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転生者じゃない

 リチャード・バームは前世(吉田祐一)と言う記憶がある。この世界では転生者と呼ばれる特別な力を持つ前世の記憶を持つ人達が居る。そしてそれが公然の事実となってる。とても少ない事例ではあるが、もう何百年も途切れることが無く転生者が生まれてきて大活躍をする。


 でも転生者は多くの人に認知されて始めて転生者としての人生を歩みだす。僕はこれが嫌。何故嫌なのか?と言うと僕は2度目の人生を本当に嬉しく思ってる。それを僕の知らないところですでに決まってしまった生き方をさせられる転生者で無駄使いしたくない。折角もらった2度目の人生の時間を僕のために大切に使いたい。


 多くの転生者の生き方を僕は本で知っている。それはこの世界で生きていく中で自然と憧れのものになっていく。僕はそれに対して前世の価値観に頑固だったといえる。転生者というヒーローに憧れる価値観に染まらなかった。

 まず前世の事を話さない。周りを子供を見てあわせていけば良い。幸い僕には兄が居てそれが良かった。年の近い兄を参考にこう振舞えば良いのかな?と補正が出来た。あくまで僕はお兄ちゃんの真似をする幼い弟と言う風に見られた。後は特別な力だが使わなければ良い。そして僕は使いどころではしっかり使った。

 自分の優れた身体能力もそれなりには使った。ただ人並外れたものだけ気をつければ良いだけで。無理に劣った人間を演じる必要なかった。やり過ぎなければ良い。


 ただこれは特別な力じゃない。僕は特に特別な力があまり無かった。優れた火の魔法が使えただけ。これは気を使った。身体能力の高さはガンガンに利用させてもらったが、魔法は気を使った。周りを見てほとんど使えないので僕は使わなかった。大半の人間が使わないから特に使う必要が無かった。


 でもそれだけじゃ駄目だった。なんと偶然なのか転移者が公になって転生者の役目を果たしてくれることになった。これで僕の世代の転生者を探そうって雰囲気が無くなるだろう。転生者や転移者は優秀なハンターや前任の転生者、転移者などとパーティーを組んで種数精鋭の魔王討伐隊になるのが使命になる。

 それゆえ結局そのパーティのメンバーの大半は今の世代の転生者じゃない。あくまで代表に過ぎない。場合によっては転移者が名乗り出た場合代表は転移者がなる事もある。代表の席が埋まっていれば転生者は特に必要とされない。その他のメンバーは優秀なハンターで代用できる。転生者が2人現れることは度々ある。

 それはそれこれはこれ。転生者は基本一人の代表が居れば良い。そうやって何百年も続いている。


 今回は休憩させてもらおう。普通に家の農業を継ぐつもりだ。


 ただ僕は油断してしまったのか、何の因果かかハンターになってしまった…。転移者が代表者になった油断があったんだろう。僕は自警団に友達が入るからってつい手伝ってしまってモンスター討伐の適正の片鱗を見せてしまった。アイドルのデビュー逸話のような親が無理矢理申し込んで、友達の付き添いで。ええ本当にそんな軽い気持でした。

 後は自警団の中あくまでそれなりに活躍していたら、何故か村の皆が快くハンターの資格を取るための養成所のお金を出してくれました。はーそこまでしてもらったら僕も無駄には出来ない。封印していた魔法を使いました。それなりに得意な火の魔法ととどめておいたけど、しっかりハンターの資格を取って村に帰りました。


 数年立って紅蓮なんて言う二つ名で呼ばれるぐらいにはハンターしていました。地方の地味だけどしっかり仕事をこなしてるハンターって程度なんです。ゴブリン程度じゃ特に当たり前にハンターしていました。オークだって僕も教育を受けています。普通に村のハンターの範疇です。ただいろいろと状況もあるわけです。


 自警団の仲間を助けるために


「危ないー」


 とっさに放った火の魔法がちーっとばかし強すぎたわけです。隠してたんですけどね、成長したと都合よく誤魔化しておきました。しかし次からはその成長の分働かなくちゃいけません。そんなのをどんどんやってると僕は中央の養成所から目を付けられてしまいました。

 僕が農業と兼業でやっていたのも大きいのでしょうね。兄が居た僕はハンターと兼業には都合が良かった。それゆえ養成所からの危険地帯での屯田兵をやらないか?と言う誘いを家族に相談したら、どーぞどーぞと村から追い出されてしまった…。


 家族は僕を追い出したかったわけじゃないです。ただ僕のおかげでしっかりと強くなってしまった自警団が僕をもう必要し無いぐらいしっかりした世代交代が出来る組織になってしまいました。ハンターと言う資格はあるけど、別に資格者だけがモンスター討伐をしなくちゃいけないわけじゃないです。ノウハウを吸収したら養成所なんかに金を落とす必要は無いわけです。

 才能を埋もれさせてはいけないとかで村の皆が応援してくれました。いやいや僕それ望んでないのですけどね…。


 結局僕はミドルハンターとして第2の人生を送ることになりました。良いんです。転生者として生きるよりはましです。僕は新しい村でモンスター討伐が落ち着いたら農地を貰って今度こそただの農民として生きていくつもりです。


「リチャード」

「ああ任せて」


 そう言って僕は最大火力をオーガにぶつけてやった。こいつはゴブリンや動きの遅いオークなどと違う。ゴブリン並に反応が良い動きでオーク並みのパワーで襲ってくる。明らかにワンランク上のモンスター。しかもそれなりにまとまった数で来る。

 もう分かってるんですよ。転生者って要するに人間じゃないんですよ…。僕は魔法無しでもこいつと身体能力だけで素手で上回る戦いが出来ます。


 僕が魔法を使うのは仲間のためです。もう僕は手抜きできません。自分を徹底的に鍛えていました。僕はなんとかなります。でも新しい村の仲間が死んでしまいます。彼らもさすが選ばれたハンターです。それでもその人達も危険が伴うから国から援助のお金が出ます。

 国としては新しい村から税金を取って増やしていきます。かつモンスターの支配地域を減らして他の地域の安全も得るという1石2鳥のプロジェクトです。ただ農地を広げるよりもモンスターを減らすことが主な仕事なので村のハンターとはレベルが違う。


 紅蓮はいつしか村のリーダーの様な存在になっていました。村長も悪くないなと思っていました。しかし現実は上手く行かないものです。結局国から認められて国の災害クラスモンスター討伐部隊に入れられてしまいました。


 後一歩で魔王討伐パーティーの一員だとなるのでしょう。この世界の価値観なら村のハンターからたたき上げた紅蓮の出世物語となるでしょうね。新しい村で自分の農地を得てゆっくりすごすつもりだったんだけどな…。どこで間違ってしまったんだろうな。幸い新しい村はもうすぐ危険地域から外れます。

 そこに僕の農地を貰ったのでいつかはゆっくり農民をして暮らすつもり。ただ何時になったら解放されることやら…。はーそろそろモンスターのレベルに命の危険が出てきた。


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