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迷い込んだ転移者5ー2

 地味な取引だったが、俺は田中の協力で小屋を作り毎日2つの村に出かけていろいろ話すようにしていた。そのおかげで魔族のまとめてる人の目に留まった。


「とても君のやってる事には助かってる。もっと私の名前を使って良いから大々的にやってくれないか?」

「はい喜んで」


 その人はソルベという魔族だった。その関係で親しくなっていろいろ話すようになった。それで分かったのだが、この人が目的の人物だと分かってきた。


「ソルベさんと随分親しく慣れたと思うので、重大な俺の秘密を話します。俺魔族だといいましたけど、どうやって狩をしてるか?疑問に成りませんか?」

「実はなっていた。最初は複数で狩りをしてるんだろうと普通に思っていた。でも君はずっと一人で頻繁に来てるよね?何か変だと思ったけど、2種族の融和って君のスローガンを利用させてもらった」

「俺単純に人間ってわけじゃ無いです。本当にモンスターを追い払う力あります。ただ俺それを狩をするときだけ無くす事も出来るんですよ。そういう場合魔族なのか?人間なのか?どう答えれば良いか?困りますよね」

「そんな事あるのか?」

「見に来ますか?簡単ですよ。俺が力を切って近づけた後使って遠ざければ良いです」


 そういって二人で密集地帯に出かけた。俺はソルベさんと離れてモンスターを連れてきた。ソルベさんが見えたらモードを切り替えた。


「なんだって?」

「面白いでしょ?」

「ああ事実だな君は魔族だし人間だ。私を騙してるわけじゃなさそうだな。だから協力してくれたのか?」

「あると言えばありますね。ただ俺自身は明確な答え持ってるんですよ。俺魔族の力を持った転移者なんですよ」

「ああなるほど」

「ここまで話したのはある人物と魔王様に同盟を締結して欲しいんですよ」

「個人と魔王様が同盟?」

「いやそれはそういう形で当然魔族とある集団です。ただ詳しくはまだ言えません。ここまで俺が話したのはちょっとソルベさんに危険な橋を渡って欲しいからです」

「と言うのは?」

「俺と境界の森に入ってほしいんですよ」

「構わないさ」

「本当に良いのですか?」

「私を魔王様の重要人物と知っての暗殺ならもっと機会は会ったでしょ?そう思われるのを心配していろいろ明かしてくれたのかと」

「はいそうです」

「じゃこのまま行きますか?」

「はい」


 俺達はそのまま密集地を抜けて森に入って行った。田中村についた。そろそろ町といえるような規模になってきた。田中は嘘を言ったわけじゃないが、本当の能力は自分の思いを実現するようなものを掘り出すつるはしを振って様々なものを作る力だった。

 外からも様々な作物を入れているけど、根菜類の多くは田中が欲しいから掘り出したものだ。絶対に希望の物が出てくるわけじゃない。それでも田中の能力はそれに近かった。


「なんだここは?」

「ここがその集団です」


 住民がじろじろ見ていた。当然だろう。ここでは普通の人間が珍しいんだ。特に魔族より人間に近いソルベさんだと当然だろう。


「人型モンスターの村?」

「こんなモンスター居ませんよ。目的の人物に会えば分かります」


 田中の家についた。田中の家は俺と同じゲームの家だ。規模が大きくなったので最近は別邸を使っている。いきなりあれは衝撃が強いのでこれで良いだろう。


「やあ田中、この人がひょっとしたら魔王様と同盟を組んでくれる橋渡しをしてくれるかもしれない人だよ」

「おいおいひょっとしてでここに連れて来たのかい?」


 田中は非難していたが俺の判断に怒ってなかった。


「どうも田中祐二です。僕が魔王様と同盟を求めていて、僕の国と魔族の国で同盟を結んで欲しいのです」

「国?」

「規模は街ですけど、おそらくこの町の住人は人間にとって国といえるような脅威になります。個人個人はおそらく魔族より強いです。確かめて見ますか?」

「いやそれは私には向いてない。それは置いておいて。何故魔王様と同盟を望むのか?」

「僕と魔王様は利害の一致があるからです。魔王様は人間との戦争を望んでいませんよね?」

「そうです」

「僕も同じです。同時に魔族との戦争を望んで無いです。この地域を作った狙いは魔族には脅威にならずに人間にだけ脅威になるモンスターを利用するためですよね?ならモンスターより知性があり考えを汲み取ってくれるより強力な集団が現れたらどうですか?それは魔王様の求めるモンスターより理想的なこの地に住む相手じゃないでしょうか?」

「この国が魔族の脅威にならない保証はどこにあるのかい?」

「それはもし僕がその気になっても後ろは人間に狙われます。僕はものすごく弱い立場なので誰かと組むしかないんですよ。その相手は国境を越える意思が無い魔王様しか居ないと思っています。人間の王はそれに相応しくありません。

それともう一つ聞いて欲しいんですよ。僕は将来的にモンスターを根絶やしにはしません。魔族にも人間にもモンスターを境界線に配置します。これによってモンスターは僕が敵なら魔族の味方になりますが、人間はモンスターは敵です。それゆえ魔王様の初期の構想が崩れません」

「それあまりにこっちに都合が良くないかね?」

「はいもう一つあるからです。モンスターを僕は恒久的な食料として狩りをしたいと思っています。それにはモンスターを根絶やしにしたい人間の王より魔王様の方が都合が良いんですよ」

「それは私の構想にも似ている」


 田中は疑問をぶつけるような顔になった。


「と言うと?」

「私はそれを人間にやらせたい。魔族が狩りをするのは重労働だ。それに対して人間は楽だ。だからそれを一部の人間にやらせようと思っていた」

「内部分裂ですか?」

「そういう事になるね。今の所上手く行く可能性がある」

「人間の国は信用できませんが、その集団は覚えておきます。実は武話してくれないか?」


 俺に話を振ってきた。確かに立ち会ったのは俺だ。


「以前人間の軍隊がこの付近で軍事行動を起こそうとしていました。それで俺がモンスターをけしかけて撤退させました」

「おいおいそれ重大な停戦合意への違反じゃないか。ミドルハンターは良いんだ。開拓という大義名分がある。しかし軍隊をけしかえてそのまま魔族との境界線に来たら敵対行動だぞ?」

「俺はだからソルベさんの様な人をすぐに探したんですよ。これはかなり危険な状況だと思ったからです」

「それについて今2種族の融和を進めてるので人間には抗議しないでおこう。ただ魔王様との同盟今のでかなり現実味を帯びてきたと思ってくれて良い」

「ただこの同盟ある時期まで黙っておいて欲しいのですか良いですか?2つ理由があります。人間側を刺激する点です。それは良く無いです。次にまだこの国の存在を隠しておいて欲しいです。あくまで人間側が森に入ってきたら反撃する形にしたいです」

「いやまて、それなら田中殿の国は一国で戦わなくてはいけないぞ?公的には秘密なのだから」

「それが出来なくては同盟の意味が無いと思っています。国力を一層高めていくのでその協力は是非お願いしたいです。そして僕には彼という同盟関係の独立部隊がいます」


 また俺に振るのか?


「俺一人だぞ?」

「まあもうソルベさんも知ってるんだから良いでしょ?」

「ああまあモンスター部隊か」

「分かりました。魔王様に伝えておきます」


 ソルベさんは送ろうとしたが一人で良いと遠慮して帰っていった。


「田中さあれで良かったのか?お前の家族死ぬぞ?」

「仕方ないとは思わない。でも起こって見なければ僕がそれについてどう思うか?分からない。悲しいとは分かる。だが理性的にはどう考えても今表立って同盟を結ぶのは僕に都合が良すぎて断わられる可能性がある。ここを知って反撃する時こそが理想なんだ。その覚悟を決めてなら全面戦争になるから。それは絶対にとめなくてはいけない」


 無理してるなこいつと思ったが言わなかった。理性的には良く分かるから。良い意味で俺達は合理によって強く結びついてる関係なんだと思う。いろいろとそこについて思う所があったが、家族で集まった戦闘集団なんて歪な集団にはそういう視点も重要だ。


 多少時間が経過したが、秘密裏に様々な魔族側の使者が来て最後に俺が出向いて同盟締結となった。ただ気になったのは魔王とは会えなかった。


「魔王様って秘密主義か何かですか?」

「いやそういう事じゃないのだけど、これが公的なものじゃないなら不味いんじゃないか?と魔王様が直々に仰られて、そういう流れになった」

「確かに逆に気を使ってもらったんですね」

「一部の魔族しか知らないからこれについて多くの魔族が関わると不味いんだよ」

「すみません軽率でした」

「いやいや軽んじられてると感じても当たり前だよ。ただそれは裏を返せば国として、まだまだ信用できない部分があるのが自分達で感じてる裏返しじゃないのかい?」

「はいその通りです。今はとにかく時間が欲しいです」


 大筋の方針がざっと決まり後はひたすら時間が解決してくれる流れとなった。俺は俺で相変わらず情報収集とモンスターをすべての地域からから集める日々が続いた。ただちょっぴり恥ずかしい事もあった。結局違う子だけど、熊と虎のモンスター娘嫁に貰ってしまった。指揮できる人間が欲しいと言い訳をしていてたけど…。


 後ベルに子供が生まれて二人にも子供が生まれた。田中との密接な関係から3人養う十分な蓄えはあった。生まれた子をテイム状態に出来たのはちょっとショックだったが…。


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