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ハンターと言う職業は無い

 ジョナサン・メイビルは生まれた場所に縛られなかった。それはどういう事かと言うとある程度裕福だが家を継げないと言う意味だった。親が土地代わりにくれた財産がハンター資格というわけだ。

 ただ守るべき土地の無いハンターは仕事にならない。自ら守るべき土地を作るミドルハンターになる道しか無かった。当然誰でもなれるわけじゃない。親が僕にハンターの資格を取らせてくれたのは元々魔法の素質が高かったから。


 何故ミドルハンターになったのか?と問われれば、僕はモンスター討伐が得意だったからとハンター資格を取った当初なら答えていたと思う。好きとか嫌いとかそんな感情は全く無かった。ただ自分にはその力があると言うだけでミドルハンターになった。

 当初の僕は無気力だったか?と言うとそう単純なものじゃないが、感情的なものが薄かったのは感じていた。


 僕は自分の土地を作り守る屯田兵としては生きてなかった。転々と後から来る人達に土地を譲り、僕は次の場所に移りモンスターを討伐していた。そんな生活を繰り返していた。5、6年が経過して僕は強くなっていた。

 しかし魔王討伐隊や国お抱えのモンスター討伐部隊に入れるようなレベルにはまるで遠かった。そんな連中が倒す強敵に出合ったら僕の取る選択肢は逃げる。その点では逃げられるだけの強さは持っていた。


 新しい村のためのモンスター討伐は場所によって大きく達成年数にばらつきがある。僕は全くの偶然でもうあらかた討伐を終えて新しく村を作る事を2度経験していた。そんな僕に転機が訪れたのは3度目の討伐完了の途中だった。

 その村は国の北方にある山脈の近くで雪深い寒い土地だった。夏には作物が育つがそれ以外はずっと雪が積もってその間は農地に適さない土地柄だった。


 特に変わった事の無いミドルハンターとして当たり前の事をしていただけだった。この日から僕は人格が変わるほどの変化をした。僕は多分わがままになったんだと思う。やりがいややりたい事を見つけるのは集団生活において必ずしも良い事だとは思わない。僕はそういうわがままになれるものを見つけてしまった。


 雪の大地を黙々と見回ってる時ふと異変に気がついた。ただそれはモンスターの現れる前触れとかじゃない。何かがおかしいと感じたのだ。赤々と実った果実を抱えた植物の一群と遭遇した。食料の少ない冬にそれを狙う動物向けに果実を与える植物はまれにある。これもそれか?とは思った。それでもまれである事には変わり無い。


 もしこれらを食べる事ができるなら冬の食糧になるんじゃないか?と考えた。ただ多少食べるのが怖かった。いろいろな理屈を並び立てた。動物向けに食べさせるなら毒があるのはおかしいじゃないか?となる。種を運ばせるため植物は果実を実らせる。なら動物に食べさせる事が前提になってる。


 上手い不味いの差はあってもあまり毒のある果実は無い。しかし人間だけには害のある毒だってある。だが人間は他の動物に較べると毒に強いほうだ。賭ける意味がある。そうだ量を出来る限り減らして食べてみてはどうか?ちょっとずつなら食べても問題が無いだろう?

 ああもうはっきり言おう僕は食べてみたいというシンプルな欲求に対してぐちゃぐちゃ食べない理由を頑張って作ってるだけだった。えええーーい食ってしまえ。


 いけるじゃないか。後はこれがどれだけあるのか?とこの植物を村で栽培する事は可能だろうか?そういった事に興味が生まれてきた。人生が変わったと言うのはある一つのアイデアが元になっている。

 こういったまだ人間が知らない土地にある不思議な動植物を利用して今よりもっと豊かな食糧生産が出来るのじゃないか?もっとそれを進めて、僕がそれを探してみたいと思ってしまった。そう考えると今のミドルハンターとして屯田兵の生活が魅力的じゃなくなってしまった。ただ今スグにと言うのは難しいだろう。これをなんとか形にしたいと思うようになった。


 まずは村の皆にこの植物の事を話さないといけない。宝を独り占めしようとする気は全く無かった。それは今のままじゃ宝にならないから。すぐに村に帰って皆にこの事を話して植物を見てもらう事にした。

 僕らは危険の多い場所でハンターをしてるため、村の皆すべてが出るわけにはいかない。そこで数人が僕に付き添ってくれて見に行く事になった。


「おおこれはすごいな」


 僕はすぐ実演という事で食べて見せた。


「ジョナサンお前な…」

「でも誰かが最初に食べないと食料としての価値が分からないでしょ」

「何かまず動物に食わせるとか準備があっても良いじゃないか」

「うん参考になったこれからそうするよ…」


 ためらいは合ったが僕が食べたことによって皆食べてくれた。


「これ旨いぞ」

「でね、これ取りに来ても良いけど、どれぐらいの範囲であるのか?なども考えて、もし少なかったら僕らで作物として育ててみない?って皆に相談するためここに連れて来たんだよ」

「それは面白いな」

「美味しいだけじゃなくてまだはっきりはしてないけど、雪の中で成長するってのは他の植物とは違う性質がある。これを利用して農地として機能し無い冬の作物として使えれば単純に今までの2倍の食料が得られるんじゃないか?と思ってるんだよ」

「やろうこれは雪原地域の食糧事情を大きく変える作物になるかもしれない」


 村での栽培は驚くほど上手く行った。作物として自然状態じゃないと栽培できないだとそもそもすぐに頓挫してしまう。この植物は作物向きだった。ただ栽培の過程で分かったのは、どうやらこの植物は既存の植物の常識と全く違うと言うのが分かってきた。

 この植物は雪を栄養にして生きているようだ。そんな植物他には無い。だって最初は雪に強い植物なんだなと単純に見ていた。雪そのものが栄養源なんて奇妙な植物聞いた事が無い。お日様があって水があって、土があって植物は生長する。そんな常識と全く違う植物。

 雪の無い土ならもっと成長するんじゃないか?と実験的に栽培したら見事に失敗した。もちろんそれっきりで決定したわけじゃない。何度やっても上手く行かないのに雪原だと馬鹿みたいに簡単に育てられる。だからこの結論になった。


 今でも厳密にはどういう事なのか?は分からない。ただ自分が思ってる常識と違うんじゃないか?と思えてきた。そして僕が出した飛躍的な結論はこれ魔法の力じゃないか?と言う結論。基本的に植物は魔力や魔法と関係し無い。しかし、そういったモンスターもいることは居る。

 僕達は今まで出会ってこなかっただけで、それを常識当たり前だとしていたけど、その常識は間違ってるんじゃないか?と思いなおしてる。まだまだこの国は未知の生物に溢れている。


 しかしこういった事を破壊するようなことに直面する。モンスターの大群が現れたとかじゃない。普通に遅い春が来た。そしてそもそもこの村は次の年の春にはもうミドルハンターの仕事が終る予定だった。もう次のモンスター討伐の土地に向かう時期になっていた。

 多くの仲間は次の移転を希望している。ミドルハンターになるものは基本後は農民に任せて土地を手放してしまう。この村も例外じゃない。それでも仲間の一人アレックスだけがこの村に残ると言ってくれた。そして僕に相談してきた。


「なあジョナサン。お前は次の村に移れ」

「ええどういう事なんだアレックス?僕も残って栽培を雪食草の栽培を続けていこうと思ったのに」

「お前は何か勘違いをしている。これまでジョナサンと話してきて分かったのはお前は農業がしたいわけじゃない。自分のしたい事を間違えるな」

「えでも別にハンターをしたいわけじゃないよ?」

「話を最後まで聞いてくれ。ハンターはあくまでついでだ。次の土地でまた新しい変わった植物を見つけてくれ。ただそのための生活の糧が今のところ無いからハンターをついでにやった方が良いと話してるだけだ」

「なるほどその考えは無かった」

「俺が全面的に協力するから。お前は植物を探してくる。俺はそれを育てて金にする。儲かったらいくらか渡すから将来的には専門の植物ハンターになれば良い。この土地に向かないなら他の村の残ったハンター仲間に協力してもらえば良い。まずはここからスタートするんだ。軌道に乗るまでハンターを続けるしかないって話をしてるんだ」

「それは良い考えだ是非アレックスのその計画にのせてくれ」

「いやこれはお前の計画だ。ジョナサンが雪食草を栽培しようと言い始めなかったらこんな考えにならなかった。ただお前にはそれを金にする見通した無かったんだろ?だから俺たちに相談した。それに俺が乗った」

「うんそうだその通りだと思う」


 まだミドルハンターとして未知の土地を点々とする生活を続けていかなくちゃならないけど、僕の将来はミドルハンターじゃないとこの村での体験がきっかけで漠然と考えていた。ハンターは資格であり、ハンターと言う決まった事をする職業は無い。僕はハンターである前に植物探索者になるつもりだ。


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