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つるはしを持った転移者5

 僕(田中祐二)は次の手を考えていた。戦争より大きな問題である人口問題。今までは勝つためにと無計画に増やしてきたが、やがて住む土地が無くなって来る。内部から自滅したのではしゃれにならない。おそらく一番手っ取り早いのがハンター資格を取って軍人になる事だと思う。


 優秀な兵士の資質が高い僕の一族なら活躍は間違いないし重宝されるだろう。その軍隊が僕の国を襲う。これだけは避けなくてはいけなかった。鉄の掟の様にこれだけは徹底させた。後は人間の国に行ったら基本自由好き勝手生きてくれ。こっちとしては餓死するぐらいならと送り出す人材だから。


 家族とはいえ、さすがに未来の事考えずに遣りすぎた。当然考えていた。ただこんなに早く問題になるとは思っても無かった。何か良い知恵が無いかと祐二に相談していた。


「開拓村ちらほら行ってるけど、そこで知ったのは初期のミドルハンターって国と関係なくて開拓してたんだそうだ。ハンター資格取った子供使って勝手に開拓したらどうだ?そこに強引に子供達をねじ込んでしまう。重要なのは収穫物金どっちでも良いけど税金だけはしっかり払えば文句は出ないんじゃないかな」

「でもそんな都合の良い土地あるの?」

「ある膨大な土地で俺らにはものすごく都合が良い土地がある。大陸北部の俺らの活動領域であるモンスターの森の近辺はほとんど開発されて無い。何故か分かるか?」

「いや前からそういえばあの辺り村や町と距離あるよな」

「俺ら中ですんでるから感覚狂ってるけど、危険じゃないか?」

「ああなるほど。中ですんでる僕らならあんま変化無いよな。どうどうと亜人の国を人間の国で作れる」

「まて調子に乗るな。さすがにそれは将来的には不味い。人間の国に近い側にはちゃんと人間の農民つれてきたほうが良い。後はなし崩し的に混血が進むと思うから誤魔化せるだろ」


 森から出ない僕に較べてこの辺りは祐二に任せて正解だ。この大陸でも祐二ほど活動範囲が広い者は居ないんじゃないかな。


「ただな一つだけ忠告しておく。今はミドルハンターや農民だが、混血が進むと軍隊に入る子供が生まれるかもしれない。その時は敵になるからな」

「血が濃い村はこっちとの関係を密にしよう。少しぐらい混ざってしまった村に関しては仕方ない。僕が知らなければそれで良いさ…、なんとかならないかな。また時間がたてば進行しようと計画してくるだろうな」

「魔王にはめられた気分だ。結局さ人間対魔族の戦争が綺麗に摩り替わってしまった」

「それでも魔族との連合軍って形じゃないと存続できない弱みがあるからな。魔族側には正攻法で行こう。人間と魔族の融和政策があるなら、魔族と亜人の融和地域も必要だと思う」

「もうあるだろ?」

「あれは3種族の融和で国境を挟む緊張状態の緩和って点では境界の森と魔族の国が接するところに作りたい。祐二お願いできるかい?」

「良いけど人間より正攻法だな」

「国として認めてもらってるし、同盟組んでるしで人間の様に無理矢理こじ開けるような方法とりたくないよ。それに一番の目的は軍事に熱心じゃない魔族なら亜人国を攻める兵隊にならないからどんだけ混血が増えても問題が無いから」

「それは単純じゃないぞ。歴史知らない。元々は魔族側の侵略で始まった戦争なんだぞ?」

「人間側の古すぎるから捏造とかじゃないの?」

「魔族側に人間が攻めてきたとか言う古い文献が無いんだよな。時代が進んで人間が主に攻めるようになってからなら、邪悪で低俗な人間どもの侵略の話ならたくさんあるけどね。今の魔王が生きていればの話しさ。ちなみに魔王って長生きらしい。天寿を全うした魔王が皆無だから良く分かって無いけど、勇者が倒せなかった時代は明らかに魔王長生きだと分かる年齢生きてる記録があるらしい」

「そりゃ亜人の国がある限りは大丈夫かな」


 ハンターの資格を取った子孫達を使って境界の開拓に乗り出した。その土地に亜人を大量にもぐりこませた。実は僕ら開拓は大得意。兵士より屯田兵としての能力なら多分この大陸で圧倒すると思う。兵士としても平均的にはNO1の種族だと思うけど。ただの戦闘民族じゃない。ノウハウが豊富。


 まず2つの村を開拓する。基本的な生活が出来るようになったら。その2つの村を壁にする様に人間の国に近い村を開拓して、ここに人間を呼び込む。いろいろと貧しい農民からスカウトしてくる。裕福でもあぶれてる2,3男を新しい農地を約束して引っ張ってくる。この辺りは地方ハンターになった子孫達が担ってくれている。


 とにかく重視する事は危険地帯はミドルハンターが受け持つから一切そこの警備には参加しなくて良いと、境界付近の村が防波堤になると安全をアピールしてつれてくる。出来た作物とあわせて換金したとして偽りの税を一番近い村の役人に持っていく。この国は作物でもどっちでも良いけど作物の現物徴収は面倒なので、それを避けてなるべく良好な関係を築けるようにする。


 祐二にミドルハンターの子孫達と打ち合わせに行ってもらった。うーん族長引きこもりだな…。役人が着服する恐れがあるから。これを防ぐ手段の打ち合わせらしい。


「どうも祐二さん」

「よ」


 祐二はとても偉い人扱いなので皆子孫達は腰が低い。


「ハンター養成所とかギルドって国とつながりがあるんだろ?頼んでみたらどうだ?払うものはきちんと払ってるんだから。後はそれちゃんと王様に届いてるか?って確認だけだからな。とにかく何か言われたらミドルハンターの歴史を長々と語れば良いから。

国の補助金受け取って無いし文句言われる筋合い無いから。他の開拓地の亜人にもつながり作っておいて突っぱねれば良い。後は族長の田中じゃなくて、開拓村の田中さんも支持してくれてるから。その話もしておけば良いさ。

一番のポイントは自分達じゃないと、こんな危険地域で開拓できないって俺ら強いんだぞ舐めるなよ?ってアピールしておけ」


 とりあえず3つほど開拓して留めておいた。国の出方を見るため。実は大して危険じゃない。この辺りの森中に開拓地に移り住んだ元の住民の村があるから。ハリボテの危険地帯だから。それに定期的に祐二がモンスターを中央に移動してくれてる。森の中が分からないから放置されて来たけど、森の中僕達の国なので何も怖がる事が無い。


 人間が勝手に思い込んでる。難開発地域を上手く開拓したので咎められるどころか褒められた。ミドルハンターが居ない頃に作られた迷信だろうな。出鱈目と言えないのはこの森実際元々は恐ろしい森だから。

 さて本番はここからだ。境界付近までは手を広げずに増やした村と森の村で謎の交易を始めた。国が亜人国を認める前にずぶずぶな関係にしてしまおうという事だ。


 密な亜人ネットワークに薄く内側の人間の村をつなげていく。あんまり派手に遣ると良くない。大事なのは亜人国とのつながりが無いと生活レベルが落ちるのを意識するぐらいで良い。


「うーん人間に近い子孫はどんどん外に出してしまったから見事にここが亜人らしい場所になってしまったね…」

「多少問題かもな」


 僕と祐二はそんな話をしていた。


「んまー祐二の家族はすごく人間に近いから。こっちにきてくれる子が増えて助かってるけどね」

「そこまで人員要らないからな。それなりには危険だしあんまり強くない子にはこっちで生活して欲しいよ」

「ただデメリットばかりじゃないかな。戦争の時いかにも亜人らしい奥さん方が奮闘したおかげで人間に近い子孫が亜人だと思う人まず居ないからな」


 いよいよ魔族側にも乗り出した。元々出生率の低さが合って人口密度がすかすかな地域。是非ねじ込みたい。祐二やソルベさんの活躍もあって、亜人と魔族の融和地域が出来た。そもそも境界線の向こう側なので土地は中立な緩衝地帯ってのが大きかった。他国への移民じゃない。新天地の開拓を一緒に遣りましょうって話しだ。


 僕らとして魔族を刺激し無いように気を使ってきた境界線を開拓できるので良い所だらけ。なんとか混血によってハムスターの様に増え続ける早い成長性が落ちて欲しい。もう成長率が落ちるのは、早い時期から進めてきた魔族主導の融和地域で証明されている。


「後は農業以外の産業だね」

「まずは材料だろう。鉱物を探して最低でも村で使う武器や農機具は自作し無いとな」


 短期的には過去に無理矢理解決した。つるはしで出ろーーと念じて山を掘ると鉱脈が出来た。これを繰り返して。それなりに大きな範囲の金属の生産地を作った。ただこの力に頼るのは規模が小さなうちに限る。困った時のつるはし頼みから脱却し無いと。


 最終的にはなんとか人間の国に国家として認めてもらう事かと思う。ただ長期にわたって魔族と人間は交流してこなかったから。今更亜人だけが交流した行ってのは無理があるのかな?


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