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逃げたハンター

 ハンターは基本自分の手に余るモンスターとの戦いは逃げる事を推奨される。しかし常に例外はある。1チームで対応するにはモンスターの数が多すぎた場合は?その場合は全員で対応すべきと言う暗黙のハンター同士のルールがある。

 養成所では常に無理をし無いハンターと言う指導がされる。ハンターはモンスターを倒すのが仕事じゃないモンスターから生き残るすべを学ぶ場所になってる。でもそれは誰かがモンスターを倒すからになる。スペシャルなハンターが取り逃してしまうほどの数居たらどうなるのか?それは倒さなくてはいけない。


 当然その例外も教えられる。ただ逃げる事を重点的に教えるのは例外はさらっと触れる程度。その例外はハンターと言うモンスター討伐をする中で自分がどう対処すべきか?現場で学ぶことが多い。だってそんなの考えれば自ずとそうなるでしょ?となるから。ハンターに逃げろとまず教えるのと質が違う。これはハンター組織全体の問題で、その組織全体がパンクするような自体に対しては教えられない。

 でも当然例外として言われるのは滅多におき無いから。そもそも手に余るモンスターとの遭遇自体が珍しい。そういった自体を経験せずに一生ハンターとして過ごす。モンスターの大規模発生に出くわすなんてもう本当にそのハンターはついてない。


 それがベック・モラリスのついてなさになる。俺は別にモンスター養成所の指導に対して迷ったわけじゃない。これがそういう逃げる事例じゃないのは自覚していた。初めての事態で天変地異の様な稀有な出来事でも俺はそれに対して指導が紛らわしかったと言うつもりは無い。

 無駄に死ぬのが怖かった。パニックになっていたと思う。その点だけは言い訳したい。冷静じゃなかった。要するにハンター養成所の教えなんてそもそも考えてなかった。個人的なこれはヤバイと思う感情から逃げた。


 その日はゴブリン3匹と遭遇した。それは良かった。そこにオーク1匹紛れ込んでいた。人間よりも巨大な敵だけど、一匹だけなら恐れるほどじゃない。しかしゴブリンとの混成チームが不味かった。逃げる選択肢は無かったけど、慎重に対応して戦って倒した。


「ゴブリンとオークを分断しろ。俺がオークを受け持つ」


 ハンターである俺がオークに立ち向かう事にしてゴブリンを自警団の皆に任せた。それなりに魔法も使えるハンターの俺には危機と言うほどの敵じゃなかった。それでもこの集団すべて対応できるほどじゃない。魔法の遠距離によるアドバンテージを生かして距離をとって倒した。これも回りの皆がゴブリンを近づかせないように倒してくれたおかげだった。

 決して楽勝ではないし、詠唱抜きの魔法もあるが、強大な魔法の場合そうも行かない。その隙なんてそうあるものじゃない。だから直接近接で剣でやり合う事も度々あった。相手が金属の武器を持ってなかったのが本当に助かった。

 楽勝なんてとても言える勝利じゃなかった。ゴブリンだけなら楽勝じゃないといけない。オーク一匹でも。でもこの集団がそれなりのリスクだった。その前提が大事だった。


 終ったと思っていた。しかしそれは終わりじゃなくて始まりだった。この後の念のための見回りは念のためでしか無い。それは俺達の地域でモンスターがそんなにいるならハンターなんて連中は全滅してる。例えば群れから外れた1匹そんなのは度々ある。だから俺達はいつも締めくくりとして見回るんだ。


 再度の見回りでオーガの集団を発見した。ゴブリン並の敏捷性とオーク並みのパワー。オーガは一匹を自警団全員で倒すのがやっと。これが集団。俺はすぐに自警団のメンバーにハンターギルドにこれを伝えるように使いに出した。幸い離れていたのでスペシャルなハンターの到着まで襲われることは無かった。

 オーガ集団はこのチームに討伐された。問題はそこからだった。再度見回った結果大規模なモンスター集団がいるのじゃないか?との見解が出された。すぐに近隣の自警団すべてに応援要請をして、到着までまだ見回ってない地域を俺が見に行くことになった。


 俺はこの時に逃げた。自分が何をやってるか?は後で理解できた。この時は行方不明=モンスターに襲われて死亡として逃げられるんじゃないか?それだけを考えていた。チャンスは今しかない。

 無理だ。スペシャルチームは生き残れるだろう。しかしそれ以外のメンバーはどうなのか?ゴブリンとオークの小さな集団と互角だった自警団でそんな対応無理だろ。


 このままじゃ無駄死にだと思ったらもう自制する気持ちを失っていた。


 今俺は過去の事は偽ってハンターの居ない村の自警団の一員としてモンスター討伐をしながらその村で様々なお手伝いをしている。今の俺の過去はモンスターの大規模発生で村を失った一人の青年って事だ。全くの嘘ってわけじゃなかった。ただしいち早く逃げたのでその後どうなったか?分からないけど。


 ゴブリンの集団に命を落とすこともあったこの村で俺は自警団を指導して信頼を得ている。徐々に過去から解放されつつある。それでももし自分の過去が知れたら俺はこの村に居られないだろう。そしてハンターギルドの人間がこの村とかかわることが合ったらどう誤魔化せば良いだろうか。先の事を考えると安住の地を得たなんて気楽さはさすがになかった。


 明確に罪に対する罰があるわけじゃない。だからこそ養成所でもさらっとしか触れない。各自の判断に最終的にはゆだねられる。俺の逃げたタイミングが褒められたものじゃないのは理解してる。同じハンターの資格を持つ人達には俺は裏切り者だろう。

 だが一人の人間として間違った行動を取ったと思えないのだが。ハンターの制度自体無理があると思う。何十年に一度一部の地域であるか?何か?そんな自体に対してハンター個人の頑張りにすべてを任せてしまっている。だからこそ暗黙のルールって曖昧なものなんだろうな。必死に戦って生き残ったハンターにとって俺は許せない存在なのだとは思うけど。


 俺は自警団の一員だが今はもうハンターじゃない。そう思う事でハンター達への裏切りの気持だけは整理をつけていた。暗黙のルールを破った事でハンターを名乗る資格を失ったのだ。


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