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迷い込んだ転移者

 俺(土田武)はゲームをしていた。異変に気がついたのは、ゲーム画面を見ている俺が居ない時だった。ゲームのプレイヤーの視点と目が完全に重なってしまった。大きな変化だこれで気がつかないなんてありえない。俺はゲームの中に閉じ込められたのだ。

 そこからが長かった。ゲームの中に閉じ込められたと思ってかなり長い間生活をしていた。何か違うなと思ったのは、こんな場所あった?となった時だ。そもそもこれゲームと全く違うんじゃない?って気がついた。


 家の中は良く似ていた。だが外に出るとやけにリアルな映像。モンスターもこんなやついた?そんな違和感の連続。これ多分ゲームじゃない。そう思ったとき俺はすでにガンガンモンスターを倒していた。

 とりあえず人だ人を探そう。後は腹が減ってきたので家の中にあった食料を食べて、モンスターの肉を焼いて食った。ゲームの時からモンスターの肉は食料として扱われていたので当たり前に食ってしまった。考えてみると腹が減った時点でゲームじゃないのは気が付くはずなのだが、なんとく見過ごしていた。


 さて人探しの再開。探索一ヶ月目でやっと村を発見。俺はその間ゲームのウインドウはそのまま使えたので新機能がいろいろあったのを確かめた。ログアウトしようとしてずっと弄っていたため隅々まで詳しくなった。

 モードが合って、モンスターは切り替えれば寄ってこない。これが使い勝手が良かったのは、食料のため狩りをする以外人を探す目的があるならモンスターが襲ってくるって邪魔で仕方なかった。これを発見したのは10日ほど経ってからだった。元のゲームに無かったので最初見逃していた。ログインについて前と同じ位置にあるのは思い込みかも?と隅々まで見直したため見つかった。


「こんにちわー」


 笑顔一杯に村の人に挨拶したが最後変な表情になった振り向いた顔に角があった…。しばらく無言の時間が続く。


「あの言葉通じてませんか??」

「あんた誰だ?」

(ふー通じてる)


 何かぎこちないやり取りだったので、家の中の人が出てきて俺たちを見ていた。角が無かった俺とあまり見た目変わらない人だ。白人っぽいけど少なくとも人間だ。この人人間離れしてる。


「俺は土田武って言います。迷ってしまってこの村に来ました。すんでいる所はもっと離れた場所です」

「そうか」


 そう言うと去ろうとしていた。


「ちょっと待ってください。俺はこの付近の事さっぱり分かりません。良かったらいろいろ教えてくれませんか?」

「意味が分からん。村長の所に案内するから聞いてくれ。何を言ってるか分からん」


 そういわれて村長の所に連れて行かれた。


「村長、多分旅人か何かが迷い込んだみたいだけど、何が言いたいか俺には分からん。後は頼みます」


 そう言って彼は去っていった。


「旅人かね、どうしたんだ?」

「村長さんですか、森に迷い込むと突然遠くに飛ばされたとかそんな不思議な話は無いですか?どうも元居た所と全く違う場所に家ごととばれてしまったんですよ」

「すまんが私も分からん…」

「そうですね。せめて村の名前教えてもらえませんか?」

「ドンナ村だ」

「後このお金って使えますか?」

「行商人が来て、村の産物と商品を交換するだけだからな。ただ別の村なら使えるよ。行商人の持ってくるもの以外が必要な時は、金に換えてもらって村の代表が町に買出しに行くからな」

「じゃ村の食べ物と交換してもらえますか?」

「やたらと多くじゃなかったら良いよ」


 小麦や油や日持ちしそうな野菜を交換してもらった。


「また来るかも知れませんその時また。ああそういえば最初に見た人何故角生えていたのですか?」

「は?」

「だって村長さん無いでしょ?ちょっと変わった人なら教えておいて貰おうかと思って」

「何を言ってるんだ?」

「???ちょっと待っててもらいますか?」


 そう言って外に出て村を見回った。農業で成り立ってる村らしくて、人が住んでるところから少し出ると何かしてる農民がごろごろいた。ああ、角だとかちょっと血色が悪い人がごろごろいた。同様に村長や俺と変わらない人もごろごろいた。


「はあはぁ、村長さん角の人と普通の人がここは共存してるのですか?」

「まさかお前人間か?」

「は何を?村長さんも人間でしょ?」


 村長さんはいきなり俺に組みかかってきたので、怪我をさせないように腰の剣で鞘ごと殴りつけた。すぐに家の外に出た。


「人間だ、誰か捕まえてくれ」


 4、5人の人間が僕の回りに集まった。襲い掛かってくるので、皆避けたりしながらぶん殴った。意外とモンスター相手の戦闘が役に立ってる。


「人間とは思えない強さだ。お前まさか勇者じゃないだろうな?」

「待ってください。話し聞いてください。もし戦うつもりなら鞘抜いてますよ。人間じゃないならあなた達なんなんですか?」


 そこで村長が


「皆ちょっと待てー、何か可笑しくないか?人間が私達の事知らないととぼけるのは変だ。私達は魔族だ」

「なんですかそれ?」

「どこの地方の人間かしらないが、黒髪は私達の方が多いぐらいだ。人間じゃないならあんた何なんだ?」

「こっちが聞きたいですよ。ちなみに人間と魔族って何が違うんですか?村長さんの場合肌の血色も良いし、角とか無いし人間でしょ?」

「まあ言われて見ると良く分からないな…」


 しばらく誰も話さない。


「ああそうだ私達はモンスターを近づけさせない力がある。人間は逆に襲いかけられる」

「なんだそんな事ですか。俺も出来ますよ。じゃ俺魔族なんですかね?」


 俺は段々分かってきた。ここは魔族と人間と言う民族種族に分かれていて、仲が悪い。ただあまり大きな違いが無い。唯一の違いがその力なら俺は魔族だと言い張ったほうが良い。


「そんなの信用できるか」

「でも俺その力でここまで来たんですよ。この辺にモンスター居ないんですか?証明して見せますよ」

「おらんよ。私達の力の影響でモンスターが村に寄ってくるなんてまずありえない」

「確かにこの近辺は全くモンスター居ないですよね。俺の力だと思っていました。さてじゃどうしましょうか?俺この村じゃなくてもいろいろ物品が欲しいのですけど。この先もトラブルになりますかね?」

「まあ、良く分からない奴だが人間がここに来るのも変な話だからな。悪いが他の村か町当たってくれ。胡散臭くて皆が警戒するから」

「はい分かりました」


 近隣の人とのファーストコンタクトは最悪だった。ただなんとなく対処できそうだ。詳しい話をしなければ魔族だと思ってくれるので、その辺り別の村や町では上手く立ち回れば良い。食料を置くために一度帰る事にした。探し回ったけど、多分1日で帰れる距離だと思う。


 家の中にはキッチンがあって飯を食った。別の町や村の探索を明日から再開するつもりだ。元々ゲームの家に何故キッチンがあるか?と言うと料理をする事がゲームの中に組み込まれていた。食べる事の意味が無かったのに。おかげで助かった。


 次の日から再開した。また1ヶ月ほど費やしてしまった。今度は町ぐらいの大きさだった。上手く魔族として立ち回らなくてはいけない。ただこの先どうすれば良いだろうか?と悩んでしまった。豊富に資金はあるが、いずれは無くなる。肉を売れないか?と思っていたら魔族にはモンスターは寄り付かない。じゃモンスターの肉を食べるわけが無い。困った…。


 町の肉屋にモンスターの肉があった。参ったな…。これはまた言葉を間違えると包丁持った店長に追い掛け回されそうだ。


「旅をしてて大きな町に初めて寄ったのだけど、小さな村じゃ見かけた事無いけど、モンスターの肉って上手いのか?」

「ああモンスターを捕らえるのは難しいからな。どこでも食べるってわけじゃないけど、結構食べる地域はちらほらある。不味くは無い」

「ええ捕まえられるのかい?」

「そりゃ教えられないな。俺も仕入れてる相手と仲が良いから秘密をばらすようなものじゃないか」

「悪い俺実はモンスター狩るのは上手いんだ。ただどの地方でも一緒なのかな?と思って聞きたくなったんだよ。この近辺の村じゃ無かったからこっちでも食べるのかと、しばらくこの近辺に居るから持ってきたら買い取ってくれるかい?」

「ああ構わないよ。あんたもモンスター狩れるのか。たださあんたの言うとおり地方毎に遣り方が違うと思うから俺も聞かないから、聞かないでくれよ」

「ああお互いにね」


 数日後買い取ってもらった。ただ俺はどうやら人並みはずれた力あるようだ。俺自身何故自分ぐらいあるモンスターを担いで兵器で1日歩き続けれるんだ?って分からなかった。でも俺には数KGの荷物を持ってるぐらいしか疲労が無かった。

 売った金で様々な食料を買って帰った。当面の生活費の目処はたった。ただかったるいなこれ。買取が安い。もっと希少価値があるか?と思ったけど、好きな人は食うって感じの微妙な肉だった。日本における高級肉じゃないけど、需要が少ない羊肉のようだった。


 魔族の事もそれとなく分かった。モンスターに追い掛け回される連中が人間らしい。俺のモードチェンジ状態と同じ。避けられるのが魔族。遭遇してしまっても積極的に追い払う事もできる。そこで分かったのは肉屋で聞くのは難しかったけど、別の場所でこの地方のモンスター肉の取り方は分かった。

 数人で囲んで追い込むようだ。どっちに言っても逃げ場が無いから簡単に仕留められるらしい。パニックになって反撃される事もあるらしいが、それでも人間とは大違いだ。魔族にとってモンスターはネズミなどが人間から逃げるようにするのと似てるようだ。


 さてこれからもこんな事を続けていくのだろうか?俺は無茶苦茶強いようだ。だから人間の中で無茶苦茶強い勇者と間違えられた。魔族は人間より基本高い身体能力を持つ。そいつらを軽々叩きのめすのは人間を基準にすると俺は無茶苦茶強いようだ。なんでも出来そうなぐらいの気持があるのに、やってる事は細々イマイチなモンスター肉を売って生活してるだけ。


 結局こういう力って金持ってる奴から奪うのが直接的な強さだと思う。それを遣りたいのか?そこに尽きるな。単純に金が欲しいわけじゃない。力に見合った報酬が欲しい。強盗をするにしてもややこしい連中を力で纏め上げて徒党を組んだほうが良い。んまー魔族が良い人すぎるんだよな。もっといやな連中だったらやったのに、食えないわけじゃないから抵抗がある。


 人間の事もいろいろ聞いたけど、昔の話しだけど金は使えるらしい。しばらく金溜めたら人間の国に行って見るか。


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