迷い込んだ転移者4
俺(土田武)はしばらくは似たような日常を繰り返していた。さぼった分金を溜めなくては行けないからだ。ただ人間側の情報を探っていか無いといけないと思っていた溜めていたのもある。そもそも人間側で儲かるなら俺はあっちに居た可能性がある。宿屋が高いんだよな。でも今回は情報を集めるのが軸であるためお金がたまらなくても宿屋に泊まって長期に情報を集めないといけない。
そこで分かったのはかなり問題になる部分だった。ミドルハンター達だ。彼らを使って軍隊を使わずにモンスターの壁を開け始めた。そこで俺はとても良い考えが浮かんだ。彼らの開拓場所の位置を知ってしまえばそこにだけ集中してモンスターを集めれば良い。各個撃破を防ぐ戦力の集中投入。
ただの自由に動いてるモンスターじゃこれは出来ない。明確な戦術を持ったモンスター部隊。まずは2重作戦。人間側全体から一挙にモンスターを集めて境界の森に捨ててくる。次に緩衝地帯のモンスターを開拓村との境界に大量に捨ててくる。
もちろん見られないように近づき過ぎないように。最後にミドルハンターの討伐が上手く行って無い事を近くの町で確認して家に帰った。今後魔族側でもこの2重作戦でずっと続けるつもりだ。
しばらく繰り返してると森で変な連中と遭遇した。
「貴様何者だ?」
そうとうびっくりしたんだろう。明らかな敵対姿勢をとった。こいつらただのモンスターじゃない。
「話すモンスターも居るのか?」
面白いからテイムしてやろうと思ったけど出来なかった。こんな事初めてだ。難易度の高い強力モンスターなんてのは居ない。俺はそもそも相当強いモンスターでも倒してしまえる。それがあるんだろう。テイム状態なら俺の強さに比例するようだ。だからこんな事無かった。
「私はモンスターじゃない」
「まあでも人にも見えないな」
「貴様は魔族か?人間か?」
「多分どっちでも無い」
なんとなく曖昧だが本音で話していた。彼女達の存在が面白かったんだと思う。
「とりあえず警戒を解いてくれないか?俺はモンスターテイマーだ」
「なるほどだからこんな危険な森に人間でもこれるのか。でも残念だが死んでもらう。主から我らの存在を知った相手は殺すように言われている」
「まて、俺強いぞ?そいつと話をさせろ。信用できないならやってみれば良いさ、手加減してやるから」
一人に絞って殺さないぐらいに痛めつけてやった。あまりに一瞬だったため、他連中は反撃できなかった。
「な?辞めとけって」
倒れた相手が起き上がってきた。
(マジか、そこまで手を抜いてない魔族より強いぞ…)
「分かった、だが直接はあわせられない。ここで待っててくれないか?返答を聞いてくる。他の皆は残していくから後をつけようと思わない事だ」
「ああそれで良い」
(なんて回復力だ。もう全力疾走してる。やっぱりこいつら新種の強力なモンスターじゃないのか?)
「ご主人様は会うそうだ」
「了解。ただもうちょっと時間掛けろ。お前の走る速度と時間で大体お前らの拠点探り当ててしまうぞ?俺を待たせないのは良い事かもしれないけど、考えが足りないぞ」
連れて行ってもらう前に空気悪くしてしまったかな。なんとも微妙な顔をしていた。部下として良い奴だと分かるんだけど、口封じで皆殺しを多分こいつらやってのける。そういう集団にしては狡猾さが足りない。
「やあ僕は田中祐二。僕は転移者そして君も転移者だろ?」
「何故分かった?」
「テイマーなんてほとんど居ないからね。後君の外見的特長を聞いておいた。一言で言えば僕と似てるか?って事。あのね僕は君と仲良く遣りたい。だから敵対したくない。一番の懸念は君が国の派遣した転移者なのか?って点。そこは賭けた。君は違う」
「危ない橋を渡る奴だな。俺は確かに違う」
「仕方ない無理に追い返そうとしたら彼女達に危険が及ぶ。転移者は国と関わらない奴が多いんだよ。そうじゃなくても転移者は国の人間より元の同胞とつるむ事が多い。もしそうでも裏切れって誘うおうと思った」
「俺が言うのもなんだがこんな所で何をしてるんだ?」
「簡単に言えば生活してる。何故それが可能なのか?なら僕はモンスターから女の子を作る事が出来る。僕にとってモンスターは敵であり味方なんだ。同類だなと感じたから君を呼んだ」
(こいつケモナーか…、敢えてそこは触れすぎないほうが良いな)
「そうだな同類だと思う。ただいきなり仲間になるのは無理だ」
「じゃ互いに不可侵と言うだけでも良い。君の事は皆に話しておくから。君も当然襲わないで欲しい。見た目はすぐに分かるし知性ある集団だと分かると思うから違和感があるモンスターが居たら話しかけて欲しい。ちなみに女の子ばかりじゃない」
(子供が居るな。もしかしてこれあいつの子供なのか…。ああでも確かに微妙にモンスターっぽいけど凄い美少女もいるな。それでもあいつ選り好みしてる感じがないな…)
「ああ分かったそれで行こう」
「ちなみに君の名前教えて欲しいよ」
「互いに不可侵じゃないのか?」
「そりゃ争いになるって意味で、僕は名乗ったんだから」
「ああまあ土田武」
「今後ともよろしく。君が国の人間じゃないなら、いつでも尋ねてきてよ」
「おう分かった」
とりあえず後で利用できるなら利用するとしようと考えてその場は去った。確かに可愛い。初めて出会ったこの世界の女があれならまあ分からないでもない。俺もそのまあいろいろ利用する。ただどうみても人間じゃ無いよな…。距離をとったのは大半そこに起因する。
俺も選べば良いなって子いたけど、どうも違うんだよな…。あいつは上級者だ。簡単にはかかわりを深く出来ない。仲たがいする理由が仲間の性癖を受け入れられないって何かな…。ちょくちょく距離をとって付き合っていけば良いか。
それからもちょくちょく訪ねる事になった。最初に見た時にいろいろ栽培してる事に目をつけた。お金を得るのでなければ物々交換で良いかと。モンスターの肉はそれなりにあるはずなのに快く交換してくれた。それから町に行く話をしていたら、じゃ頼まれて欲しいと金銀宝石を渡された。
「おいこれすごい金額じゃないか?良いのか?」
「まず第一にたいしたものじゃない。そういうものって飽和状態になったら値が下がるんだよ。だから僕は他の物を集めてる。武の頭なら多分それがスグ話せば分かると思ってね。腹が減った時金銀宝石があって何になる?って話しだよ。余裕がある時にもっと必要なものと交換しておきたいんだ。
第2に僕は交換に対して手数料を払おうと思う。その代わり同時に様々な情報も教えて欲しい。そしてそれは武も知りたいだろ?武が町に行く口実を僕が作る事が出来る。僕は家族無しにこの村から出るのが苦しい。その点武は強い。
ついでに話すと家族の中で人の容姿に近いものにすでに頼んでるんだよ。それは僕が武を信頼してる証拠でもある。僕は武に情報より知りえた情報から判断する意見が聞きたいんだ。そのお金だと思ってくれれば良い」
「分かった」
俺はそれほど田中を信頼して無い。それはあいつの動機が明白でそこが俺と繋がらないから。田中は家族のために動いてる。俺はそういうのが無い。自動的にあいつと組むとあいつの家族を守らされる。
差別的に見てるわけじゃないし、可愛いと思う子もいるモンスターとはいえ人妻だが…。それでも化物連中助けるために命張れるかって出てしまう。これを言ったら決裂だ。だから田中も踏み込まないようにはしてるようだ。
悔しいが田中の提案はものすごく役に立った。町に行く時に肉を裁いて手数料も入って情報も手に入る。おそらく俺は尾行されて無い。俺の家すら知らないし、俺が魔族側で売りさばいてるなんて知らないだろう。でも俺の生活を見てるかのような欲しかったものをくれる。
俺はあいつが馬鹿じゃなとは思ってるし逆に頭が良いと思う。だが理解できない。何故モンスター達のためにそこまで必死になれるんだ?それを馬鹿だと思ってしまうんだ。俺にとってモンスターはテイムするけど仲間じゃないから。
そもそもあいつが持ってる情報との交換がものすごく互いのためになる。互いに都合が良くてあいつは俺を助けになると思ってる。だが俺は利用できると思ってる。微妙に違う。
俺はお金をためて選択肢を増やしたいが、あいつがもたらす利益によってそれ以外の方法の選択が出来なくなってる。考えれば考えるほど、他に良い選択肢が無い。それはあいつも転移者として考えて今の立場があるから俺と似てるんだ。
田中は他の選択肢なんて全く考えてない。だからそれに向かって迷わず前進できる。俺にはそれが無いから。あいつと組むのはすごいメリットが多いけど、最後の最後でモンスターなんて守れるかとなってしまうのが壁になってた。
ずるずると自分を生かす場を探すための情報集めのため、俺は田中との共存関係を続けていた。敢えて距離をつめないで行商人の様な関係でかなりの時間経過したと思う。何か村がでかくなってる。そして田中は踏み込んできた。




