つるはしを持った転移者6
僕は行き詰っていた。しかしこの事態をまたもやジョナサン様が救ってくれた。亜人国を探索する事で発見した作物がすごく有用なものだった。まずポテトと言われる芋が大きかった。開拓して間もないここでは森ゆえの腐葉土のおかげで豊かな農作物が収穫できた。
しかし、そうじゃない土地もいくらでもある。そういった土地の収穫量は低い。同じ土地でも作物次第で変化する事で全く土地が増えないけど国が豊かになった。ポテトはそこまで豊かな土地を必要としなかった。それが大きかった。
これだけで終らないからジョナサン様なんだ。穀物の多くはしゅっとした葉が交互に成長する麦の様なものが大半。しかしこういった常識を覆すような作物をジョナサンは発見した。葉が対になって成長する植物はポピュラーだが、穀物の実が取れるものは今まで無かった。それがあったんだ。
何が凄いか?と言うとライフサイクルが短い。植えたらすぐ食える。当然そんな美味しい話は無いから、休閑期や連作を防ぐ工夫は居る。しかしそれでも半年以上の長期の作物が多い麦などの穀物が不作だった場合取り返しがつかない。だから短い期間の作物でカバーする事は国全体として飢えを防ぐためとても重要だった。
それだけだとポテトがそれを担ったのでは?となってしまう。何故穀物が農作物の王様なのか?は主食だからと言うのも在るカロリーが高い。だが決定的なポイントは穀物は長期保存が可能って点だ。冷蔵庫の無い時代特にそれは重要な事だった。長期保存が可能なライフサイクルの短い作物なんて理想すぎた。他にもある欠点は収穫量がやや少なかった…。
ジョナサンは大きな成果を残して亜人国から魔族の国に旅立っていった。ジョナサンはその作物にパッソと名前をつけて、コーンポテトパッソはわが国の代表的な主食の一つになった。ただパッソは味の癖が強いので国民食だが売り物としてはアレックスの努力次第になる。人間魔族側で浸透しないと無理。
ただ農産物は金銭を得る重要な武器になるめどが立った。これからは食うためだけじゃない金を稼ぐための農産物も作る。文句なしにこの国で一番強いのは農業だろう。その根底にはジョナサンの画期的な作物をいち早く取り入れてそれを軸とした農業を確立した部分にある。それゆえ自信があった。
比喩じゃなくて馬車馬並みに働いてくれる強靭な肉体を持った亜人族の労働力も強みだったけど。今までは秘密裏に活動してた事。次に交易なんて全く無かった。僕が無理矢理金銀宝石で手に入れた金だ。きちんとこの国の産物でお金を稼ぐ体制が出来た。ただ僕はいざという時のためにせっせと金は備蓄していたけど。
まず森の近くの開拓地を利用したなし崩し的な農産物の販売。森から突然農産物を売りに来たら胡散臭い。それを誤魔化せる中継地点が出来た。ただその分の税は納めてないので、これは表向きだけ偽装した密輸だ。まあ敵国として国交が無いんだから仕方ないでしょ…。次に魔族との境界線に出来た融和地域。
ここは2つある。ただ最初に出来た地域は3種族の場なので、外との交流が極端に少ない。いきなり劇的に変えるのは不味いのであまり活発にしなかったようだ。だから新しく出来た2種族の融和の地はものすごくありがたい。3種族の場は別の目的で使おうと思ってる。閉鎖性を逆に利用して亜人の影響が濃い地域に染めてしまう事。
意味合いが全く違う。わざと北方の融和地域は外に向かって亜人の存在を薄めていくような地域。川が海に流れて混じる感じ。南方はまさに湖。亜人の川が亜人色の湖にしてしまう予定だ。ただ気をつけないといけないのは魔王の種族の融和は絶対に守る事。混血によって第4の種族ができるぐらい異色の地域にする。
魔王も結構くわせものだと思うのは、北方の領域は初期より広がりつつある。これ境界線をはみ出して来てる。亜人国があるから人間の国を刺激しないで国境を広げられるから。当然融和地域は魔族の国として亜人国は認めて広げさせてる。対価を期待してるから。積極的に進めてるという事は、様々な産業を移動させてくるから。
その技術を盗もうというのが計画のひとつだった。だって亜人国に職人を呼ぶってハードル高すぎるから。交易が必須なので商人は豊富だけど、工業的な職人がうちの国は皆無。なんとか武器とか生活に必要な金属製品を作っていたけど、どれも質が低い。そのレベルアップのために進んだ技術が是非欲しい。
おまけに農作物をどうどうと輸出できるのでかなり美味しい。やってる事は明らかに侵略だけどここは妥協点だった。大国に対して譲歩してる小国って情けなさがある事はあるけど。南方もやれば良いのに?と思うが南方は何か慎重だ。多分少数とはいえ人間が関わっているからだろう。
「ええっとさウル頼まれてくれない?僕が大雑把な指示をしたら君が細かく計画して実行するようにしたい事がいろいろある。それをやって欲しい。他の家族は詳細に伝えるけど君だけ特別な事させたい」
「何故?」
「うーんまず自然と君が女王のような立場になってる点。それに対して他の奥さんも文句が無いみたいだし。そして長く居るから僕の意図が他の誰よりも分かってる。そして頭が良い。さて話すよ。ジョナサンが去った後わが国独自でも作物の調査をすると決めていた。それをすべて君に任せたい。当然ウルが一人でやるわけじゃない。だから君に頼むんだよ」
「分かりました。そうですね、これ以上詳しく質問するとまかされた意味が無いですよね。だから後は独自で薦めます」
「やっぱウルだよ。そそ僕が詳細にペラペラ指示をし無い。こんな事したいだけで後は結果が出るだけになる。それが僕の売るに求めてるものだから」
この国は問題が多すぎる。それはこの国のあり方が変化したから。今までよかった事が逆に悪くなる。僕を中心とした強固な血族集団は戦闘においては無類の強さを発揮する。しかし結局は相手が勝つだけを目的にしてきたら勝てない。人間側が兵力が少ないのは亜人を認識せずモンスターの軍勢に対抗するため集めただけだからだ。
すぐに仕掛けてこないのは、勝とうと思ったら多大な犠牲を強いられると分かってるからだ。ただ勝とうと思えばそれを使えば勝てる。そこに僕らの弱みはある。1万以上揃えてくればかなり危ない。それだけ大規模なものは魔族相手でもあまり無かった。種族の存続を賭けた決戦なんてものは一度もやってないんだ。
地球での戦争の常識から考えるとちょっとこの辺りノスタルジックな戦争なんだ。僕らを相手にするってことはそういう戦争じゃない。亜人を全滅させるそんな戦争なら勝てるって思ってる。それをする国力が魔族も人間もある。最初から勝てないんだ。僕らがそこまで危険な存在じゃないと知ったら絶対にやらないと思う。この世界の常識じゃそれはありえない。
後はすべて秘密にしてきたからと言うのが大きい。相手が何者か?分かれば対策を打ってくるからだ。間違いなく種族最強の集団が負けるだろうなって未来しか見えない。数さえ揃えれば絶対に勝てる。個々がミドルハンター並の戦士が揃ってるんだから。
僕の血が弱いといえば弱い。ただの人間だから。奥さんは皆Sハンター級だから。僕も一応転移者。僕の強さが受け継がれないから子孫たちは弱い。でもそれを補うのがネズミ算式に増える数。
んで何故今問題か?でこの増殖スピードの速さがメリットだったけど、国土の狭さが養うだけの人口を飽和状態にしてしまった。今までは勝てたけど、これからは伸びないのでどうなるのか?と言われたら負ける未来しか見えない。
快勝して僕が怯えてるのは過小評価じゃないか?なら全然違う。この世界の常識じゃ種族を全滅させるような戦争はし無い。しかし、相手の立場になったとき、この世界だからありうるのが相手への無知が引き起こす恐怖からの暴走。
快勝すし過ぎたのも不味いといえばまずい。必要以上に僕らに怯えるから。次ぎ戦うならすげー戦力揃えてくる可能性がある。怖がりすぎだってのーって突っ込みたくなる。滅ぼす気がなくてもやってしまう恐れすらある。これがこの世界の無知なまま平気で戦う怖さ。何事も単純で盲信的。魔族なんて比べ物にならないぐらい僕らを恐れると思う。
魔族は所詮魔王だけだと思う。個々の兵隊は強いが、なんとか数でカバーできるから。勇者が信仰に近いような位置づけにあるのは魔王の強さの裏返しだと思う。その魔王の強さを亜人って得体の知れないもの種族全体に感じ取ってしまってる。実際聞いてみないと分からないけど、魔族への稚拙な対応を見るとそうなるだろうなと悲観する部分がある。




