魔族について
俺は元転生者ハンター今は養成所の教師をしている。
「君達に一番伝えたいのは魔族を正しく知ってほしいという事。今から話す事は世間の常識とは全く違う長く魔族と戦い続けた本物の魔族を知るものの言葉だ」
俺はこの世界の魔族に対する常識に嫌気が差していた。元々日本人でどこがずれた所がある。それでも転生者としての人生を歩んできたこちらに染まった部分がある。それをすべてぶち壊したのは魔族に対する出鱈目なこの世界の常識と現実のズレだった。
「一般的に言われてる魔族は魔物と一種だと言うのは大きな間違い。魔族はどちからと言えば人間の方が近い。魔族はきちんと文化レベルの高い人間の様な生活をしている。魔族をやたらと貶める国や宗教関係者は嘘出鱈目ばかり話している。人間と魔族は違うから害を為すだけなので殺すべきって話は間違ってる。
俺は魔族と戦うべきじゃないと言ってるわけじゃない。人間同士だって争う。それを魔族は全く同じだと考えている。
では何故今の様になってしまったか?と言うと魔王と言うのがそもそもおかしい。魔族のトップはただのまとめに過ぎない。その中で一部これは危険だ殺さないとまずいって支配者は居る。だがすべてじゃない。その根底に魔族に対する認識の間違いがある」
「先生しかし、それはリック先生だけが話す事だと思います」
「ああそれで良い。この養成所は全体で一つの方針が無い。個々の先生で全く考え方が違う。それはハンター養成所が学問の様な知識を学ぶ場所じゃないからだ。優れたハンターの経験則を聞く場であって誰が聞いても同じ答えを教えるような場所じゃない。
だから君達も自分の目で魔族を見て私の判断を確かめてほしい。私の目から見た常識の間違いを今から話す。そもそもこのようになったのは、魔族だけが持つ人間と違う部分が大きい。まず見た目は違う。ただそれは人間の肌の色、髪の色が違う目の色が違う程度の違いしかない。魔族は動物よりも人間に似ている。
じゃ何が違うのか?魔物を追い払える力が魔王じゃなくて誰にでもあるから。魔王やその配下だけがこの力が強力になって魔物を召使の様に扱うことが可能だから。魔族は魔物に人間よりはどんな魔族も影響を与えることが出来る。魔王の力はその最たる形でしか無い。
でもこれだけじゃ何故今の様になったか分からない。もし魔族が隣人で、魔物を追っ払ってその魔物が隣の人間の家にやってきて被害を蒙ったらどう思うか分かるか?」
ある生徒が先生の質問に答えた
「不愉快だと思います」
「そう。魔族と戦うなと言ってるわけじゃない。魔族は人間にとって迷惑な行為を働くだからそれに抗議する意味で暴力に訴える事になる。魔族はそれに対して基本反撃している。一部の魔族だけが魔王として明確に魔物を使って人間を攻撃している。魔族と人間の過去からの戦いは基本魔族の迷惑行為に対する人間の暴力による怒りとそれに対する反撃でしか無い。
だからこそ魔族は人間と変わらない。逆に人間がその力を持ってて、魔族が無かったらどうなるか?人間は間違いなく魔物を魔族の住む地域に追いやるだろう。魔族にとってそれは間違いなく不愉快な行為となるだろう。
魔族を攻撃してはならないわけじゃない。話し合いも無しに人間の世界に魔物を追いやって生活する彼らに人間が怒りを持つのは当然の事だ。しかしそれは人間同士でも発生するいざこざにすぎない。
人は魔族に怒るべきだし迷惑行為には辞めろと抗議して辞めないなら戦うべきだ。しかし、魔族は人間と違って迷惑だから滅ぼすべき魔物と同じだと言うのは全く違う」
生徒からの意見を待って間を空けた
「似たようなものだと思うのですけど」
「人と違う生き物、そして、魔物と同じって誤った認識で滅ぼすため戦うって点が間違っている。魔族側からすれば全くの出鱈目で殺される立場なら大いに反撃するだろう。話し合いの余地すらない。
そして根本的には魔物を命令するのではなく追い払うだけの力なら魔族を攻撃する正当性は無い。怒りはそこにあっても正義は無い。先天的な力じゃなくて、後天的にそんな便利な道具が出来たら人間は遣って追い払うだろう。お互い追っ払ってるだけなら魔族のどこに問題が?となる。
人間はそういった力が無い。すなわち魔族よりと劣っているって事になる。それを戦いを扇動する全く国や宗教関係者は話さない。知らないのかもしれない。知ろうとし無いから。
今の常識は、魔族の中でこれは打倒すべきだと思う魔王と同レベルだと俺は見てる。それぐらい悪質だ」
「仮に先生の良う経験談が正しいとして、それでも魔物を追い払う魔族の行動は邪魔ですよね?その解決方法はあるのですか?」
「うーん常識を曲げたくない屁理屈なのか?それとも問題の本質が根が深いのを分かってるのか?どっちか分からないけど、その点は期待させてご免となる。おそらく君達の大半は魔族の討伐には関わらない。ハンターが軍隊に単純に劣っているわけじゃない。
ハンターより軍隊の様な大規模な数の論理による力の発揮が向いてるだけだ。だから一般的なハンターは魔族と境界線で戦うことは無いだろう。だからこそ知っておいてほしいんだ。魔族は敵であっても魔物と同一視するような生き物じゃない。むしろ人間に近いと。今日の授業はここまで」
俺は最後の生徒の質問に戸惑っていた。想定してなかったわけじゃない。ただ相手の事を全く知らずに差別的に扱って殺しあうのは都合が良いんだ。でも本当の事を万が一知ってしまったとき間違いなく強い迷いが生じる。俺がそうだったから。
ハンターにはどうでも良い部分がある。だが魔族と戦う軍人の養成所でこんな事を言ったら俺は即首だろう。だから言ってる部分がある。少しでも本当の事を知ってる人を増やしたいってのがあった。それを魔物と魔族についてのついでとして話すには都合が良かった。これを同じように扱って授業をしてるのが実務重視のハンター養成所らしい。
俺自身現時点では戦って彼らの勢力範囲を小さくしなくてはいけないと思ってる。でないと大きな地域の魔物がすべて人間のすむ場所に移動してしまう。生き物の生存競争として仕方ない戦いだった。なんとか解決策は無いのか?とは思いつつも、魔族の立場になってみると自分にその力があるなら戦って怪我するよりまずは追い払おうと思うと思う。
それがどこに行くか?で押し付けられる立場の相手の存在なんて考える事も無い。人間だってその力があるなら同じことをするに決まってるんだから。
前世で昔読んだ遊牧民と農民の争いを見てるようだ。基本農業に適さない土地で遊牧してるけど絶対じゃない。畑が増えれば増えるほど遊牧民の生活は苦しくなる。なら農民になれば良いんだろう。それさえも酷い勝手な意見だ。魔族には追い払う力使って追い払わないでくれと言うのは無理がある。
いずれなんとかしなくては行けないのだが、今の話し合いの余地無しで問答無用で争いあう魔族と人間の不毛な戦いには正直うんざりしている。今から振り返ると良く俺は勇者なんてやっていたと思う。
悪い魔王の支配から救った勇者は居る。ただそれは人間でも同じような英雄譚があると思う。魔族に対する偏見とは全く別の話しだ。魔族側も人間の誤った認識と攻撃によって今では愚かで劣った人間って差別意識が高く話し合いの余地はないのかもしれない。あまりに無知蒙昧による迫害の結果は人間の自業自得だとは思うけど。




