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転生転移研究者

 アラン・アダムスは転生者であって転生者ではない。世間で認められて無いから。私は転生者としての任務を放棄したい。それと言うのも私には一生遊んで暮らせる財産がある。こんな日のために繰り返される転生人生で隠し財産を次の転生のために蓄えてきた。

 当然家族が居た時などは家族のために使っている。でも独身だった時代もある。そんな時はいつも次の転生のために隠し財産を作ってきた。転生者は基本裕福。それでも莫大な富を得るわけじゃない。早くに能力が減衰するためハンターなどをやりつつ老後の資金が必要になる。それでも全部使いきって死ぬわけじゃない。

 いつの間にかそういった前世で使いきれなかったお金を次に持ち越す癖みたいのがついてしまった。しかも1度の人生で前の財産の中身とそっくり入れ替えれば時代の変化で価値が変わるものにも対応できる。


 そして私は今回の人生はもうハンターとか転生者の仕事をしないで趣味の転生者研究者になると決めていた。長い転生人生で私は同一人格としてのアイデンティティを失ってしまった。しかし、それでも逆に転生者そのものや日本研究が趣味になってしまった。今度の人生はその趣味のためそれ以外何もせずに使うんだ。


 魔王に困ってる人達が居るのに酷いんじゃないか?なら私ぐらい何度もやってると、余程その人生に強く転生者になりたい欲求でもないと冷めてみてしまう部分がある。もちろん転生者として魔王と戦う私の平和や皆のためって気持に偽りは無い。ただそれはその人個人によっていて、何度も繰り返す坂田と言う人物は正直たまにはそんな役割やらなくて良いだろ?どうでもよくなっている。


 もちろん私は坂田じゃない。でも趣味に生きたいのと坂田として生きる人格がどうも被ってしまう部分がある。まあ私が坂田であろうとどっちでも良い。趣味に生きたいと言うのは本物なのだから。本当にやばかったら私が名乗り出れば良いと思ってる。ある日突然記憶が蘇ったとか嘘つけば良いや。


 坂田が冷めていたのは、魔王と勇者の戦いは繰り返されるだけで終わりがない。なら別に勇者って一度や2度さぼっても魔族に人間が滅ぼされるなんて事にならない。逆に魔族の側から見れば魔王が勇者に殺されても魔族全体はそのまま生き残ってるのだから。

 何よりそのうち別の転生転移者が現れる。そもそもその人達が居るから私は生きてるその人達も調査をしたいのだから。


 ある時奇妙な話を聞いた。今時珍しい偽転生者の話を聞いたのだ。これも私は良く分かってる。かなり昔から転生者についてリアルな実体験をしてる私は偽転生者にも当然見てきた。そしてそれは最近は下火になってるんだ。最近は前世が重視されないからだ。

 だから今時珍しいなと興味が湧いた。しかも面白いのはこの偽転生者ハンターをやってるらしい。多くの偽転生者は実際戦ってみて化けの皮が剥がれてしまう。戦う前に白状するものも居た。死んでしまってからじゃ遅いから。だからモンスター討伐の現場で偽転生者ずっと活躍するというのは奇妙な事なんだ。


 私はトムに会いにいって見る事にした。こんな変わった事例もあるのかと調べてみたくなった。


「やあトム、私はアラン。転生者の研究をしている。君は転生者と認められてないけど、前世の記憶があると話してるらしいね」

「正確には話してただよ。今そんな事言ってたら偽転生者として嘘つき呼ばわりされてしまう。子供の頃の世迷言だよ」

「維新からの元号を答えられる?」

「明治・大正・昭和・平成。あんた何者だ?」

「ああだから研究者って言ったじゃないか。ただ私は転生者と認められたものじゃない。要するにこういったものは過去の転生者の発言からある程度は答えることが出来る。でも私のカンだけど君は転生者だよ。私は研究者だからここまで言えるけど、この村でそんな知識を得る事が可能なのかな?」

「養成所ならそこそこの日本の知識は手に入るけど、でも元号は無理だろうね」

「私は過去の偽転生者の話とかも読んでるけど君は根本的に違う。むしろ君が偽者だと証明するほうが無理がある。君の日本に対する知識はとても自然だ。誰かから聞いたものじゃなくて当たり前すぎるんだよ。でも疑問がある。じゃ何故君は転生者特有の力を持たないんだ?聞いてみると君は多少なら目立つほどの身体能力の高さがあるんだよね。でもそれじゃ転生者とは言えない」

「それは俺が魔王だけに効果的な特別な力を持つからだよ。俺が魔王と戦えば豆腐を切るように魔王を切り刻んでやるよ」

「あはは、そこで豆腐かー。君本物だよ。でも私は残念ながら王様に対して証明にする事は出来ない。そこで私の知り合いの元転生者がいるから彼らから王様に頼んでもらうように言えば良いよ」


 すべての偽転生者に転生転移者が聞き込み調査をすれば一発で分かる。彼はラッキーだと思う。今はそれが出来る時代になったから。過去の偽転生者騒動を知ってる私はそれは現実的じゃないと言うけど。今と違ってそこら中に偽転生者が居た。そんな連中すべて相手にするのは同じ転生者として素直に気の毒だと思うから。


 長い転生者の歴史の中でこれはユニークな事例となると思う。後は彼が魔王への必殺能力で魔王を倒してくれれば後に残るほどの事例になるだろう。そして次の時代の魔王専用のスキルを持つ偽扱いの転生者はこれがきっかけで、聞き込み調査がされるきっかけになるかもしれない。


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