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転生者の一族

 メルビン・ステイツはルーテシア・ステイツと赤川瑠夏と言う二人の勇者夫婦の子孫になる。転生者の子供は転生者として優れた特別性は遺伝しない。それでも僕はミドルハンターになる事が出来た。これは優れたハンターとしての教育の賜物だと思う。

 ハンターからミドルハンターになる事は稀だと思う。それと言うのも転々とするミドルハンターと自警団の延長であるハンターじゃ接点が無い。優れた結果を残してもハンターがミドルハンターになる事はほぼ無い。ハンターになる目的が違うから。


 だからミドルハンターは養成所でその能力を見せ付けないといけない。それには養成所に入る前の教育が馬鹿に成らない。それを素質で凌駕していくような天才はどのみちスペシャルハンターや転生転移者になる。

 ミドルハンターはそういった天才じゃない人達が早くから力を見せた人のゴールといえる。将来ハンターになるような人達とスタート地点がまるで違う。正直言えばハンター資格が無くても僕達の一族の人間はモンスター討伐で優れた結果を出すことが可能だろう。


 一族にとって養成所はミドルハンターとして国からの要請される近道でしかない。国からお金貰って新しい土地を開拓するのと、自前でやるのとどっちが良いか?なら僕なら前者だと答える。だから僕達は養成所に行って能力を認めてもらう。

 転生者は世間的にも一切血の恩恵を受けない。決して貴族化しない一族になる。特別すぎるのが問題で、誰もが2代目に何の期待もし無いからだ。誰もがそれを知っている。だから僕達は実力で何代もミドルハンターとして名声を勝ち取って今の地位がある。


 スペシャルハンターを輩出した事が無いか?なら僕達は無い。だが過去の転生者の有名な一族でいることは居る。ただの人間がハンターとして到達できる限界。それがスペシャルハンター。僕達がそれを達成するには一族の歴史が浅すぎる。


 初めての赴任地であるモンスターの密集地域である新天地は、後で知ったことだが興味深い人が居た。デュラン・ホルムズ。転生者デュラム・ホルムズの子孫。雷属性のホルムズ家のミドルハンターだ。僕より前に赴任してもうこの土地を村とする直前まで進めた様だ。

 彼については正直持たざるものの嫉妬がある。彼の一族は雷属性を一族の秘伝とする事で初代の特別性を子孫も享受していた。血の恩恵をほとんど受けてない僕がこれに嫉妬してしまうのは仕方ないと自分で思える。


 ただ僕は敵意で彼と接しようとは思ってなかった。感情的にわだかまりもあるが、強いハンター仲間は僕を助けてくれる。それを素直に賞賛する。ただそういったわだかまりが一切消えるのは彼と組んで戦った後になる。

 それと言うのもミドルハンターだろ?って侮りがあった。しかしハンター、ミドルハンター、スペシャルハンター、転生転移者。こういった大きなグループわけがあって。大体強さがこの順番に比例する。


 しかしミドルハンターになる気がないハンターが大量に居る。彼らの全てがミドルハンターに劣っているか?なら否となる。彼らが何故認められないか?と言うと彼らはミドルにならないスペシャルまでいかないと上に行かない。それゆえハンターでもミドルハンターと変わらない実力者がわんさかいる。と知るのは後の事になるが。


 当然ミドルハンターもスペシャルハンターなんてなる気がねーよって人が数多く居る。ミドルハンターと言うのは転生者も含めてモンスター討伐置いて自らの利益のためにモンスターを討伐する人達だ。

 そういう僕もあくまで一族の繁栄の為この仕事についてるだけで、誰かのためじゃなくて自分のために戦っている。モンスターを倒して金になるってミドルハンターしかない。ハンター資格者の大多数は自警団の延長でしか無い。


 辛うじて金になるモンスターの死体だが金になると言うより食えるって程度でしかない。問題は通常のハンターの仕事ではモンスターに遭遇しない方が望ましい。逆に言えばモンスターの死体を食って生活する事は不可能だといえる。

 ハンターの任務地ではモンスターがほとんど居ない。だから彼らは自警団のレベルアップと兼業の農業こそが生活の手段になる。ハンターなんて名乗ってるが本当の意味でハンターは僕らミドルハンターになる。


 ミドルハンターは食料としてモンスターの肉を食べる。ただもちろん食用に向いてるものに限るが。僕達はモンスターを見つけて狩る事が仕事で見回って万が一のモンスター被害に備えて村の安全を守る仕事じゃない。能動的にモンスターを狩る仕事。

 これに対して国からも補助金が出る。そして本人が望めば開拓村に残って開拓した農地を与えられて、そのまま自分の土地を持って農業を出来る。僕らの一族はモンスターを狩って生活するのが仕事になる。


 僕から言わせると一般的なハンターはモンスターを狩って生計を立てるプロフェッショナルな仕事じゃないと思う。スペシャルハンターを含めてハンターと言うのは治安維持が仕事で、魔王討伐隊は軍人だと思ってる。本当の意味でモンスターを獲物として見てるのはミドルハンターしか居ないと思ってる。


 逆説的に言うならモンスターなんて狩って生活できるわけじゃないと僕は笑い飛ばす。それが出来るのは僕らだけなんだから。僕はハンターが嫌いか?と言えば嫌いだ。モンスターを狩ることを生業としてきた僕らからするとまるで違う人たちなのに同列で見られてるから。本当の意味で狩人は僕達だけだ。


 初めての狩りで僕は前衛に付けられた。近接が得意なのでどうしてもそうなる。新人でも近接得意でここに来たなら見学は許されない。学生がいきなり?それは僕の一族じゃ関係が無い。どの勇者の一族もそうだと思うけど、一族としてミドルハンターを輩出するのを生業としてるなら養成所に入る前から実戦経験を詰んでいるから。


 それなりには有名なので加味されているんだと思う。でも良かった今回の討伐対象はゴブリンだった。即戦力といってもそれは一族の知れたもの同士の話しで、初めての仲間とどうやって連携を取って戦うのか?となる。軽い打ち合わせはしてるけど、基本ぶっつけ本番。

 ただ僕ら新人のメリットは、補充要員で追加されるわけじゃないって点。誰かが死んで追加されるわけじゃない。ミドルハンターの目的はいち早くこの土地を安全地帯にする事にある。だからその速度が遅い地域にどんどん新人を追加される。

 どうしてもミドルハンターは優秀さに激しいばらつきがあるため数より個々の資質次第で安全地帯になるまで大きく差が出る。それに場所によるモンスターの数質偏りも激しく一定の速度と言うのはありえない。


 自分は強いのか?と言うと強いほうなのだろう。ゴブリンなどに死に掛けることはほぼ無い。ただモンスターのレベルが上がってくると苦しくなってくる。この限界を感じさせないような強さは無い。

 攻撃されないで、こっちの攻撃は良く当たり致命傷になる。それだけの事になってしまう。派手な能力の無い僕はそれだけの事を淡々と行っていた。


 この村ではやはりデュランが際立っている。それは珍しいからじゃない彼の魔法が集団全体に影響を及ぼすから。僕が的確にゴブリン一匹を殺してもそれを繰り返すだけだ。でも彼はゴブリンの集団に雷鳴を落として大きなダメージを与えられる。

 それは魔法使いなら誰でも同じじゃないか?と言うと雷だけが持つ特殊性が大きい。当てようと思えば一匹にターゲットも絞れるが、それを広げるのが容易。そこが雷のよさになる。弾じゃない広範囲の炎がかなり近いが、あれは狙いにくい。僕も魔法をそれなりに使える。

 だからこそ分かる。雷は狙うという事において精度が高い。味方まで巻き込むのが広範囲魔法では一番困る。この点で多分雷が一番優秀なんじゃないか?と僕は見ている。ただそれでも事前に合図が無い場合は怖い。


「メルビン、そっちに打つぞ」


 デュランはそう僕に話してくれた。人間の言葉を解するモンスターも居るためこういった合図は絶対あるわけじゃないが、ゴブリンはそこまで知能が高くない。

 的確に敵の攻撃の圧力が高い場所に雷を落としてくれる。これによって相手の圧力が軽減される。これで死んでくれれば良いのだが、広範囲はそこが弱い。一撃必殺ぐらいの強い魔法も多分持ってるんだろう。ただ一匹だけなんだと思う。


 あっという間に10匹ほどのゴブリンが殲滅された。ハンターとミドルハンターの大きな違いは、こんな戦いを毎日繰り返している。モンスターを獲物として考えた場合、ハンターは数が少ないので大切にしていて、僕らは乱獲してるといえなくも無い。おかげで今日はゴブリン肉を堪能できるだろう。


 これこそ本物のハンターだと僕はミドルハンターの仕事に対して自負があった。

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