ミドルハンター卒業
僕はハンター養成所に入ってミドルハンターの道を目指す。そもそも村の自警団に所属していたけど、ある程度裕福だった農家だったため良くある村の集めたお金でハンターになるって道じゃなかった。それなりに才能があった僕はミドルハンターの道を迷わず目指した。
自警団やってた時からガラじゃないなと思っていた。じゃ何故自警団やっていたか?と言うとハンターの道をある程度考えていたけど、それはこの村でやる事じゃなかった。もし僕に力が無ければ村のハンターになっていた可能性はかなり高かった。
ミドルハンターが決してつまらない仕事だったわけじゃない。ただ僕は頻繁に村に帰っていた。自警団に居た頃から付き合っていた少女に会いに行っていた。当然いずれは彼女と開拓地で暮らすって夢が僕にはあった。だがお金もため順調に経験を詰んだミドルハンターとして育ってきた頃、彼女が重大な発言をした。
「私、この村でアーサーがハンターし無いなら結婚しない」
「ええーでも僕の居場所なんて無いよ?」
「うちの農場を継いでよ」
なんだかんだで僕は1年待ってもらって、了解する事にした。それでも気持ちが変わらなかったら結婚しようと思っていた。そして気持ちは変わらず村に帰ってくることになった。結婚後僕は村の自警団のリーダーになった。
うーん、どうも浮いている。僕が強すぎて大半片付けてしまう。これじゃ皆が育たない、でも誰も死なせたくない。なんと言うか空回りしてる。ゴブリンの集団に出くわした。
通常はメンバーと分担する。僕は出会いがしらに2、3匹片付けて、すぐに残りを1匹1匹倒していく。わざと皆の邪魔してるわけじゃない。セオリーってやつだ。これ以上時間をかけると危険と言う状況になる前に片付ける。そしてそれが皆でやってしまうからミドルハンターは成立している。その速度についていけないハンターはミドルハンターじゃない。
だがこれが村の皆の成長を阻害してる。元々僕を育ててくれたベテランハンターと話していた。
「僕駄目ですよね?」
「んま不味いな」
「でも、あれこそが安全なんですよ?」
「良いんじゃないの?怪我しても」
過保護か…。そうかもしれない。振り返ると僕もそんな風に自警団でやっていた気がする。長年の癖みたいのがあって中々変えられないけど、変えようともしてなかった。そこを改善する事になった。徐々に皆が攻撃に参加できるようになってきた。試練?そんなものがあるんじゃないか?と本気で思う。ややこしい事ばかり起きる。
その日はオーガ2匹とゴブリン集団と言う一般的なハンター+自警団ならまず中央に連絡して応援を頼む相手が出た。僕は呼んだが教えを守らなかった。浅はかなのか?全く違う。僕はこのシステムの問題を良く知ってる。無駄死には止めろそれがSハンターと一般ハンターの連携だった。一般ハンターはSハンターの到着を待つ間。村が攻撃されても最小限の守りしかし無いように言われてる。
勝てないものは勝てない。村人の被害を最小限にするのが目的で、モンスターを討伐はしなくて良い。どーせ向かっていって死ぬならそれを出来る限り遅らせろ。その間にSハンターは到着する。
しつこくハンター養成所で教えられてる事はこういう事なんだ。危機管理?まあそうだろう。でも僕の実力はその判断が良いとは思わないんだ。
「Sハンターに知らせてくれ」
一人にそれだけ言って僕は自警団の皆と立ち向かう事にする。僕がオーガ2匹受け持つ。かなり無茶だ。無茶じゃなければSハンターなんて保険に呼ばない。残りの自警団に残ってもらったのはゴブリンをどうにかしてもらうため。これも無茶だ。皆で無茶をする。でもこれは犬死じゃない。
このギリギリの判断を僕は試練と言ったんだ。だってそうだろう。こんな事田舎に何故か戻ってきたミドルハンターって例外の僕だけが経験する事態なんだ。僕が戻ってきた事に様々な試練を与えてるんじゃないだろうか?と最初の頃上手く行かなかった事を含めて考えてしまう。
全力全開ってやつだ。普段抑えてる鬱憤を晴らした。一太刀オーガにあわせて、すかさず別のオーガにも切りつける。セオリーからしたら愚作だ。各個撃破の逆なんだから。これは相手の注意を僕に向けさせるためだ。同じレベルの人間がチームを組むのが理想的なのが、ここで良く分かる教科書の悪い例の様に出てしまった。
(試練か…)
なんとなく僕は呟いていた。
ただこの無茶苦茶な分散攻撃やってのけた。一度こっちの流れになったら後は楽だった。相手の方がダメージを負う量が多いなら、いくら2匹でも動きはどんどん悪くなる。大して僕は最初の苦しい時期を乗り切ったのでどんどん楽になる。回りなんてさっぱり見てなかった。そんな余裕が無かった。
魔法も駆使して今まで培った事のオンパレードだった。なんとか倒し終えて、仲間の加勢をして終った。自警団の一人がかなりの深手を負った。当分討伐は無理だろう。ただ誰が死んでも可笑しくない状況を乗り切った。絶対待ってるよりは良い選択をしたと言い切れる。養成所時代からこの教えおかしいと思ってたんだ。
もちろん、間違ってるわけじゃない。ただ肝心な事を伝えてない。村人ガンガン死にますからね。って伝えてないんだ。おそらく感情的になって判断を間違えるからだろう。Sハンターが到着した。
「この相手を君たちが倒したのか?」
「はい」
「皆がすごいのか、それとも誰か凄いのか?」
「僕が元ミドルハンターです」
まあ傲慢に見えるだろう。僕の手柄ですとはっきり言った。だが僕は的確な報告をする意図があった。無駄な出動になってしまったんだ。Sハンターに気を使っていた。納得できる説明が欲しいだろう。
「分かった丁寧な状況報告感謝する」
ふーなんとか納得して帰ってくれた。もし下らない相手にSハンターなんてハンター資格剥奪だってありうる。彼らは忙しいんだ。他の村で危機が起きたらどうなる?それでもSハンターは危険だと感じたらどんどん呼ぶべきだ。一般ハンターはそれぐらい頼りない存在なんだ。
子供も生まれて、何かもうこの村でハンターやっていくのが当たり前だと思えるようになっていた。アレから試練も特に無いし。ただ僕はほんの少し、分岐点で別の道を選んでいたらどうなっていたか?と考えてしまう。100%の幸せな今なんて人珍しいだろう。だが僕は特にこの傾向が強かった。
後悔じゃない今が幸せだから。でも、100%完璧な幸福感ってわけじゃない。なんだろうな常にぶらぶらしてるというか、心に隙間があった。




