魔王討伐隊4
僕は今迷っていた。僕達は魔王討伐隊だったはず。モンスターの発生に対して対応すると言うのは一時的な措置としては分かる。だがこれからもそれが続いていくなら役割を変えて欲しい。特別危険な多発地帯を警護するSハンターと同じ扱いにして欲しい。
お金を貰いすぎてる。それを辞退する。なんて謙虚なのか?と言うとそうじゃない。便利屋としてなんでもかんでも使われる口実として多額の金を与えてるじゃないか?と言うのが嫌なんだ。軍隊に組み込まれて亜人を殺して欲しい。多分それが僕らの役割を変えない理由だと見ている。
僕らはあくまで軍隊と協力して対応する特別部隊だ。亜人を殺せというなら僕らは軍人じゃないか。僕自身まともに勝てなかったので魔王がどれだけ特別な存在か分かってる。亜人はいくら強くても所詮は強い兵隊に過ぎない。魔王の持つ特別性はない。オマケに魔王にはモンスターを引き連れて暴走させる強大な力がある。
魔王は間違いなく人型の生物としては世界最強の存在。これに並び立つのは勇者か?または勇者が属するチームだけになる。
わからずやめと思いながら王様に進言するとあっさり通ってしまった…。???
「ご免勝手に決めて」
「いや俺も同じ事考えていたから構わない。趣旨は分かってる。皆の給料下げやがってとは思ってない。高給取りを理由に好き勝手使われるのを阻止するためだろ?」
「うん。そもそもすごくもらえるわけじゃない。そこが馬鹿馬鹿しいから積み重ねてもらうならSハンター並でも十分」
「ただなSハンターってモンスターによっては追加料金があるからな。あそこの脅威は数だからな」
グレンさんに勝手に決めてしまった事について相談をしていた。ただメンバーから誰一人文句は言われなかった。皆も思ってたけど、まさかこうもあっさり通ると思わなくて誰も言わなかったようだ。
「それにしても以前の戦争の事があるから。てっきり何か罰があるかと思った」
「最後に手柄2度も立ててるからな。あれが無かったらもっと被害は甚大だったはず」
命令無視じゃなかったが、先頭に立って欲しかったであろう、僕らが後方待機して最後の敗走の被害を抑えた事に不満を持つものも居た。それに対してはもういろいろと言いたい事があった。そもそも停戦してるから僕らは遣る事が本来無い。それをこちらが国のために進んでモンスター被害が発生し無いように境界線警備をしていた。
大規模な軍事行動にまで同じように前線に立てとされて従う理由が無い。僕らは基本軍隊が空けた道に通って魔王を打ちに行く特別部隊で、後方待機は当たり前の立ち位置だった。あくまでイレギュラーに発生する強大なモンスターだけ特別に対応していただけで、モンスターーを基本倒すのは軍隊の役目だった。
僕らに対して相手の数を削れという命令はありえない命令だった。状況が違うと言いたい事は分かる。だからこそ変えてくれと話を進めた。これで完全に軍人じゃなくなった。前回軍隊が敗走するのを助ける義務だって全く無かったんだ。言いたい事はいろいろあったが、あっさり通ってしまって振り上げた拳がうんたらって奴だ。
「それにしても魔族との戦争が一旦終ってしまったんだから。軍隊を縮小するわけには行かないのかな?それが根本の問題なんだよな。何故必要が無いのにあんな無駄飯組織残してるんだろう…」
「そりゃきっとそもそも必要が無かったからだと思うぞ。俺らを含めてな」
「さすがにそれはそうですねと返せ無いですね。僕はそこまで擦れるほど経験が無いですよ」
「金のために純粋に遣ってる俺が言う事じゃないか」
「まあ亜人に警戒するって大義名分はありますよ。ただかなりの小規模な国家でしょ?攻めてくるのはまずありえないんですよね。自殺行為だから。どちらかと言えばこちらが邪魔だから叩き潰すと攻める側ですよね。それであの失敗2つですけど。そもそもモンスター多発地帯の土地を取りに行くメリットは何か?って考えるとあそこは占領しても統治は出来ないですよね?何のための軍事行動なのか」
「そりゃまあ見え透いてるが、停戦なんてその場しのぎで、魔族の国に攻めに行きたいんだろうな」
「それじゃ魔族と人間の戦争の大義名分がね。凶悪な魔王を倒す。でもその魔王が奥に引っ込んで大人しい。じゃ魔族の国に攻め込む意味は?」
「敢えて言うと俺が王様ならどうして良いか?分からん。ただいざとなったら軍隊縮小しても良い。無くすのは無理だ。でも国民に支えられて無意味な大きな組織があると言うのは不味い。そこは手をつけようとする。何故出来ないのか?は上の人達の事情がさっぱり分からないから謎だ」
特別Sハンターと言う扱いになった。国全体の広範囲に活動するのがSハンターの当たり前の役目なら、僕らは危険な境界線だけのSハンターとしての役割が与えられた。
「グレンさん、考えてみると亜人国と連携を取れば、定期的にモンスターを討伐して数が増えすぎないようにするとか多分出来ますよね?それでモンスターの脅威なんてほとんどなくなるでしょ。彼らと仲が悪いから僕らも自由に遣れないわけで」
「スゲー小さな国にコテンパンにやられて下手に出て頼むが多分嫌なんだろうな。だからって数で押し切って遣れとまたやったらいつかは倒せると思うが維持の張り合いのだけの気がするな」
「それに巻き込まれる兵士やその軍隊の維持に費やされる国民の金とかなんとも言えない気分です。まあそういう馬鹿馬鹿しいものから逃げなくちゃって思いは伝わりましたか?」
「ああ良く分かるよ」
心の中でなんとなくグレンさんに負い目があった。この人が一番金を貰ってるから魔王討伐隊やってるって人だったから。でもグレンさんきちんと計算できる人だった。10KG持って1時間で100もらえるのと、5KG持って1時間70もらえるのなら5KGの方を選ぶと言う選択肢が出来る人だった。
まあ10KGなら重くても平気って人も居るけど…。なんとなくだけど、僕らがどうすれば良いのか?と同様に王様もどう扱えば良いのか?と僕らについて使いづらかったのかも、なんてのも考えてみると何となく納得できた。




