ミドルハンターは初期に較べたら随分楽になってる。ただ私の先祖の頃にはすでに国の補助金制度は確立していていたが。


 ミドルハンターは、1に開墾。2に補助金。3に討伐したモンスターを売るぐらいの順でモンスターそのものはオマケに過ぎなかった。このモンスターをうる部分の換金率を上げればまるまるハンターの収入増になる。たいした金にはならないかもしれないが、捨ててしまうものが金になるならそれは惜しい。


 そしてそれは私がやる事で効率よく集められる。すぐに軌道に乗った。


 さて肉以外のモンスター素材を扱うようになると、モンスターのタイプ部位で中々他に転用できそうなものが見えてくる。今から思うと、何故モンスターの一部しか利用されないか?と言うとハンターの防具として利用される事が多かったからだ。売る人と買う人が同じなので、その他の人の価値観が分からない。


 これはひょっとしたらまだまだ素材はお金になるのでは?と考えて様々な用途を考え、それを実行に移した。まずすぐ思いつくのは皮製品。ただ以前はこれを防具としてしか見てなかった。服としてみると防寒性などに優れた皮がごろごろしている。他にも多岐に渡り1匹のモンスターの肉に対して3分の1ぐらいの金額は余分に稼げるようになった。


 ただこれ以上は上がらなかった。それはいろいろと倒す時のものだと思うが、傷物が多い。どうにもならないものをまとめて、最新の回収をしてる業者に売る事にした。次男もたまに帰ってきてこの話をしてくれて、随分収入が増えた事を互いに喜んでいた。


 しばらくして、以前きっかけをくれた行商人と話す機会があった。


「本当にありがとう。あなたのおかげでハンターの暮らしが良くなったと思います」

「いえいえ私はあくまできっかけに過ぎないと思います。私の知り合いのハンターも豊かになったと喜んでいるので私こそ感謝しています。ただ」

「ただ?」

「ある人が仰っていたのですが、ハンターの収入増の根幹がモンスターそのものでは不味い部分もあると話していました。もちろん今の状態は歓迎するしか無いと言ってたのですが、一部の高価な取引されるような額ですべてのモンスターが必要とされると亜人、魔族と人間でモンスターの取り合いに発展するのでは?と懸念していました。

仮にの話ですが、将来的に今はハンター同士で使われてるだけの素材を元にした魔力増幅剤がもっと違う事に転用できて高値で取引されたそういう事も起こりうると言う話をしていました」

「争いの火種になる?」

「そうなります。今は魔族がモンスターを全く欲しがらないけど、これに魔族が参加すると争いになるんじゃないか?と見ています。その人が言いたいのは、開墾や補助金などはモンスターの素材とは別個の収入なのでああいった収入が他にできれば良いのにとは話していました」

「なるほどそういう考え方もあるのですね」

「まあ仮の懸念ですけどね」


 彼は帰ろうとしたその時


「そうそう、南部の融和地域で取引とかありますか?」

「まあそれなりに」

「一部のモンスター素材って魔族相手に売れるらしいですよ。魔族もモンスター肉を食べるらしいですが、何故そんな習慣があるのか?でそれが起因してるんですよ。その素材を取るためたまにモンスターを狩るらしいです。

最近交流が増えて詳しい人が増えたのですが、魔族ってモンスター1匹倒すのに何人も狩りに出て何時間もかかるそうです。円で囲って追い詰めるんですよ。そうしないと逃げてしまうから。

しかも最後蛇に睨まれた蛙じゃなくて、窮鼠猫をかむらしいです。だから魔族って余程高価にならないとまずモンスターをどうこうしようなんてしないと思いますよ。人間が素材売ってくれるなら買うと思います」

「ああなるほど理解しました。良い情報を貰いました」


 面白い考え方をする人もいるものだな。モンスターの素材と言うのは今ぐらいがちょうど良いのかな?まあ今は良かった良かったしか思ってないけど。


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