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叶わぬ恋

作者: 時雨 爽

勢いで書き上げたもので見づらいところはあるかもしれません(すみません……)が、読んでいただけると嬉しいです♪

「嫉妬は醜いだけだよ」

 わかってる……

「周りを巻き込んじゃダメ」

 理解してるつもり…………

「愚痴ってもハルカの女が落ちるだけだもの」

 それなのに、厳しい友人の声はイヤっていうほど心に響く。

 こみあげてくる自分に対する情けなさと醜さになにもいえなくなってしまう。

「ハルカ、電話は控えたほうがいいよ。少しならいいかもしれないけど、ずっとだと疲れちゃう。それに、距離が近すぎるのもよくないと思うな」

「うん……カオルがいうこと、わかってるつもりだった……理解してるつもりだったの。私がバカだったのよ……」

「ハルカはよく頑張ったよ……?」

 普段凛としてクールな印象を与える親友のカオル。カオルにここまで温かみのある言葉をかけられて、私は瞳から大粒の涙を流すことしかできない。まっすぐストレートな黒髪も切れ長な黒曜石のような瞳も私の憧れで、笑った時に少しできるえくぼが可愛らしいことも親友の私は知っている。普段冷たい印象を与える細い目でやさしげに私を見つめるカオル。眉は困ったようにハの字形になっていて、申し訳ない気分になる。

「ううん、みんなに迷惑掛けてる。カオルにも友達にも彼にも……」

 好きな人の一番になれれば、どれほど幸せなことだろう?

 好きな人の隣で笑っていられたら、どれほど嬉しくなるだろう?

 それはもうとても言葉じゃ言い表せないくらい、幸福な気分で満たされるのだろう……









「こんにちは!」

「こんにちはー!ハルカちゃん髪切った?」

「おお、よく気づきましたねヒロ先輩!実は休日に美容院いきまして」

「やっぱりかぁ。だいぶ切ったんじゃない?勇気いったでしょ?」

「ですです!夏だから煩わしくなってバッサリきってもらいました!!」

 何気ない会話も時々思い出すとツライ。

 叶わないと知ってたらこんなに心惹かれなかったのに……

 先輩は誰とでも分け隔てなく接する人。自分に向けられてるのは好意ではなく、仲良くしたいって気持ち。トモダチとして。



 やさしくて明るくて、無邪気な先輩に惹かれてく。



 それは時間の問題だった。









「はーるかちゃん!」

「は、はぃぃっ!?」

 学校の休み時間。真面目に本を読んでいた私の背後からいきなり人の気配がして、驚きのあまり変な声をだしてしまう。


「なによんでんの?」

「えっと、ライトノベル……です」

「あー」

「……」

 正直、幻滅されると思っていた。マイナーな作者のラノベ。よりによってなんで今読んでるか自分に問いたい。サイアク……


「いいよね、この人の小説。オレは好きだよ。マニアックっていわれるけどね」

 私が読んでた小説をひょいと持ち上げて、作者の部分に人差し指をあててほほ笑む彼に……私はキュンときました。



「先輩って、好きな人とかいないんですか?私なんかと歩いてたら変な噂たちますよ!」

 冗談のつもりで思い切って尋ねてみた。

 それは学校の帰り道。

「好きな人かぁ……じゃあ、付き合ってみる?」

 風に揺れる長めの茶色の髪。歩を止めて振り向きざまに立ち止まり、ニコリと彼は笑う。

 夕日が照らす彼の横顔があまりにもキレイで……

「……えっ?」

 でも、唐突のことに私は疑問に疑問で返してしまう。

「ハルカちゃんがよければだけど」

 言い終えて、右手を差し伸べてくる彼。握手すれば合意の意味ってこと??

 こわいと思った。知るのが怖い。近づくのが怖い。だけど、このままなのはもっとイヤ。

 このままいれば、明るい先輩と仲のいい友達でいれるかもしれない。

 トモダチでは満足できなくなっている自分が……いた。


「よろしく……お願いします」


 私は彼の右手に自分の手を添えて、ギュッと握りしめた。









 それからが大変だった。

 お友達じゃなくなって、彼女になってからが……心が折れそうになる日々。

「アカリが課題の小論文かけなくて困っててさ……ハルカ得意だろ?教えてやってくれない?」

 本人に頼まれるなら……わかる。なんで彼女の私が彼の女友達に勉強を教えなきゃなんだろう……

 ヒロ先輩だって、文章を書くのは得意なはずなのに。なんで……よりによって…………私なんだろう?

 







「よろしくね、ハルカちゃん。今回は無理いっちゃってごめんねー」

「いえ……」

 放課後の図書室で私はアカリ先輩に勉強を教えることになった。

 アカリ先輩は朗らかで背もスラッと高くて髪も私と違って長くって、なんていうんだろう……年上のおねえさん。そんな感じがしっくりくる人。

「さっそくだけど、見てもらってもいいかな?」

「はい……」

 鞄から取り出された用紙に目を通す。悪くないと……思うんだけどなあ。

 教科書のお手本みたいに見事な出来の小論文に、私は愕然とする。

「私がアドバイスできることはないかもしれません」

「え……?」

「完璧だと思いますよ」

「そうかなぁ……ヒロくんがハルカちゃんに見てもらったほうがいいっていうから頼んだけど、まさか褒められるなんて。予想だとここがだめ!こうじゃない!ちがう!って怒られるイメージだったの」

 そういってクスリと笑うアカリさんは、本当に心までキレイな美人さんで……

「……」

 

 私はなにもいえませんでした。





 その日からいつもは気にしていないのに、なぜかヒロ先輩のあとを目で追うようになってしまっている自分がいた。たいてい横に並んで笑っているのはアカリ先輩。美男美女。長身でルックスもよくて、並ぶ姿はとても絵になる二人。だけど、見るたびになぜか心が痛む。なんでだろう……?



 そんなある日、聞いてしまった会話。



「ヒロ先輩ってかっこいいよねー」

「ねー、でも彼女いるんでしょ?」

「えー、絶対ちがうって!」

「そうなの~?」

「だってヒロ先輩、アカリ先輩のことが好きでこの学校にきたんだよ?女の子と手あたり次第付き合ってるみたいだけどさー、本命はアカリ先輩っしょ!」

「なんだー、やっぱりあの二人両思いなのー!?」



 気づいたときにはその場を駆け出していた。

 聞きたくなかった、知りたくなかった。

 どうせ聞くのなら本人に言われたい……そう思ってた。



「もしもしー?ハルカ最近電話でないけどどうした?」

「ハルカ、なんででないの?」

「さみしいよ……」

 留守番電話がたまっていく日々。

 電話を最近頻繁にするようになったヒロ先輩からだ。

 さみしい。

 さみしいよ。

 けど、このままはいやだよ……







「ヒロ先輩、私のことが好きですか?」

 その一言がいえなくて。

 うやむやなまま続く関係。

 だけど、先輩はさみしいといって私のケータイに着信をいれてくる。 

 学校で隣に並んで笑ってるのはアカリ先輩。

 私のことをヒロくんのお友達と最近アカリ先輩に言われた。

 これからも仲良くしてあげてね!と。

 傍から見ればおかしい、わかってる。

 だから、もうやめよう。



















「ヒロ先輩、私好きな人ができました」



























 いつもと変わらない帰り道。

 私は先を歩く彼から差し出された右手を握り返さない。

 泣き腫らした目で、お世辞にもキレイといえる状態じゃないぐちゃぐちゃの顔で笑って告げた。嘘だってついてみせる。それでこのうやむやな関係が終わるのならいいんだ。呆気にとられた先輩を置いて、私はその場を走り去る。





















 そんな帰り道。

 たくさんの人に迷惑をかけて、得たものはなにもなくって。

 強いていうなら恋愛失敗談。そんなところだった。

 明るくて無邪気で雰囲気をよくしてくれる先輩。

 私の友達ともすぐに打ち解けて、嫉妬したのをなだめてくれたり。

 けれど、本当に好きなのは私じゃなくて。

 名ばかりの彼女。

 アカリ先輩のことが好きなら、脇目もふらずにそっちへ行ってほしかった。

 始めから、さみしいからとか、アカリ先輩とうまくいかないからって私に電話する暇があるなら、本人にアタックするべきだし、それに気づきながらもヒロ先輩にあまえて少しでも振り向いてほしいと、我儘になって彼を手放さなかった私も悪い。



 こうして私は大人の女性になっていくのだろうか?







 カオルみたいに客観的に物事を見れるようになりたい。

 











 そう強く思った秋。

 

一人の女の子が恋をして、成長する話を書きたかったはず……が、あってるのかわからない状態に。好きな人の好きな人になることは難しい。でも、遠回りしてでも本当の恋をできたのならいいと思う今日この頃。



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