魔王討伐隊
僕は勇者になった。勇者とは魔族の魔王を討伐するチームのリーダーになる。一応最強戦力なんだと思う。でも今回は歴代勇者パーティーで初のメンバー構成になると思う。魔王に対する切り札が別にいる。しかも勇者パーティーの武器を引き受けてくれる武器専門の転移者までいる。
何が異例か?と言うと、僕は武器の能力を持つため彼と相性が悪い。魔王を倒す最強の武器は魔王殺しのトムが持つことになる。どっちかと言えばトムが勇者なんじゃないか?と僕は考えてしまう。そこが今回の勇者パーティーが歴代の中で異色のメンバー構成だと僕が思ってる部分。
ただ長い歴史の中で転生者が基本勇者になる事が多く、そのため実力が高くても転移者より転生者が優先される。そういう意味では勇者がNO1じゃない勇者パーティーなんてざらにある。だが転生者同士でこんな奇妙なパーティー初めてだろう。そもそも同年代の転生者が2人が無いわけじゃないが珍しい。
転生者に神の意図が関わってるなら間違いなくトムの特殊性の補助こそが僕の役割だと思う。だから僕じゃなくてトムなんじゃないか?と思ってしまう部分。ただ自負やプライドじゃなくて彼に勇者の重責を任せるのは確かに問題があるとは思う。彼というより彼の特殊な能力ゆえに。
残りのメンバーはベテラングレンさん。攻撃の転生者と防御の転生者と言う事で僕との相性は良いと思う。特にトムの防御力がかなり貧弱なので、グレンさんの存在はかなりこのパーティーには相性が良い。後は最近転生者だと判明したリチャードさん。やや魔法系が強い魔法剣士。勇者は基本魔法が得意。でもリチャードさんは剣士より魔法使いの面が強い。
後は非転生転移者のSハンター経験者になる。賢者といわれる回復攻撃魔法が得意な女性ハンターのエミリーさん。エミリーさんも十分桁違いものもがある。彼女は魔法に特化した分飛びぬけた身体能力を持つわけじゃない。転移転生者ならそれを両立させてしまう。今回の人選もグレンさんあっての選出になってる。
グレンさん無しだともっと頑丈さがとりえのSハンターが割り振られていたと思う。それぐらい転生転移者との身体能力の差は大きい。転移転生者としては最低ランクのトムでさえ身体能力だけはSハンターにひけをとらないのだから。
最後に守りの要としてのベテラングレンさんはいるけど、戦士騎士剣士タイプのベテランの不足。リチャードさんは魔法系としての色が強い。と言うかトム出さえSハンター並の身体能力があり、当然リチャードさんはそれ以上。しかし長年のスタイルによりパーティーの中の戦術的役割がファイターとして向いてない人になってしまった。
それゆえベテランのガリドンさんがSハンターから選ばれた。残りのSハンターは転生転移者に合わせた人選と言う意味合いが強い。非店生転移者最強そんな人が選ばれるわけじゃなかった。トム以外は皆Sハンターとは比べ物にならない桁違いのメンバーだから。僕らは人外ドラゴンレベルだと思う。
このメンバーに基本一人で立ち向かう魔王ってどんだけなの?となる。魔王ははっきり言って個人差がものすごく大きい。だから魔王の強さはこんなぐらいとか平均値で語れる事は無い。僕らはパーティーと言う集団によって上手く平均化されるのにたいして魔王は1個人の強さが出すぎるためだった。
今回の魔王魔族を統率して日が浅く名前すら知らない。なおかつ僕も勇者就任して日が浅いのでお互い様という所かと。
「勇者のマイン・イースターです」
グレンさんを中心に僕らは後から入ったのでもうある程度知り合いになっていたけど、リチャードさんとトムは後から入ってきたので全員揃っての討伐はこれが初めてなので改めて互いに自己紹介をした。自己紹介も終わり僕らは魔王討伐に向けて出発した。
魔王の討伐と言うのは魔王VS勇者パーティーにどう持ち込むか?で、その過程に決まりきった道筋など無い。魔族VS人間の集団戦の戦略の1つに過ぎない。軍の基本方針として一騎当千の魔王に同じく人類の一騎当千の勇者パーティーをぶつけるというシンプルな作戦で、あくまで大規模な軍隊の1部隊でしかなかった。
「グレンさん素朴な疑問なのですが、魔王も勇者も互いに魔族人間の多数の軍勢に殺されて終わりなんてのは無いのですか?」
「どっちもどっちだけど、魔王は勇者いなければそうなるし、勇者も逆もしかりとなる。魔王が常に前線に出て戦うからそれに俺たちがあわせてる事になると思う。これは種族的な考え方の違いなので人間的な価値観でいろいろ考えても無意味だと思うよ。魔族は基本高い身体能力をベースとして強い奴が引っ張って力押しだからね」
ただ魔王もさすがに軍隊の一番前にいるわけじゃない。それゆえ前の薄皮一枚剥ぎ取らないといけない。それが終ったらむき出し魔王に向かって僕らはぶつかっていく。こういった大軍同士じゃなくても、城への潜入によって魔王1人と戦う場合もある。
その場合篭城じゃないのか?そうならないのが魔族や魔王の人間には不可解な点。何故か魔王は人間との国境近くの拠点となる城に陣取る事が多い。
「マイン、もうすぐ魔王とぶつかる。何度も言ってきたけど万が一負けた時の話をもう一度しておく」
グレンさんは戦う前に何か士気を削いでしまうような話をしだした。
「負けた時は3つのケースがある。1つは全滅。2つ目はパーティーメンバーの誰か一人でも死んで撤退。戦闘開始の早い時期にこういう事態が起こればすぐ撤退すべきだ。そして3つ目誰も死んでないけど全員で撤退。大きな怪我などは分かりやすい。ただここまま行けば誰か死ぬのが確実だと判断できるならそうなるまえに撤退すべきだ。
負けたときの話を以前もしたのにまたすると言うのは気持ちがなえるだろう。ただこの点だけは俺はマインを信用してない。これは経験がものを言うからだ。だから経験者の俺の判断を今話して意識して欲しいから話してる」
「分かりました」
人間軍の頑張りで僕らは魔王と戦場でで対峙する事になった。




