ミドルハンターと言う仕事
俺は村に残る事が多いジャックさんについて、田中さんに尋ねていた。
「田中さんジャックさんって農家の人なのですか?」
「直接聞けば良いじゃないか」
「何故そう思ったか?で失礼にあたるかなと思ったので」
「どういう事?」
「まだ俺がここに来て日が浅いのもありますけど、主に村に居てジャックさんが戦ってるの見た事無いんですよ。ジャックさんが目立ってるのはただの野原を農地に開拓していくとか主に農業の分野ですよね。
転移者の田中さんは異色ですけど、ミドルハンターは生まれが農民の割合が他のハンターよりは低いんですよ。中には裕福な農家の次男3男も居ますけどね。農業の事を教えてる人必要じゃ無いですか?」
「ああなるほど確かに俺に聞くのが間違ってるような…。それでも分かるよ。俺もここじゃエリックの先輩だけど、ここがミドルハンターとしては初任務なんだよ。それでも長くいるからジャックさんとも話してるから事情は分かってる。エリックのそれ勘違いだ」
「勘違い?」
俺は良く分からなかった。間違いじゃなくて勘違い?
「分かりにくかったか、農家の家じゃないと無理があるんじゃないか?ならジャックさん商人の出だぞ。まあこれじゃ間違いって事になるよな。勘違いだってのは、農業を知らないってのが勘違い。村の誰かは農家出身だと思う。
それでもな野原を農地にするなんて農家じゃ誰でもやってる事じゃないんだ。これはこれでまた専門分野とも言える。ジャックさんは開拓地を転々とする事でそういった経験を増やして今があるんだ。俺もエリックと同じだよ。農業なんてやった事無かったから。
どうすりゃいいの?と思ったらジャックさんがそれを話してくれて徐々に経験豊かな開拓村の先輩に聞いて覚えて行けば良いからって教えてくれた。農業と言うより野原や森を農地にしていくノウハウを教えてもらったって感じかな」
「なるほど、じゃジャックさんガチでハンターなんですか?」
「本来ならあの人がリーダーだと思うよ。俺が後からハンターの中じゃ有名人みたいにしゃしゃり出てやる事になってしまっただけ。俺も最初はジャックさんのままでいいじゃないか?となったけど、村のリーダーよりハンターのリーダーの方が重要だとして農地の開拓は俺がまとめてるからって分担してる。経験豊かな現役のハンターだよ」
多少厄介なオーク討伐が早く終ったので俺たちは今日の残りの時間を農地開拓をする事になった。
「大雑把に農地は出来上がってきたと思う。これじゃ足りないけど、その前に村で使う水をいちいち川から汲んできてるけど、井戸掘ったり、川の水を畑にまくため引いてこようと思ってる。これが無いと水が無くて村が機能し無いから」
そうジャックさんが皆に話して、まずは井戸掘りをする事になった。ただどこに水が出るのか?なんて俺たちにはわからない。
「ジャックさん井戸の水なんてどこ掘れば良いんですか?」
「ああそういう土地もあるけど、ここは多分どこでも出ると思うぞ。だから皆にとって使い勝手の良い場所を重視したほうが良い」
そう話して井戸の位置を村の中央にした。ただこれは数日掛かる作業なので、川の水を引く事と人を分けて行うことになった。
「井戸は俺たちの生活用水。でも井戸水じゃ足りないから川から引く水は畑に撒くようにすれば良い」
そうして用水路を作って川から水を引くことになる。これも数日か掛かる作業だ。
「何かこれ本格的ですね。俺らハンターでもなんとかなりますか?」
「やらないと駄目ってなるな。もっと慣れた人ならお前らより使えると思うよ。でも多分死ぬよ。そりゃ村はましだけど、ここもそれなりにモンスターに襲われる。普通のハンターと俺らの違いは村人全員モンスターハンターだって事だから。一人じゃ苦しい敵も村のモンスター討伐になれた皆が集団で戦えばそんな危ないものじゃないから」
数日が経ち井戸が出来て用水路に水も流すことが出来た。
ジャックさんは
「どうよ、お前らも次の村に言ったら立派な農地開拓者だろ。俺もこうやって何度も繰り返す中で覚えてきたんだ」
田中さんが笑っていた。後で聞いたら田中さんが俺の話をジャックさんにしたようだ。
段々農地としてしっかりしたものになっていく中で、いよいよ整地が終った場所に作物を植えることになった。その時
「ゴブリンだ」
と誰かが叫んだ。
農機具をスグに武器に変えてまずは田中さんが攻撃をして相手の出鼻をくじく。それでもそれなりの数で襲ってきたゴブリンは田中さんから逃れて村に近づいてくる。襲ってきたゴブリンを俺たちが防具を身に着けている間に何もつけずにジャックさんが一刀両断にした。この二人で大半のゴブリンを倒してしまった。
ジャックさんが討伐終了の合図のようにこう叫んだ
「エリックどーよ!」
俺はすまなさそうな顔で
「ジャックさんすみません…」
と弱弱しい声でそう返した。ジャックさんは間違いなく歴戦のハンターだと俺の目の前で証明された。田中さんから後で聞いたことで、俺たちが討伐に向かってる間に村に残ったメンバーと村の開拓の計画を立てていたようだ。それがこの数日実行されたに過ぎない。ジャックさん開拓村に関わるあらゆる事を一人でやってるようだ。




