ハンター養成所
モンスターの討伐をするハンターそれが僕が目指す仕事。目指すといっても強くなりたいって程じゃない。たまたま地元でそういった活動に関わる中で中央に推薦されただけで、憧れの仕事なんてものじゃない。だって危険だしその割にお金も左程貰えない。選択肢として悪くなかった。ただそれだけの理由になる。
やろうと思ったのはやっぱり向いてるから。自分ではそれほどは思わない。僕の理想は絶対死なないぐらい楽勝であることになる。リスクがある割にたいしたお金にならないから。強さがリスクの軽減になるなら到底僕の納得する強さにはなれないだろうと思ってる。僕との比較でなら向いてない人はいるんだと思う。
僕は強い部類だろう。しかし生きているとなると全勝しなくてはいけない。僕の強さは、他の人が10回戦って5回は死んでしまうなら。僕なら1回だけで済む。なんて言えない。それで死んでしまうのだから。なんのための強さなのか?たった1回負けてしまう回数を減らすためにハンター養成所に行くことになる。
ゆえに勝てない=引き分け徹底は負けじゃない。むしろそれが僕の強さじゃないかな。養成所に行く前から村の自警団でなんとかモンスター被害を防いでいたけど、我流じゃそろそろ限界が来る。ハンターの資格を大人たちは持ってなかったけど皆から期待されて推薦されて養成所に通うことになったと言うより、お金を出してくれる事になった。
金さえ払えば養成所には誰でもいける大事なのは資格を取るのは行くだけじゃ駄目。それでも無駄にはならない。村に戻って自警団の一員としてレベルアップできるのだから。
我流じゃ何故駄目なのか?でまず僕の村には資格持ったハンターが居ない。ハンターの多くは、村から推薦された子供が資格を取って村に帰ってくることでスタートする。だから養成所に行かなくてもハンターの師弟関係の様なもので村の警護ぐらい十分可能。自警団が素人集団だから。
しかしそれは本質的な答えじゃない。何が素人と違うのか?魔法になる。素人じゃ魔法が初歩的なものしか使えない。後は一応プロとしての戦闘訓練だろう。例えそれを実戦で乗り切ったとしても魔法だけは養成所に行かないと無理。
多くの場合は親がハンターで子供もと世襲が多い。選ばれた能力よりもやはりハンターが村にいるか?居ないか?の方が重要。その点僕はかなりハンデを持った入学だと言える。そして僕がこれから村のハンターの世代の繋がりを生む起点となる。世の中上手く回らないもので、多くのハンターに憧れのようなものを持ってる人間は親がハンターである子が多い。
そしてその子は養成所に大体は来ない。家で習えてしまうから。モチベーションが低いってわけじゃないがハンターになりたいって強い気持ちがあってじゃない。かといって村のためにとか強い気持ちも無い。どっちかと言えば面倒を押し付けられたと言う気持の方が強い。何か他に特技あるなら多分断わっていた。
ただお金を出してくれたんだ。僕は多分ハンターに向いてるんだろうなとは思う。モンスター討伐をする動機は世襲。モンスターに知り合いが殺された。貧乏。そして最後に向いている。世襲の場合ハンターの資格は取らない。だから3つの動機がハンターになるきっかけになる。最後の向いてるが僕のハンターになる動機だった。ただ魔法を使った戦闘じゃないのだが…。
引退した高いレベルのハンターが先生になる事が多い。
「であるからして」
今日も魔法の授業を受けている。魔法の実地訓練もあるけど、座学の方が重要かもしれない。何せ魔法を使ったことが一度も無いのだから、全く何をやって良いか?分からない。良くこれまで生き残ってきたと自分でも感心する。
はっきり言えば退屈だ。大事なのは分かる。村のお金で期待を背負って乗るもある。それでもそもそもまともな教育を受けた事が無い僕には知識を吸収すると言う作業自体が面倒極まりない。眠くなりそうだが何の成果も出さずに村に帰るのは辛い。しかも自分のためにも将来一本立ちしてやっていくのだから死んだら困る。
多くの村の自警団のメンバーは兼業でやっている。しかし、ハンターの資格があるなら話は別だ。村で出してくれる。ただその代わり村の自警団全体の強化、後進の育成や、皆の先頭に立って守らないといけない。
全く何も分からないのだからとまずは2週間ほど聞いてるだけだった。だがそれが良くなかったのか?全く頭に入ってない。そのうち実地が始まるそれまではなんとかし無いと…。
「ラッセル君聞いてるかね?どうもぼーっとしてるのだが大丈夫かね?」
「すみませんちょっと眠くなってました」
先生は呆れていた。ただ先生は入学のための選抜が無い弊害が分かっていてどうしようもない生徒だとは思ってなかった。この学校では良くあること。多分あの生徒はまともな教育を受けるのが始めてなんだろう、と見ていた。実際そうだった。実戦により選抜されたような生徒が集まる。
その点では選ばれた人間になってる。ただ知識の学習と言う点ではまるで選抜されてない。そのため意欲はあるが空回りと言う生徒はざらにいて、そのせいでやる気が落ちてくる生徒が毎年当たり前の様に居る。
生徒も先生も何かしらの打開策を打ち出さないとまずいと思っていた。ハンター養成所入学2週間目の魔法の授業での一生徒の悩み。
ただ生徒ほど先生は深刻に考えていなかった。毎年良くあることなので。呆れていたから見放したじゃない。ある種の通過儀礼のようなもので、危機感を持たせるためにオーバーに表現していたところがある。他にも何人か居るためそれらの生徒を集めて別個にもっと簡易な授業の計画を立てていた。慣れたもので入学時における年中行事の様なものであった。