【3・5】歩夢と来夢のらぶらぶ日記~その1~
【4】に続く話です。
バタン。
ドアの閉まる音。
その音で目が覚めた。
―ここは、どこ?
ムックリと起き上がり、寝ていたベッドに座る。
自分の隣には、よく見覚えのあるあどけない顔をした白髪の少女。
かわいい、妹。
続いて辺りを見回す。
まず目に飛び込んだのは自分の真正面に貼られたポスター。
かわいい女の子のイラストが書いてある。
他にも壁には大小さまざまなポスターがいくつか貼られている。
それから、自分のいるベッドの横にある机。
きれいに整頓された机。
消しカス一つなく、なにやら厚い難しそうな本がビッシリと並べられている。
それからその机の向かいに本棚。
・・・・・・・?
そこで首を傾げる。
全てブックカバーで覆われている。
中には薄い本もある。
なんだろう。
興味が湧いてきた。
「ん・・・・・しょっ、と」
ベッドから降りる。
「んん・・・?」
なぜか着ていた服の帯がほどけている。
まあ、邪魔だし暑いし全部脱ぐか。
ベッドの横に服を脱ぎ捨て、下着一枚になる。
動きやすい。
本棚のところへ行く。
―まずはこの本!
なにやら文庫本のようだ。
わくわくしてページを開く。
一番最初にカラーのイラスト。
よくみると、開けるようになっているみたいだ。
ピラっとな。
―なんか肌色が多い?
―下に書いてあるのは文字かな?
―うーん・・・・・、読めないや・・・・・・・。もっとこの世界の言葉を勉強すればよかったなぁ・・・・
―でもなんでスーツ着た男の人がハダカの女の子をお姫様抱っこしているんだろう・・・・・・?
うーん、うーん。
深い思案の波に囚われそうになったとき。
「お姉ちゃんっ!何見ているのっ!?」
妹の声が響いた。
「あ・・・・・、おはよう、来夢」
「おはよう、お姉ちゃん。で、何見てるの?」
「これ」
イラストがよく見えるように本を見せる。
すると来夢は。
「・・・・・・・・っ!?!?!?!?///////」
声にならない声を発し、顔を真っ赤にした。
「来夢、この世界の文字、読めるんだよね?なんて書いてあるの?」
「おっ、お姉ちゃんにはまだ早いです!見ちゃ駄目ッ!!!」
本を奪われた。
あの冷静な来夢がここまで取り乱すとは。
一体何の本だったんだろう・・・・?
「それで、お姉ちゃん、具合はもういいの?」
「ほえ?具合?」
何か悪かったっけ??
「覚えてないの!?あんなに熱を出して!」
「ねつ・・・・・・?」
覚えてない。
え?え?何?何があったの?てゆーかここどこ??
「もう!お姉ちゃんたら!ワープに失敗して水に落ちちゃったんでしょ!?」
あ、あ、あーーーーーー。
そんなことがあったような気がしなくもなくもない。
うん。完璧に記憶から消去されてました。
「思い出した?」
「うん!完璧に思い出したよ!」
「ほんと!?」
「ほんと!」
「じゃあ何でここに来たかわかる?」
「わかんない!」
・・・・・・・・。
「お母さん」
来夢が言う。
ほえ?
お母さん?お母さんって―?
「思い出せない?」
「うん」
「そっか」
それきり、来夢は黙る。
なにやら思案顔。
難しい顔している来夢もかわいいぞー。
「・・・・・まあ、覚えてないのならいいよ。でも、ちゃんと思い出してね?」
はーい、がんばって思い出すー。
何故覚えてないのかはわからない。
でも今わからないことはいつかわかる!
思い出せるその日が来るまで待つよ!
「じゃあ、ご飯食べようか」
わーいご飯だー!
来夢のご飯、おいしくて大好き!
何杯でもいけちゃう!
今日もたくさんおかわりした。
ところで気になっていることが一つ。
「来夢」
「何?お姉ちゃん」
「ところでここどこ?」
来夢に聞いた話ではここは熱を出した自分を介抱してくれた少年の家らしい。
その少年のおかげで自分は助かったらしい。
顔も名もしらないが、感謝するぞ、少年。
「それで?これからどうするの?」
いつまでもここにいたらその少年に迷惑では?
ところが来夢は。
「んー、適当に理由をつけて住ませてもらう。他に行くところもないでしょう?」
「え?迷惑じゃない?」
「でもお姉ちゃん、今かなり力を失っているけど?ワープできる?」
確かに。ごもっともな指摘。
今の自分はかなり力を失っている。
これじゃあニンゲンにも勝てないよ。
「私はまだワープできる力は習得してないから、できないし」
うーむ。
来夢はなんでもできるけどこればっかしは私しかできないしなー・・・・。
「じゃあ、私の力が戻るまでここに住ませてもらおう!」
「うん、そうしよう!」
話がまとまった。
後はこの家の主が帰ってくるのを待つばかり!
それにしても、この家の主はどこへ行ったのかな?
いつ帰ってくるんだろう。
まさか、ずっと帰ってこないってことは・・・・・・ないよね・・・・?
ちょっと不安になった。
よし!この家の主が無事に帰ってきたときのためにお出迎えの準備をしておこう!
玄関待機だ!
・・・・・・・・・まだかなー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、だ、か、なぁー・・・・・・・・・・・・・・・・?
お腹すいた。
もうお昼かな?
「あれっ、お姉ちゃん。いないから寝てると思ったよ。何しているの?」
「待ってるの」
「何を?」
「この家の主さん」
「・・・・・・・」
あれ、どうして黙るの?
おーい、おーい?
「さっきから思ってたけどお姉ちゃん、どうしてパン一なの?」
「暑いから!あとこのほうが動きやすい!」
「んー・・・・・、服、着て?」
「やだ!」
「熱出ちゃうよ?」
「もう出た!」
・・・・・・・・・・・・・・。
「まあ、何をしようとお姉ちゃんの勝手だけれど、ちゃんと服は着てね?」
「はーい」
絶対着ないけど。
「じゃあ、私は向こうにいるからね?」
「うん」
そういって来夢は立ち去っていった。
よし!待とう
まだかな?まだかな?
・・・・・・・もう疲れたよ。
・・・・・・・・・・・・遅いなあ。
・・・・・・・・・・・・・・・・眠たいなあ。
そこで意識は途切れた。
ちなみに来夢はあの後、海斗の部屋にあるブックカバーのかかった本たちを読んですごしてました。
来夢、何歳だっけ・・・・・・・・?