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新しい開拓地3

 エリック・ガウン達の遅々として進まないモンスター討伐に対して、王様は痺れを切らして兵隊を数人調査のためつれてきた。討伐数とかもきちんと話してて、本当に数が多いんだ。

 何を考えてるか?分からない。俺達が嘘の報告してるのか?何のために?今までそんな事一度もした事が無いし疑われた事も無い。何故今だけ?そこに魔族との戦争の八つ当たりをされてる。ミドルハンターの仕事とまるで違うんだよな。正直うんざりしてる。


「どうもエリックです」

「田中です」


 俺達は互いに挨拶をした。あっちの目的はパーティーに参加して討伐を共に行う事で現場の詳細を報告するというものだった。疑われたんだろうな。根拠なんて無い。多分無理矢理軍隊の肩代わりさせられたからミドルハンターじゃなくてそういう目で見られ始めたと思う。


「すごい数ですね」

「ええ」


 言葉少なに返した。何が言いたいか?手に取るように分かる。疑ってたんだ。それならミドルハンターの時から疑えよと思う。その時に較べて遅いから疑ってるんだ。でも何故急に今になって虚偽の報告を?

 もう合理的な思考は無い。それが魔族に対する苛立ちの感情的な部分だと思う。今まで虚偽の疑いが立てられなかったのは、通常のハンターと比較されていたから。それを大規模な軍隊と比較されるようになった。


 連携なんて上手く取れないから。あくまで弓や魔法で援護射撃に徹してもらった。低レベルな魔法なら詠唱ありなら兵士でも可能で、かつ一応国から調査隊として派遣されてくるからそれなりにレベルが高い。

 助けにはなったが、今の状況を大きく改善するほどじゃなかった。はっきり言ってイマイチだった、俺らのレベルの高さを十分に分かってもらったと思う。


「いや皆さん強いですね」

「いえいえ僕らはモンスター専門ですから。対人ならこんなに上手く行きません」


 それは一応お世辞や謙遜じゃなくて本音だった。ただ田中さんは対魔族=人間相手にやってる。その点田中さんが違う面も多いと言ってるから知ってるのが大きい。

 数日して、無事調査隊は何の不満も批判も無く帰ってくれた。圧倒的なモンスター討伐における差を見せ付けたから多分今回の調査は王様の八つ当たりの様な不満を解消できると思ってる。


「エリック、どうも大きくここの方針転換するようだ」

「田中さん、どういう事ですか?」

「もうメンバーは分かってるけど、大幅にここの人員を減らして内地の開拓地の開発の方に転換する。元々時折魔王討伐隊のメンバーが参加する事で過剰戦力だったからな」

「やけに大胆な方針転換ですね」

「ちょっと異常事態だと分かったんだろうな。俺も異常事態だと思うよ。どんどん集まるメンバー見てたらすぐ終るんだろうなと思ってた。おまけにたまに魔王討伐隊まで参加するんだから。あくまで個人ならこの国の最高戦力に近いよ」


 残ったメンバーは俺と田中さん、ジャックさん、後デュランとメルビン。他にも知り合いがちらほら。と言うか転々としてるから知ってる人多い。人選としては良く分からないけど、なんだかんだで親しいメンバーが残った。


「ジャックさんこれからどうなるんですか?」

「うーん、境界線を守る。多分それが一番の最重要課題になる。内地にモンスターを出してはいけない。ただ魔王討伐隊も残ってくれるので、広範囲の守備は任せられる。俺達は今までやってきた農地の整備はそのまま続ける事になる。それはある意味死守するって国の方針だと思う。そのための最低限のメンバーは残ってると思う。

現地視察に来てくれたのでかなりそういうの人選に配慮されてる。俺もこれで十分防衛可能だと思う。今までの様に奥地に境界線を押し返すぞって遣り方じゃなくなる。そこだけ変える。たださギリギリにしてしまうと不安もあるからある程度は押し込むから」

「何か結構奥まで進んだのにもったいない気がしますね」

「でもこの人数じゃいくら経験豊かな精鋭が残っていても苦しいからな。奥に進むと左右も同様に守らないと囲まれてしまう。以前は人数でそれが可能だった。今それ無理だからちょっとだけ突っ込むだけにする。まあ新人は内地に戻ったからなんとかなるだろ。

中途半端で2転3転する計画だなと思う。でも新人を安全な後ろに下げて俺達を残したのは最低限の配慮は出来てる。根本的に死守ならもうちょっと戦力欲しいけどな。イマイチだが最悪じゃない」

「攻めの田中さん、守りのジャックさんですね」

「田中さん差し置いてリーダー風吹かせてるみたいで恥ずかしいじゃないか…」


 それに対して田中さんが口を挟んだ。


「いやエリックの言うとおりだと思うよ。奥に突っ込むんじゃなくて死守を重視なら俺より相応しいよ。この方針転換ミドルハンターにとってはそういう事だと思うが、国全体としては多分軍隊が動くと見てる。おそらく俺達を今回の対魔族戦において見限ったな」

「そりゃ俺達軍隊じゃないんですから。そういう使われ方は嫌ですね」

「開拓が絡んでるけど、死守ってのが軍隊なんだよな。俺は受け入れてる。新人が内地行った身代わりだと思ってる。確かに戦略が中途半端だ。おそらくまだ軍隊が準備整ってないけど、痺れを切らしてぶつけてみるんだろうな。

モンスターを舐めてるとかじゃ無いと思う。俺達に足りないのは数だろ?だからそういう方針転換だと思う。モザイクなのは、軍人の数がまだ十分じゃないから。だから俺達ちょっと軍隊っぽい働きさせられるんだと思う」

「このメンバーなら撤退とか考えられ無いですよ」

「それぐらいで良いさ。不安もあるだろうが楽観的に前向きに行こう」


 ジャックさんの死守って言葉に引っ掛かりがあった。それを上手く田中さんが救い上げてくれた。何か防衛線を守るってのがミドルハンターっぽくない。ただ奥に行かないなら負ける気がし無いから。確かに田中さんが言うように楽観的に構えられた。


 しばらくして田中さんが言うように軍隊がやってきた。俺達には挨拶程度で。戦場はまるで別の場所になる。俺達もかつかつでやってるので、さすがに食料の要求は無かった。実を言うと肉は供給できる。その点余剰の肉を魔族と取引をしていた田中さんはひやひやしていたみたいだ。

 ただでさえメンバーが減って供給量が減ったため魔族との繋がりがなくなってしまうのがいやな様だ。俺は将来的な事はまだ考えられない。だから田中さんの行為微妙な目で見ていた。


 ただ田中さんが言うように本当に小規模だ。経験者の俺達はそれを危険視していた。助言は言えなかった。王様の命令できただけで、正しい判断だと現場の指揮官も強く思ってるわけじゃないだろう。俺達が不安にさせるだけなので忠告は控えておいた。それでもあれじゃ危ないと思う。




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