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転生転移研究者3

 アラン・アダムスは魔王が行ってる革新的計画について意見を求められたため、緩衝地帯に近い開拓地に来ていた。私の話相手は元勇者の田中太郎。彼も私が何者か?知る一人だった。


「アランは今度の魔王の計画についてどう思う?」

「どうとは?」

「あの魔王どうも胡散臭いんだ」

「ああそれなら私も同じ。胡散臭い側の見方で良いなら意見があるけど?」

「ああ是非それを聞きたい」

「魔族は人間に較べると出生率が低いんだ。その原因が何か知ってるかい?」


 アランは転生転移研究者である。だが根本的に知識欲が旺盛で、そもそもおまけだろ?と思う日本研究も彼の好みが原因になってる。アランは、開拓地や討伐隊の転生転移者を訪ねることが多い。その関係で開拓村にやってきた変な能力を持った人間と出会い、彼が転移者であることを見破った。と言うかそんな力普通もって無いから。


 当たり前に生じる論理的帰結だった。彼の名は吉田健一。彼よりその同行者が気になった。レイヤと言う同行者と話してみるとやっぱりそうだと思っていた事が正解だった。過去に私とあっていた。ただ通常転生者以外ありえない。いくら転移転生者が長生きでも姿形が全く老いないはありえない。そもそも出会ったのは300年前。


 レイヤも気がついたみたいで理由をすべて話してくれた。その時知った魔族の情報が今回の推論の根拠になっている。


「いや知らない、それはなんだい?」

「魔族と人間って元は同じなんだよ」

「まあ俺らなら気が付く話だな」


 田中さんに驚きは無かった。その気持ちはなんとなく分かる、この世界の常識が無いから。確かに魔族は見た目違ったものもちらほらいるが、異世界人とこの世界の人の差ぐらいしか平均的には無い。この世界の常識だと転移者も違う種族になってしまう。

 ただ私はレイヤから聞いたからその発想になった。すぐに納得してくれたのでそれを言う必要はないかと思い言わなかった。レイヤの根拠は彼女は魔族の国に居た。そして魔族の魔王に近いものに代々受け継がれる秘密の情報があり、そこで知ったらしい。


 そんなのを何故閲覧できたのか?は聞かなかった。大事なのは今の魔王がそれを知っている可能性があると言うことだった。混血は出生率が高い可能性がある点だった。魔族と人間を分かつものは何か?これはこの世界の常識に染まってない一部の人は皆知っている。僕も知っている。魔力だ。


 ならその魔力を混血によって落としてやれば出生率は高まるのではないか?この世界は見事にバランスが取れてる。魔力が強くて子供が生まれにくい魔族。魔力が弱くて子供が良く生まれる人間。種族全体としては両者のパワーバランスは常に拮抗する。それが皮肉にも戦争を継続できる原因の一つに成ってるけど。


「言葉でも言っても納得し無いから強引に分からせる政策なんじゃないかな?と思います。そもそも混血の事実は一部の戦争奴隷の存在で互いに知ってるはずなんですけどね。皮肉な事に頻繁に行われる奴隷交換であまり一般的じゃないのが情報が広まらない原因かもしれません」

「でもさ、混血が居るから元は同じって結論にはならないでしょ?」

「確かに、ただ多くの人はそんな事ありえないって前提で生きてますからね。それを壊すだけでも大きいですよ。ただ敢えて言うなら、あくまで田中さんの裏があるんじゃないか?に答えたらですよ。融和政策としてはアリガチな遣り方なので疑う必要も無い所なんですよね」

「ちなみに混血は魔族なのか?人間なのか?」

「確かに裏があるなら魔族の低い人口を増やして勢力拡大が目的ですよね。どうでしょうね問題は抱え込むけど、人間の常識を破るって事ではメリットは確実にあるでしょう」

「だがなら何故魔族側も秘匿してきたんだ?前線に居たからその程度は魔族の常識を知ってるぞ」

「やはり魔王が本気で戦争をやめようとしてるのはあるかもしれません。ただね、戦争と言う手段じゃなくて魔族の劣勢を覆すためってのも考えられなくも無いんですよ」

「そこだよ。そこなんだよな今度の魔王が不気味なのは、分かりやすい手段じゃないだけで根っこは人間と争ってるんじゃないか?って隠してるって事なんだよ」

「まあこればかりは信頼とか信用の話で合理で片付く話じゃ無いですね」


 アランはそう切り上げた。それと言うのもレイヤからある程度聞いていて、信頼や信用で見て良い面もあると見ていたからだった。ただレイヤは開拓地を回ってるので、おそらく多くの人が知ってるけど、レイヤの過去は多分皆は知らないと思うためふせておいた。知らせるなら本人が言うべきだという思いが合ったので。


「後はモンスター肉を魔族に売る計画でしたね。これは裏と言うかそのまんまかとミドルハンターって微妙な立場ですよね?」

「と言うと?」

「元々ミドルハンターの祖である羽佐間俊は独立独歩の開拓者を目指していたはずです。国を利用した結果になりました。でも今は逆ですよね。国がミドルハンターを動かすような形になっています。魔王はこれを元の形に戻そうとしてるじゃ無いですか?そもそもこれ目的隠して無いでしょ?」

「まるで見てきたように」


 そう田中さんはニヤと笑顔を向けた


「まあ分かってて言ってるでしょ?」

「んまー流してくれ」

「国からお金貰うのやめて、こっちで金上げるからこっちにつけと見えますね」

「そういう意味だよな。隠してないのは、王様にばれないようにやってくれと暗に言われてるから、隠す相手が違うんだよな。ちなみにアランモンスターってどう生まれるのか知ってる?」

「おやプロだと思っていたのですけどね」

「子供生むのは知ってるんだよ。実際子供も討伐してるからな。逆に言えばだ豊かな経験が異説みたいな存在についてすんなり納得できないってのがあるんだ」

「自然発生説ですか。多分両方だと思います」


 レイヤの受け売りを答えた。


「なるほど両方か、それなら開拓地以外でもモンスターがちらほらいるのが説明できるな」

「その話をするって何か魔族側に言われましたね?」

「ああ、いずれはミドルハンターは消えるって言われて養ってやるって言われたんだよ。今のモンスター密集を暗に絶滅させるなって言われたのと同じなんだ。これ国を裏切れって事なんだよな。だって俺達全滅させるのがいつもの仕事だから。

魔族の国で自然発生したモンスターを定期的にここに送り込んでくれるって密約なんだよ。今までは適当に境界線にすててたモンスターを計画的にミドルハンターの都合に合わせて送り込んでくれる。

俺達の大半って開拓よりモンスター討伐を金に出来るのが好きで遣ってるんだよ。ハンターじゃまともな金にならないからな。今まで自給自足のためでついででしかなかったモンスターを狩って肉を得るのを本業にしろって言ってきたんだよ」

「面白い魔王だな。家畜と野生の両立ですね」

「家畜として育てるのに大半のモンスターそもそも向いてないし、家畜として育てるのも俺ら仕事変わってしまうし。農業が嫌ってわけじゃないけど、大半が開拓地に残らないので気質みたいのがはっきりしてると思う」

「それだと何故軍人は嫌なんですか?」


 ややこしい質問だったのか田中さんはしばらく考えていた。


「俺は近いものやってたよ。たださそれでも早くやめたかったのは、知れば知るほど根っこの国が馬鹿馬鹿しいからな。ミドルハンターは結果出すから口出さずに金出せが上手く成立してるからね」

「まるでマタギですね」

「多分そうなんだと思う。狩りじゃ生計を立てるのが苦しい。かといって家畜じゃ農業になってしまう。かなり好条件なんだよな。まあ将来的な構想だからどっちつかずの蝙蝠で当分はいくよ。アラン今日はありがとう」

「どういたしまして、私も魔王の最新情報を直接田中さんから聞けて楽しかったですよ」


 アランはまた様々な人に話を聞くため開拓村から旅立った。多角的に見る事で最終的にそれらをまとめる目的があったため。ただ今不足してるのは魔族側の直接の情報。いずれ魔王の計画する中立地帯にもぐりこんでみる事も、必要なのかもしれないと今後の計画を練っていた。


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