召喚魔法の転移者2
僕(戸村比呂)は田中祐二と距離を置いて人間側の事情を調べる事にした。なんだかんだで亜人の連中から学んだ事が生業になっていた。家に帰ったのは田中祐二の指示があったため森の村の人には特に何も言われないどころか、また遊びに来いと言われ人間の町でモンスターの肉を近くで買い取ってくれる店とかも教えてもらった。
人攫いのような事してる連中だったが、族長には絶対の忠誠のようなものがあり2面性のようなものを感じていた。どことなく映画で見たマフィアっぽいなと。さて生活の基盤がしっかりしたら後は聞き込みだ。意外にすぐ終った。僕が何も出来ないので一つの方向しかなかった。どこもかしこも門前払いで、正直亜人国が一番僕にとって職業選択の自由があった。
人間の国で僕はハンターになるしかない。そうなると亜人国で僕が一番期待されてる立場と変わらない。問題は金だ。亜人国は金が無い。地方のハンター。これはかなり不便だ。そもそもハンター資格を取るのに金が要る。地方のハンターはそれを出してくれる地元の基盤あっての事だ。余所者がハンター資格とって地方のハンターをするってそうとう特殊例だ。
ハンターはどこへ行っても重宝されるので、食うには困らないが、食うには困らないなら亜人国の方が良い。地元の基盤を持たないハンターも自警団を回ってコーチ業、土地を貰って請われてハンター過疎村に呼ばれる。いくらでも例外にも仕事はあるが。それは食うには困らない最底辺のハンター。
だから地方ハンターをやるぐらいなら亜人国で狩りをしていたほうがマシ。そもそも僕の強さはゴーレムさえ生かせればミドルハンタークラスはある可能性がある。それは亜人国の情報だが、亜人のミドルハンターはちょくちょく居るが、表立ってやってないそうだ。だから人間の国でその情報を知る事は無い。
戦争をして敵対国として未だに国交が結ばれて無いから。亜人は正体を隠して資格を取ってミドルハンターとしてもぐりこんでいるらしい。その彼らから認められてるので僕はまあそれぐらいの実力はあるんじゃないかと。ただ確実に大丈夫だと言うのはもっとゴーレムを使いこなせないと無理かと。
良くそこまで話してくれると思うのだが、族長田中祐二が認めた人間ってのは亜人国じゃそうとう大きなステータスみたいだ。ああもう亜人国って金で計れない待遇が良い。ただその上となると怪しいものがある。ミドルハンターも微妙。そして最大の問題はゴーレム使いは微妙にソロでやるか?1、2人の仲間が向いてる。とてもじゃないが緻密な指示を出来るような相手じゃないので、連携に向いてない。
となると、ある程度まとまった数と組む上の連中とは合わないし、かつ今の時点では実力が無い。ミドルハンターしか選択肢が無い。はっきり言って金はこっちの方が亜人国に居るより溜まる。やってる事は亜人国での狩りと変わらないが、補助金が付く。亜人にはモンスターとのやり取りが日常であるのに対して、人間にとってはそれが過酷な状況のようだ。まあ分かる。
さて、この程度か?そこになる。面倒な国との繋がりのせいで自由が縛られるが金はマシなミドルハンターか?それとも金はショボイが、かなり自由に遣れてかつすごく待遇が良い亜人国か?ミドルハンターはコレに加えて農地を貰って引退して農民も出来る。これに関しては亜人国の方が簡単だろう。
ミドルハンターは亜人国が嫌になったら後でやれば良いわ。ゴーレム召喚のレベルを上げてその後考えてみても良い。練習として亜人国を利用するか。族長の住まいに向かった。
「僕亜人国で生きるよ。ただし亜人国が嫌に成ったらミドルハンターをするけど良い?」
「良いよ。多分戸村君は今の亜人国を見て判断してる。未来に投資しなよ。隠すかな?と思ったけど、正直に言ってくれたから。僕もサービスするよ」
そういって奥地へ連れて行かれた。海に付くと大きな半島が見えた。
「新大陸さ。僕が作ったんだ。僕についてくれば今は小さな国の富もやがては莫大なものになる。魔族にも人間にも並ぶ国に出来る可能性がある。君の能力の伸び次第ではその富を一緒に増やす事が可能だよ?」
「その話は魅力的だな」
努めて冷静に言おうとしたが、僕は亜人国に決めたと決心が高ぶったのを声に出てしまいそうだった。
「一つだけ忠告しておくよ。何かこの世界は森を神聖視したり畏怖したりするものがある。ただそれ絶対だと思わないほうが良いよ。田中君も染まってるよ?」
「どういう意味?」
「燃やせば良いんじゃない?」
はっと田中祐二は固まっていた。味方になるならと思って話したけど、やっぱり考えてなかったんだな。対策さえ打ってくれれば僕は安心だ。




