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魔王討伐隊2

「死ねーーー」


 マイン・イースターは魔王を切りつけた。手ごたえがあった。魔王から薄っすら血が流れる。かなり深く食い込んだ手ごたえがあるのになんて頑丈な奴なんだ。僕ら勇者も人の事は言えないけど。現代の感覚でいうなら不思議な力によって魔王も勇者も人間の常識を超えた頑丈さを持つ。それは有機物の性質じゃない。


「勇者か?」


 魔王は問いかけてきた。動きも一般的な兵士とはまるで違うので多分魔王はすぐ気がついたんだと思う。


「そうだ、死ぬ前に聞きたい事がある」

「死ぬ気は無いが答えてやろう」


 妙に余裕のある魔王だ。別に相手してくれなくても良いのにと思ってしまう。


「何故魔王はわざわざすぐに人間の軍隊の前線とぶつかる位置に出てくるんだ?僕達は魔王がそこまで出てこなければ魔族の大群に阻まれたどり着けないのに」

「簡単な事だ最大の戦力を眠らせて後方に待機させる司令官がどこにいる?人間の王はお前ほど強いのか?」

「なるほど、のこのこ勇者に殺されに来るばか者だと歴史上の魔王について思っていたけど。どうやらそれは僕が人間の王の戦い方に縛られているからなんだな」

「どーせ野蛮人だから獣みたいな戦い方しか出来ないと誤った魔族の常識からそう思ってしまったんだろう。視野狭窄の勇者よ」

(くー、図星だ。凶暴な獣みたいな王かと見てたが、思ったより理知的な王様なんだな)


 僕の先制攻撃で始まった魔王との戦いはすぐにグレンさんが結界を張って長期戦の準備をした。ある程度長期戦は予測していたけど、まさかこんな形になるとは思って無かった事態になった。適材適所で武器を変えられる能力のおかげでってすごく良く当たるけど、僕の攻撃は弱い。

人間相手ならものすごく有効な僕の攻撃が頑強さがとりえの一つの魔王にはどうもイマイチ効果的じゃない。想定外だった、しかし問題にならなかった。


 なんのためにトムを連れきたのかとその答えを見る機会が迫っていた。鉄壁の守りにはならなくて、魔王の防御が普通の人間と戦ってるように見える。多彩な武器の間合いを1つのものとして扱える僕の能力は特質をきちんと生かせていたが、一撃の力はイマイチ効いてないのが良く分かった。


 余裕ぶっていた魔王の顔から余裕がなくなって来た。魔王の返答にどこか余裕があったのは、最初の一太刀を受けて大したことが無いのが分かったのだろう。この戦いは勝てるそんな道筋が見えた。僕の攻撃じゃそれが見えなかった。

 そういえばトムの能力を疑っていた。転生者としての前世も国が調査しただけで僕は確認しなかった。しかも魔王と戦うまでは証明しようがない能力。トムは本物の転生者だった。


 ただトムの攻撃以外の皆の攻撃も当たるけど決め手に欠けるため長期戦に逆戻りか?と思っていた。魔王が余裕がなくなった点で必ずしもそうじゃないのかも?と言う気持ちも生じていた。


 魔王が孤立化するもう一つの理由が分かった。僕らは一人の魔族を5人で叩きのめしてる。誰かが魔王の助っ人に来ても良いのじゃないか?と思うのだが、それは無理かもと見えてきた。魔王と勇者互いのぶつかり合いが激しく早いので災害に巻き込まれないようにぽっかり僕らと魔王の周りには穴が開いていた。


「魔王どうした?何か焦ってるじゃないか、下るなら。捕虜として扱っても良いが?」

「勇者は歴代の勇者でそんなのがちょくちょくいるようだが、魔王が過去の歴史で捕虜になった事があるのか?」

「そうだな確かに無い」


 その通りだった魔王が負けるときはは必ず勇者達に殺されている。それにこの魔王を捕らえるより殺すほうが簡単だとすぐに分かった。3M近い巨体。魔族は特に人間に較べて大きくない。あくまで大半の魔族の体格は人間でも存在する個人差でしかない。魔王はロイヤルゼリーでもあてがわれるのかもしれない。一人だけ別の生き物みたいだった。こんな奴を簡単に捕縛できると到底思えない。


 なおかつ体以上の馬鹿力に加えてこの巨体で常人よりスピーディーな動きをする。文字通り化け物だった。これにまだ魔法が得意というんだからやる気がなくなってしまう。考えてみると僕はこういった桁違いの敵と戦った事が無かった。捕縛できないと思うのは自分の経験不足によるものも大きかった。


「勇者自分が一体何をしてお前に殺されなくてはいけないんだ?」


 随分余裕がなくなって来た。殺されるかもと思い始めている。僕ももう一息だと思う。トムは本当に強い。魔王にはと言う条件付だが、僕らは前もって準備のためチーム戦の前哨戦として魔物の討伐をしていた。トムはその時並のハンターレベルだった。しかし今どうだ。間違いなくこのチームの攻撃の中心になっている。


「魔王は人間の敵だからだ」

「だから何をして敵と見なされたのか?」

「それを考えるのは王の仕事だ。僕は一兵士でしか無い」


 魔王はこの返答に失望と怒りを覚えたようだ。猛攻の後魔王は死んだ。魔王が死に魔族が動揺し、魔王が保っていた前線の壁が壊れて一気に僕らが優勢になってこの戦いは終った。


 魔王討伐隊は無事使命を果たした。

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