転生転移研究者4
私は魔族と人間の共存圏に来ていた。ただ魔王の理想と言うか発想と言うか、その先の道のりはかなり遠いと感じていた。仕方ないと思うが、人間同士が集まって暮らして、魔族と交流があまり無かった。基本人間の村に居て魔族側も時折訪れていたが、あまり親しくなろうとする人がこっち側も居なかった。
ただその中で責任者と言うか魔王の息の掛かった魔族の偉いさんが私に近づいてきた。ソルベと言う人物だった。
「どう思います?」
「苦しいでしょうね。ただまだまともに生活が出来てないのでそれもあると思います。だって人間側は今ある物資が尽きたら何も無いでしょ?いずれ魔族に頼らないとどうにもならないじゃないですか。時間が必要だと分かっていても、頭下げて交流は気の毒だと人間側の私として感じます」
「別に人間側の人が来ても良いのですが、来てくれると思いますか?人間側の門は空けてるのですけどね…」
「中々難しいですね」
そうこうしてるうちに知り合いがやってきた。ある時魔族側と人間側の橋渡しをしようとする人物を見たら知ってる人物だった。
「やあレイヤ君も来たのかい?」
「はい何が出来るか?分かりませんが、魔族と人間が共存する地域と聞いて、何かせずには居られないと思ってきました」
彼女は連れの転移者(吉田健一)と一緒に頑張っていた。それなりには成果があったが成功を見る前に大きな流れに巻き込まれて有耶無耶になってしまった。ただ二人には悪いが私には面白い事になった。新種族の亜人の登場と亜人がこの地域にやってきたのだった。わだかまりの歴史の無い彼らが旨く2種族の間を繋いでしまった。
直接的には魔族と人間が関わるのは少なかったけど、亜人が加わる事で亜人を通じて人間の閉じたコミュニュティが壊れてしまった。特に小さなグループだった人間は亜人の中にすっぽり入ってしまった。
男性比率がやけに高かった人間の集団は配偶者を亜人にみつけて結婚して混血がどんどん生まれた。これによってこの地域の人間の大半が亜人+人間になってしまった。子供達が自然と魔族の中に溶け込んでいきやがて魔族とも直接交流するようになった。
ソルベさんによるモンスター肉の供給もこれに大きく関わっていた。食料として安定してもたらされるモンスターの肉を食べる習慣は、そのままモンスター肉を食べるする亜人達の食文化を交じり合った。ソルベさんが供給していたより多くのモンスター肉が供給されて、元々持っていた食生活を変えるほどになった。
これはかなり大きい。新しい価値観を生むぐらいの変化になる。この地域の特別性が育った。亜人に興味が湧いた私は亜人に接触した。そこで奇妙な共通性に気がついた。彼らはどことなく日本人の様なところがある。
お辞儀だとか些細な生活におけるちょっとした挙動があれ?って思う事がある。そんなの偶然だろうは私自身思った。そうじゃないと確信したのは、他の種族ではなく亜人だけが共通して似たような性質を持つことだった。この謎の現象が気になった。
これが気になって、亜人に亜人国に連れて行ってくれないか?と直接話してみた。亜人は外ではものすごく友好的だが、亜人国に行きたいとなるととたんに人が変わって冷たくなるらしい。ただ私が話した日本人の話に興味が湧いた亜人が、族長と話してみるのが良いのかも?といわれたのがきっかけで二つ返事でOKしてくれた。
この世界の歴史に新たな1ページを刻む亜人、亜人に共通した日本人を感じさせる何か?私が研究テーマにしてるものばかりで食指が動かないわけが無い。
「ええ??アランさん何者ですか?」
「ただの研究者ですよ」
危険地帯を通り抜ける時に私は護衛を抑えて自らモンスターと戦った。別に守られるのが嫌だとかじゃない。協力したほうが良いと思ったから早くから実力を見せたかったのがある。その方が早く目的地に着くから。認知されて無いので全盛期の実力は無いけど、長い戦いの経験が蓄積されてて私多分そうとう強い部類だと思う。
森に入り亜人の村に着きやっと族長と合う事が出来た。
「日本の事を聞きたいんですよね?」
「はい」
「何から話そうかな」
そう族長(田中祐二)は思案していた。
「確か研究者なんですよね?僕転移者なんですよ」
「やはり。どう見ても日本人ですよね?」
「ええまあそうなりますね」
「さて私が聞きたいのは、亜人に共通する日本人を感じさせる部分です」
「ええそうなんですか。僕自身慣れがあって気がつきませんでした。うーん答えを話しても良いのですか。何故そうも知りたいのですか?」
転移者だと聞いて打ち明けても良いと考えて話す事にした。
「まずは単純に研究者としての知的好奇心です。次に私自身元日本人だからです」
「在留外国人?」
「いえそうじゃなくて転生者です」
「ああなるほど、ならまずあなたそれ国に教えてますか?」
「いえ。多分こんな所うろうろしてないとは思います」
「そうですよね。なら話し早い教えましょう。亜人の祖先は僕のコピーみたいものだからです。正確に言うと僕の力によって生まれた人型モンスターと僕の間の子供達です。この人型モンスターが僕の頭の中をコピーしたような所があるからです」
「なるほど」
「あんまり驚きませんね」
「私も転生者なので、無茶な力はいろいろ見てますからね。でもその中でもかなり出鱈目な能力ですね」
田中祐二はその言葉に笑っていた。そこから様々な話しになってモンスターの話になった。
「モンスターの自然発生説についてどう思いますか?」
「確かだろうと思いますよ。魔族側にモンスター住む土地なんて無いですからね。繁殖しようが無い」
「なら何故繁殖なんてするんだと思いますか?」
「そりゃ何故人は生まれたのか?ぐらい哲学的ですね」
「そうでもないんですよ。実は私転生者でも特殊でして、繰り返してるんですよ」
「いやー僕も馬鹿な能力ですが、アランさんも相当ですね」
「でね、モンスターって実は新しい種が生まれてるって知ってました?」
「ええーーーー
田中祐二はさすがに驚いたようだ。元々モンスターの話しになったのは、モンスター多発地帯で暮らす不思議な種族って話しになったからだ。
「昔はモンスターの種類って少なかったんですよ。それで私は繁殖がそれに関わってるんじゃないか?と見ています」
「進化?」
「そうです。だから繁殖ってシステムがあるんだろうなと見てるんですよ。この世界がゲームとしてみた場合、最初に決めたモンスターから変わらないのは退屈でしょ?だから繁殖システムをいれて、自動で同じモンスターばかりプログラムして出していても時間がたつと変化するようになるわけです」
「じゃ一定のモンスターばかり多くなりませんか?」
「そこからは推測ですが、アップデートされてるかもしれませんね。これは調査して無いのでまあ推測ですけどね。モンスターは過去より増えてるは事実です。見てきた私を信じて損は無いですよ」
と私はニヤリと笑って見せた。
「アランさんは面白いですね。そういう部分が亜人には欠けてる部分なんですよね。僕は亜人ってものすごく優秀だと思っています。ただどれだけ優秀でも機械的なんですよね。ある程度は応用利きますが、劇的な変化を見せるような知性の部分が薄いんですよ。
無駄が無い。これに尽きます。これで何をしなくちゃいけないか?指針が出来ました。知識を知的に活用する集団が必要ですね。大学みたいなものが必要だと感じます。人間の持ってるそういう知識が欲しいので、そういったパイプになってくれませんか?」
「ええ別に良いですよ」
「今は貧しいのであんまりお金は出せませんが、背一杯謝礼によって誠意は見せたいと思います。だから協力お願いします」
私の方こそ繋がりを強く持ちたいと思っていたので願ったりの部分が合った。今後おそらく深く関わっていくんだろうなと漠然と考えて、私はとりあえず人間の国に戻っていった。




