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ハンターの教師

 ラウド・クラウンはもうハンターを引退して20年になる。まだ引退する年じゃなかったがお金が十分にあり早く引退できた。特にハンター稼業に拘りが無い。大半のハンターは貧乏な村のわずかなお金と村人から直接的な物資の提供と動物の狩、たまに狩り易いモンスターの肉で生活するだけ。


 じゃ何故私はそうじゃなかったのか?ハンターの中でごくごく一部だけの例外的な特別なハンターが居る。私はその一人だろう。ハンター養成所は早く引退した優秀なハンターの余生を過ごす場でもあった。どちからと言えば供給側の論理で設立された。早い話が引退したハンターがやる事が無いから小銭を稼ぎつつやる事が無いのでそれを作る場所でもあった。


 需要が無いわけじゃない。ただ若い教師が少なく特に今現役でやってるハンターは教師を掛け持ちしてる事は無い。兼業で出来ないほど忙しいわけじゃない。そうじゃなくて他にやる事が無いからやってるため、現役のハンターが教師になる事は無かった。


 もし私の立場を目指すならハンターは夢のある仕事だと言える。しかしこの立場になれるのはほんのごく一部。ハンターは基本儲からない。地域のための自警団の延長でしか無い。後進が育ってきたら村の仕事と兼業が大半だ。


 じゃ何故私は例外なのか?教師で稼いだのか?と言うとそれは違う。稼いだから引退して教師をやっている。国が依頼する特別レベルの高いモンスターハントやって稼いだ。これまず選ばれないし、選ぶ事も無い。ある程度ハンター家業を続けていたら私が倒したレベルのモンスターを倒すのが大半のハンターには無理と分かる。


 そのレベルのモンスターを同じようなハイレベルに達している複数人のハンターチームで狩る事になる。他の教師仲間は高レベルモンスターハンター仲間でもある。場合によっては任意で引退した今でもお声が掛かる。その場合教師の仕事を置いておいても要請を優先する。


 引退したので任意だから本音は断わりたい。だが国のお金が養成所に入ってて断わる教師はあまり居ない。はっきり引退してるのだが、やる事が無いので始めた教師だが、今では逆にハンター稼業をすっぱりやめられない理由になってしまっている。生徒に示しがつかないというかなんというか…。


 私は常に生徒達にまず逃げる事を進めている。守るべき村人を放置しても逃げろと教えてある。それを徹底するため私達が居る。自分が勝てないモンスターは私達の到着を待てとなる。だからこそ私達は高いお金を貰っている。大半のハンターの仕事はモンスターを狩るよりも。自警団のリーダーでコーチとなる。

 村にハンターが居なくなってしまうと自警団は弱体化する。だから逃げろと教えている。もちろん私達の数にも限りがあり同様に国が扱うハイレベルモンスターは滅多に現れるものじゃないのだが。


 今日も授業で私はハンター見習い達を教えている。


「私がトップクラスのハンターと言っても多分見た目では誰も信じないと思います。どこにでも居るような普通の人だと私自身も思います。それは高いレベルになるほど魔力こそが決め手になるからです。私の様なさっぱり強そうじゃない冴えないおじさんが教えているのは逆にその正しさを証明するのに良いのではないか?とは思っています。

ただあまりにみすぼらしいので信用されないんじゃないかな?それは危惧してますけどね」

「先生、他の教師の人でランド先生の様な人じゃない人も居ますよ?」

「ああ私達のようなハイレベルなハンターでもたまに筋肉信仰の人は居ますよね…。あの私が馬鹿にしてたとかその人に言わないでくださいね。それを前提にこっそり話すとああいうのは基本筋肉馬鹿ですね…。

まるで意味が無いわけじゃないです。筋肉だけじゃなくて身体能力を伸ばすための肉体の訓練は過度にやりすぎてはいけません。ただ本当に筋肉先生には言わないでくださいよ…。私は逆に強くなりたければあんまり身体に特化した訓練ばかりやるなといいます。体を動かすなってわけじゃないです。

だから魔力なんですよ」


 一人の生徒を立たせて実践して見せた。全く私の動きについて行けない。


「どうですか?魔力だから魔法って思いませんでしたか?違いますよ。魔力と絡み合った身体の動き以外は人間が本来持つ力、動作しか出来ません。肉体による戦闘と言うのはそういった肉体の限界以上は不可能なんです。

じゃ何故筋肉先生も居るのか?それは意味が無いわけじゃないです。どれだけ肉体を鍛えても、私のレベルのハンターは魔力が必ず関わっています。ただ魔法戦闘と魔力近接戦闘。この両方をバランスよく高めたほうが総合力は高くなります。筋肉先生はこの足し算が出来ないわけです…。

ほぼ例外なく身体能力の高さが武器のハンターは魔法レベルはさっぱり高く無いです。身体に関わる神経筋肉に大半の魔力が使われてしまっているため魔法を扱うための魔力が残ってない。どれぐらい魔法を使えるか?の数値は見えませんがかりにそれが見えるとしたら、そこが足りない状態で筋肉ハンターは戦う事になります。

だから私は言います。強くなりたければ体を使った戦闘訓練をあまりやるなとなります。じゃどうやって鍛えれば良いのか?魔力で体を動かすのを意識します。体を動かすのは一種の魔法になります。分かりやすい例として、身体を直接使った戦闘と根本的に違うのは、どれだけ鍛え上げても空は飛べませんよね?一部の優れた魔法使いは鳥の様に空を飛べます。

でも鳥と違って、魔法使いは体を使って空を飛んでるわけじゃないんですよ。同じ行動なのに違う。今実践して見せたので分かると思います。無詠唱の魔法によって動いてるんですよ。

ちなみに身体強化の様な補助魔法もありますが、それとは根本的に異なります。君達の大半が戦う事が無いし、逃げろと私は思っています。私は過去戦った事があります。とても強い魔族は実は私達人間とそれほど変わりません。

彼らは先天的に魔力による肉体コントロールが出来る優秀な魔法使いです。人間は私の様にごく一部かつ後天的にしか同じような事は出来ません。だから私達は魔族に肉体的に劣っています。

何度も言いますが、身体訓練は無駄じゃ無いです。ただ魔法と組み合わせた個人の力に較べて、筋肉先生が10の魔法以外の身体の強さがあるとすると、筋肉先生の魔法は1程度です。合計11だとします。私は魔法以外の戦闘の力は9で負けてるとします。しかし魔法を使った戦闘力が同じように9あります。足して合計18。

どうですか?私の方が強いと思うのですけどね。じゃ何故筋肉先生は拘るのか?と言うと一番の問題は総合力で見ないからです。後根本的に魔力がなんたるか?を分かって無いと思います。筋肉先生は基本戦っていたら強くなったと言う人ばかりです。何故を説明するのはもっぱら私です…」


 一人の生徒が質問した。


「先生、あくまで先生の自説ですよね?」

「君鋭いね。自分の考えに自信はあります。ただひょっとしたら筋肉先生の方が正しいのかもしれません。私の指導は私の考えでしか出来ません。ただ絶対正しいとは言いません、逆に間違っている話もしていません。

私からはありきたりな肉体を使ったトレーニングは逆に弱くなると話しておきます。ただどの先生も同じ事を言うわけじゃないので、その辺りは自分個人の納得で参考にすれば良いです。結局モンスターと直接戦うのはあなたたち自身なんですから。自分が頼ろうと決められないものは頼るべきじゃないです。

今日の授業は以上です。これからも今日の考えがベースになって話をするので任意であるため別の肉体派の先生に鞍替えしても良いですよ。わざと君達の常識を壊したく大げさに言った部分もあります。私は自分の考えが常識外れであるのは理解しています」


 ハンター養成所の初日の魔法担当のラウド先生の授業はこれで終了した。

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