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転生者なのに

 トム・ベイズは前世の記憶がある。だが転生者ではない。転生者には2つのタイプが居る。後から良く分かってなかった自分の力に目覚めるタイプ。そうじゃなくて最初から自分には特別な力を持ってるのを分かってるタイプが居る。俺は後者だ。俺はいつか転生者として認められて魔王を討伐しに行くんだ、そんな単純な未来は幻想だと子供の頃は分かってなかった。


 何時の頃からだろう俺の力じゃその未来は訪れないと分かってきた。最初は頑張った。


「俺前世の記憶があるんだよ」


 当時もう自警団で俺はモンスター討伐に関わっていた。基本的に転生者は身体能力が高い。皆そうやって子供の頃に片鱗を見せる。昔派良かった。前世の記憶だけですぐに転生者として候補になった。何時の頃からだろう偽転生者が流行して、前世の記憶は後々転生者が伝説となる時のエピソード程度のものになってしまった。

 前世を必死にアピールした。そういう偽転生者の話を知らなかったから。でも今は実力を示さなくてはいけない。特別なハンターを上回る特異な戦闘力。俺はそのレベルじゃない。自警団の仲間からは


「いやいや、トム確かに強いけど、人間離れじゃないだろ?」


 返答できなかった。俺はもう無邪気な小さな子供と違う。俺の能力じゃ自分が転生者だと認めてもらうのは無理だと諦め始めていた。それでも実績を重ねればと自警団を続けて村の代表としてハンター資格を取るまでは進んだ。


 でも分かってる人ほど逆に俺を転生者だと認めなかった。一抹の期待って奴だと思う。ハンターの資格を持ってる分かってる人に言えば理解してもらえるんじゃないか?と淡い期待があった。

 俺は小さな子供の頃皆に能力を話したときに未来が決まっていたんだろうな。今ではすっかり他人にいう事がなくなってしまったけど。あの頃は無邪気だった。


「俺は転生者だから魔王だけに特別に強く攻撃できる力を持ってるんだ」


 嘘つきとは言われなかった。俺はそこそこ強かったから。でもこれは駄目だと皆思っていた。偽転生者そのものじゃないかと皆思っていた。同世代ではちらほらいろいろ言われた。ただ年上の人はそれが自警団のメンバーとして頑張る動機になるならそれで良いと思っていたため否定しなかった。


 自警団のメンバー達はトムが居ないときに話をしていた。

「トムな、あれはどうなんだろうな。最近は言わなくなったけど、まだ思ってるのかな?」

「良くある偽転生者のものとは違うよ。凝った話だと思うよ。自分で考えた時これならと思ったんじゃないかな。そろそろ無理があると気が付いたんじゃないか」

「俺も子供の時は転生者による魔王討伐話しに憧れたからな。子供ゆえのものかな」


 生まれた時代が違っていたら転生者として華々しく魔王討伐に加わっていたのに。証明するために倒しに行けば?なんて思った事もある。でも魔王までのみちのりは大変だと分かった来た。ハンターの資格を持つ持たないでまずハードルがある。

 それを乗り越えても強さにものすごく開きがある。今の時点でも俺は魔王にたどり着くメンバーに認められないから入れない。そうなると死んでしまう。俺は最初から回りのパーティに魔王の所に連れて行ってもらう形でしか倒せない。

 そもそも魔族VS人間の戦いの最前線の特殊部隊が魔王討伐隊。大きな組織の一部隊なので自分一人で魔王を倒しに行くってのがありえない。って分かったのはハンターの資格を取った今なんだけど。


 なんとか良い方法が無いか?と思ってるけどとりあえず今は村に戻って自警団でモンスター討伐してる。今日もゴブリン討伐だ。てこづるってわけじゃない。ただメンバーに危険が及ばないようにするのは大変だ。俺の実力じゃそこまでだ。

 ハンターの養成所に行ったため分かったのは今俺達が危険ってわけじゃないが、自警団の皆で3,4匹のゴブリンを倒しに行くのだが、こんなの一人で倒せないと転生者としてありえないそうだ。

 後ろに目付いてるわけじゃないんだぞ?それは無理がある。そうまともに考えたらって話しだ。そもそも特別なクラスのハンターならやってしまう。その上を行くんだ。


 俺には分かってる。俺はその分特別なハンターとは比較にならないほどのダメージが与えられるんだろう。でも俺以外にはそれが分からない。魔王の所まで行くには足手まといでしかないメンバーを連れた討伐隊。その力があるのを証明する必要がある。どうやって?


「右の武器を持ってないゴブリンから倒せ」


 俺は今日もメンバーに指示を与えながら自警団のリーダー的な役割を全うしてる。だが俺本気出してないだけで魔王とやればすごいから。って今でも思ってる。

 今更危険を冒す必要があるのか?と言うと俺多分魔王相手なら危険じゃない。ひょっとしたらゴブリンより簡単に倒せるかもよ?ただそれまではすげー強い敵を部隊の皆に倒してもらってだけど。

 小さな子供の頃はシンプルな憧れだった。でもそういうものが無い今でも転生者として認められたい。名誉、金、地位、すべてがゴブリン倒すより簡単に手に入る。俺を魔王の前に連れて行ってくれれば。


 今でも諦められないから

「俺は魔王だけに強く攻撃できる力を持ってるんだ」


 って独り言を呟いてみた…。

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