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奴隷ちゃん6

 失意とは違うんだと思うけど、何も出来なかったって思いのまま人間の国に帰ってきた。しばらく向こうに行ってる間にまた開拓に対する方針が変わって様々土地にミドルハンターが散っていった。新しい人も増えてるんじゃないかな?と期待して回ったら。わんさか新しい人が増えていて、中々良い稼ぎになった。


 各地を点々とする中、新しいメンバーが増えたかな?考えたりもしたけど、商売度外視で境界線の開拓地の皆に会いに行った。今回稼ぎが良かったのは、魔王討伐隊の面々の署名が大きかった。1人辺りの手数料を高く取れたから。


「やあ田中さんお久しぶりです」

「吉田君こそどうだった?」

「あちゃそっちですか。僕からは言えないですね。レイヤから聞いてください」


 レイヤが話し始めた。


「魔族と人間の間を取り持とうとして上手く行くかな?と思い始めた時、亜人が現れてすべて上手く行きました。結果としては良い事だと思います。でも何か釈然としなくて帰ってきました」

「ああそれなんとも言えないね。結果としてはレイヤの望んだ結果なのにね」

「はい」


 ここに帰ってくるとホッとする。方針転換でがらっと変わってしまったけどそれで逆に僕らには都合の良い場所になった。僕らはどうも根なし草だった。レイヤは間違いなくこの国の人なんだけど、知ってる人はもうすべて死んでしまって、日本人として僕との繋がりの方が深い。

 何度も開拓地で顔を合わせるメンバーが中心になってここに集まってる。ベテランって事だった。そしてたまにやってくる元魔王討伐隊を含めて転生転移者が多かった。だからホッとする。


 結果が良かったから何も言えなかったけど、結局失意って奴なんだと思う。それを吐き出せた。だからまた開拓地を回ろう。


 開拓地を回っていてあるミドルハンターの話しが気になった。


「魔王討伐隊の署名ですか。やっぱ軍関係もこの成長回復ってやってるんですか?」

「いや絶対やら無いとは決めてないけど、今の所やってない」

「何故ですか?儲かるでしょ?」

「一人ひとりはそれほど持ってないからね」

「でも効率は良いでしょ?」


 やけにしつこく聞いてくるな


「レイヤちょっとぐらいは話して良いのかな?」

「まあミドルハンターの人だし」

「パートナーのレイヤが多少魔族贔屓なんだよ」


 驚いた顔をしていた。彼は僕の成長開発を受ける事にしたようだ。


「あなた達に不思議な縁を感じます。是非亜人国の族長に合う事をお勧めします」

「亜人国?」

「レイヤさんの魔族贔屓について教えてくれたら僕も話しますよ」


 レイヤは自分で話し始めた。


「僕は実は周りの皆には言わないでくださいよ?亜人なんですよ」

「なるほど」

「あまり驚かれませんね」

「人に近い亜人なら南部の融和地域であった事があります」

「あああそこですか納得しました。なら是非族長にあってほしいです。族長も奇妙な力を持っていて、魔族と同盟してるので話が合うと思います」


 妙に熱心だと思ったらそういう事かと僕は納得した。多分彼かなり無理したんだろうな。僕らもこの国で浮いた存在である事や秘密にして生きる難しさは良く分かってるから。


「そういえば族長って言葉あんまり意識するなって言われたんですよね。説明のため話しましたが、確かに不味い気がしてきました。僕ね、人間の中で生きるならもう亜人国は捨てろって言われてるんですよ。スパイみたいな事させたくないからって、お二人と話して何か族長思い出してしまって」

「危険もあると思うけど、話してくれてありがとう是非会いに行くよ」

「ああそれとあまり金銭的には豊かな国じゃないですが、多分その力で族長なら遣ってくれればお金払うと思いますよ。だからお互い良い取引になるからって意味もあるんですよ」


 僕らは亜人国に向けて旅立った。いきなり行くより途中北部の開拓村に自分の話をしていろいろ聞けば教えてくれると説明された。


「了解しました。その力便利ですが、お金があまり無くて受けられなくて申し訳無いです。森に案内するのですぐだと思います」

「君たちって亜人を捨ててると彼は言ってたけど、どうもあなたの役割違いますよね?」

「ああそんな事あいつ言ってましたが、ここは特別です。何故なら僕国の援助受けて無いんですよ。逆に税金としてお金払ってるぐらいです。あいつとは立場が違うんですよ。その分貧乏ですけどね」


 笑っていたが何か爽やかだった。


 森の中の村の住民に族長の所まで連れて行ってもらう事になった。


「いやーレイヤさん強いですね」


 そう、猫耳猫尻尾の亜人が話していた。


「一応僕の護衛役を受け持ってもらっています。今ではそこそこ戦えますが、以前はもう並のハンターレベルで守ってもらってばかりでした」


 この子もなんだかんだ言って強い。モンスターの危険地域で暮らしてるんだから当然と言えば当然だけど。後これが亜人と言われる理由なんだろうなと納得してしまった。


「???やっぱ気に成りますか?」

「ええ外の亜人と言われる人はまったく人と変わりませんからね」

「あはは、差別みたいなものが無いようにって族長が気を使ってるんですよ」


 族長の住む村に着いた。さすがに大きな村だ。と言うか町といえるような人口だと思う。


「吉田健一さんですね?田中祐二。亜人の族長をやっています」


 なんとなく予想していた。


「転移者ですよね?」

「はい」

「僕もです」

「だから僕の所に案内したんですね」

「それだけじゃないです。多分レイヤにも関係しています」


 レイヤは話しはじめた。


「なんとそれは驚くような話ですね。レイヤさんは吉田君の力で強くなった兵士に魔族が殺されるのは嫌ですか?」

「仕方ないと思っています。でも好まないと言う気持はあります」

「僕らは人と戦う事があるかもしれません。その時人を殺します。それでも僕らにその力使ってくれますか?もちろん僕は自分から人間の国を侵略しようなんて思っていません。ただ僕らを殺そうとする相手に反撃しないわけにはいけないからです」

「ええそれはある程度覚悟してきています。でも今の話を聞いたらもっとやっても良いとおもうようになりました。その場合仕方ないですよ」

「秘密裏に片付けられてますけど、多分軍関係者なら知ってますが、すでに2回攻撃されています。少数だったので撃退できましたが、でもそのせいで僕らの存在が明確になりました。次何が起きるか?は恐怖しています」

「そうですかならなお更守る力が欲しいでしょう。問題ないですよ?」

「よろしくお願いします。ただあまりお金持ってないので、特別強いメンバーだけやらせて貰います。ただお金ないけど、僕だけは受けておきます。なんとなく強い族長って憧れるので…」


 そういった後成長回復の力を使った。しばらく僕は滞在して、族長に頼まれた分仕事をこなした。いろいろあったので亜人にたいしてこわばっていたレイヤもさすが元魔族の中で暮らしていただけあって、すぐに亜人達と打ち解けた。亜人達もレイヤの強さには関心していろいろ教えてもらっていた。


 亜人はかなり強い。だからこそ自覚があるんだろう。だからこそレイヤの強さを見てびっくりする亜人達の気持ちが分かる。なんとなくレイヤが魔族の中で溶け込んだのが分かった気がする。亜人より強いものへの分かりやすい好意があるらしいので、こういう風になったんだろうなと。


 ずっと酷い生活だったんだろうなと思い込んでいた。当時のレイヤは人形みたいなので酷い事されてもあまり感じなかったと思うから。でも思っていたのと魔族贔屓の態度から違ったのかもしれないと思えてきた。すべて終って僕らは亜人国を出て行った。


 またしばらく開拓村を回る日々になって、レイヤが妊娠した。それで僕らは亜人国に行く事になった。亜人国を出てから、一生すむならあんな所が良いなと言ってたのでちょうど良いかと。族長に話したら。


「二人を住人として迎えるのを喜んで歓迎します」


 そんな感じで僕らは亜人国の住人になった。もちろん僕の仕事のため人間の国に行くのはなんの問題もないそうだ。ただ僕はしばらくはレイヤとここに居ようと思う。


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