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プラントハンター4

 ミーアと共に亜人国の森に入った。ただすぐには族長の住む家には行かなかった。目的は人の触れない亜人国の変わった作物を見つけることだから。ただ僕は宿泊には困らなかった。なにやら英雄の到着の様に村々で歓迎された。そこら中にコーンや土変木が植えてある。なんだろう嬉しいはずなのに照れもある。


 どの町に行っても自分が作った曲が演奏されてる作曲家?みたいなものだろうか。


「改めて離れて帰ってきて、ジョナサンさんのすごさを知りました」

「ミーアまで恥ずかしいよ。族長が何故僕をそんなに高く買ってくれる?何か分かってしまった。どの村でも僕が発見した作物が植えられてると何かすごい事した気になってくる。人間の村でもこんなに浸透して無いよ」

「いえいえ謙遜しなくてもジョナンさんさんはすごいんですよ」


 目をキラキラさせて僕を見つめてくるミーアを見てると照れ臭さがもっと強くなる。村の人にウォーターレッドを植えて枯れた後にコーンを植えていく話をされると、こうなんと言うか理屈では凄く利に適った栽培方法だと分かるけど、ヨイショの連続攻撃されてるような強烈さがある。


 コーンはやや痩せた土地でも豊かに実る。これがウォーターレッドの土壌改良でこれからスタートって農地と良くあう。これは僕も彼らから教えられた栽培方法だ。自分が発見したものが応用されていくのを見ると恥ずかしさはあったが、同時に嬉しさもあった。亜人国では昔から問題になってたらしい。


 土変木やウォーターレッドによる土壌改善は万能ではなくて、微妙に痩せた土地になる。芳醇で完璧な土壌ではない。それもそうだ。元々は全く農業に適さない土地だったんだから。どうしても初年度ではもう一つな作物が多かった。

 そこから数回さらに土壌改良をしつつ休耕期を挟んだりしてやっとどっしりとした麦などが取れる土地になる。コーンが画期的だったのは、ウォーターレッドや土変木の一発土壌改良で最初から豊かなコーンの実が取れたところにある。開墾によって広がった亜人国では魔法の作物だったらしい。


 リアリストだと突き放してしまったけど、族長はやはり実体験としてこれらの効果を感じて僕と同じような作物の魔法を感じ取っていたのかもしれない。やや族長は比喩的で、僕はそのまま魔法の作物であったという事かと。


 村々を回る中、僕はある木に注目した。僕はミーアに何も言わずにその木の前に突っ立っていた。


「ジョナサンさんどうしたんですか?」

「気がつかないかい?」


 ジョナサンはちょっと意地悪をしていた。自分を変えたい思いを持ってるミーアに課題を与えていた。


「ヒントを上げよう。この木は使えるかもしれない」


 ミーアはそのヒントでこの木は重要な木だと気がついた。ただ何が?が分からなかった。


「一つ聞きたいけど、この付近は最近開拓されたばかりかい?」

「はいそうです」

「そういう事か」


 そう言って実をちぎってジョナンさんは食べてみた。


「甘い。これをどうして食べようと思わなかったんだい?」

「作物か?決まったものしか食べないから」

「確かに毒物があるかもしれないからね。それにミーアの考えと皆同じってのがまた族長の懸念がそのまま出てるね。これ今度の目玉商品にしよう。多分大きなヒットはし無い。成長がそれほど早くなさそうだから。でも一度木が成長すればこの木は良い作物になるよ。

ミーア悪いけど、族長の家に行くのは後だ。村に戻る。誰かに荷車とか借りてきてくれないかな?熟した実を持ち帰り若木を掘り起こして村で育ててみる」


 そうして村に帰って木を植えた。


「ああアレックス。なるべく他の木と離して植えて欲しい。これはちょっと問題のある木なんだ」

「どういうものなんだ?」

「まだ推測だけど、おそらくこの木は周りの雑草を食って豊かな実を実らせるんだよ」

「木が草を食う?」

「正確には養分を吸い取るって事で、口があるわけじゃないとは思うよ。この木が生えていた場所は雑草まみれだったのにこの木の回りだけ土がむき出しになっていた。こういう植物は毒物を撒き散らす事が多いんだけど。全く草が生えないわけじゃない。

徐々にしおれていくようになっていくんだよ。僕は数日この木の下を見てて発見した。後推測になるけど、草を食った量の違いで実の味や量が変わるんじゃないかな?と見てる。甘くて美味しいけど木によって大きく味にばらつきがあったから」


 実が小さな苗木に成った頃にジョナサンは亜人国の探索を切り上げて一度村に帰ってきて


「そろそろ売り物に成る頃だと思うから命名するよ。草食木でどうだろうか?アレックス」

「良いんじゃないかな」

「僕は面白いと思うけど成長も遅いし食べられるまで時間が掛かるのでそんなに売れないとは思うよ。僕が面白いと思ったのはこれ雑草の手入れの手間が一切要らないからね。むしろ雑草生えたほうが美味しくなると思ってる」


 僕は亜人国の探索に戻った。族長の家につくまで特に目新しいものは見当たらなかったけど、ここからが本番と言う可能性もある。亜人国にとってここが最大の人口を誇る中心地だからだ。


「ジョナサンさんお待ちしておりました」


 ちょっと驚いてしまった。ミーアも人間と変わらないけど、族長も全く人間と変わらない。ただ何故亜人と呼ばれるか?は村々を回る中もう分かっていた。やっぱりミーアって僕に好まれるように見た目選ばれた子じゃないかな?と疑ってしまう。亜人族は人間じゃないとすぐ分かる人達が多い。


「随分人間らしいですね」


 うっかり言ってしまった。しまったと言う顔をしたら


「はは、僕以外は気にする子も多いので気をつけてくださいね。僕は転移者なんですよ」

「ああなるほど」


 いろいろと話したかったけど、敢えてミーアに様々な報告をさせて、特に最近見つかった草食木の話を重点的にしてもらうように上手く会話を誘導した。


「なるほど、僕達が住んでる目の前に食用となる木が生えていたんですね」

「はい」


 族長は難しい顔になった。


「いつもジョナサンさんの作物には新しい刺激を受けて新作を待っていました。自分達でも発見できたんですよね。言い訳になりますが、国を急いで大きくするためがむしゃらだったというのがあります。ただこれからはそうじゃ駄目ですね。

ジョナサンさんが一通り調査したら自分達でも食べられるものが自生してないか?いろいろと調べてみます。何度も言いますがジョナサンさんの調査中は任せます。僕はジョナンサンさんの新作物のファンなんですよ。敢えてジョナンサンさんの目を通して発見された自国の作物楽しみにしています」

「はい分かりました」


 後は魔族の話しになって、いろいろと魔族の人を紹介してもらった。族長との話が終わりミーアと話した。


「あれ族長にいろいろ聞きたいんじゃなかったの?」

「なんとなく二人の会話を聞いていたら分かったのかも。言われたものだけ栽培してて、すぐそばにある作物さえ私達って気がつかなかったんだね?」

「うん。族長も不味いなと言う顔してたね。たださ皆族長の言い成りとかそんな単純な話じゃないね。いろいろと必死だったんだね」

「そうなる。子供の頃の方が忙しかった思い出がある。私達子供の時からいろいろとすぐお手伝いとかしていたから」

「教育によっていろいろ下地を作っていくんだけど、ここの人は族長の模倣がそれにあたるんだね。国として余裕が出来たらあの族長なら多分教育機関を作ろうとするんじゃないかな?」

「私もそうなるんじゃないかな?と思う」


 ちょっと変わってしまったと言うのが分からないでもなかった。元々はもっと遊び心のある気持ちに余裕のある人だった気がする。状況がそうさせてくれなくて変化したのかと。なんとなく今日話した事でハッとした顔をしてた。目の前にある物を全く気がつかずに、どんどん外から買っていたというのはなんとも言えない気持ちなんだろうな。


 亜人国に来てよかった。行き詰まりの様な状況から脱出できた。実がなるまでは注目される事は無いと思うけど、あの手間いらずの木はこんな便利でユニークな作物は無いといつか評価される日が来ると思う。コーンの発見で迷いが出たけど、自分の方向性みたいなものを明確に出来た探索の旅だった。


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