【5】新しい日常
いろいろ飛んでます。矛盾とかあるかもしれません。
「う、んっ・・・・?」
朝。
目が覚めると。
僕の両端には二人の女の子が寝ていた。
右に寝ている女の子。
銀色のさらさらストレートな長い髪を持つ美しい女の子。
左に寝ている女の子。
白色のボブカットのさらさらした髪を持つ可愛らしい幼女。
そして二人の頭には髪と同じ色の耳が生え、時折ピクピクと動いていた。
顔を洗ってリビングに行くと、二人が起きてきた。
「おはようございます、海斗さん」
「にゅにゅにゅ・・・・?お、おは、ふぁ~ぁ」
「お、おはよう」
互いに挨拶を交わす。
「ご飯、作りますね」
そういってキッチンに立つ幼女―来夢。
「え、いいよ。僕はいつもパンだし」
「そう、言わないでくださいよ。お世話になるお礼です」
来夢はニッと笑う。
「これからは、毎日私が作ります。だってお姉ちゃんは私の料理しか食べませんから」
「でも、僕の料理もかなりおいしいと思うけど?」
「あなたなんかがお姉ちゃんを満足させられる訳ないでしょう」
ちょっとムッとした。
「そんなこと!」
「じゃああなたはお姉ちゃんの好きな食べ物がわかるの?」
反論しようとした僕の言葉を遮る来夢。
「お姉ちゃんの好きな味、料理、食材。嫌いな味、料理、食材。すべてわかるというの?」
う………。
言葉に詰まる僕に勝ち誇ったような顔で来夢は言う。
「わかる訳ないよね、会ったばかりだもの。私はわかるよ。生まれたときからお姉ちゃんの妹だもの。年の数だけ一緒にいるもの」
「すみませんでしたぁっ!」
土下座。
完全に僕の負けだった。
そこに起きたはいいが完全に起きれず、プライベートルームからリビングに続くドアのところで倒れていた歩夢が顔をあげた。
「にゅ…?は、はうっ!これは素晴らしい土下座!美しい…」
土下座を褒められたのは初めてだった。
朝ご飯はとても美味しかった。
案の定、歩夢はご飯をがつがつ食べ、何度もおかわりしていた。
こんな細い体のどこに入るんだという感じだ。
来夢は綺麗に箸を持ち、丁寧にお上品に食べている。
「あ、そういえば洗濯するけど洗ってほしいものとかあるか?」
そういえば来夢はここに来たときの巫女さんのような赤と白の服のままだ。
歩夢は昨日僕が貸した服を来ているけど、最初に来ていた巫女服(?)はどうしたんだろう…?
「それは私に脱げと言いたいの?」
来夢が言う。
この子10歳だよね!?
どうしてそういうことが言えるの!?
「あ、いやないならいいけど…」
「私の服はこれだけよ。お姉ちゃんの服もね」
・・・・ん?
昨日割烹着着てなかった・・・・・・・?
少し違和感を覚える僕をよそに、来夢は横目でチラッと未だにご飯をがっついている姉を見る。
「だから、洗濯するために新しい服を買ってきてちょうだい」
まじでーっ!?
今日は生徒会があるんだよなあ…。
「ちょっと遅くなってもいいか?」
「いい」
「じゃあ、学校の帰りに買ってくるから」
僕が言うと。
「ガッコウ…?」
来夢は首をかしげた。
「え、まさか知らないの?」
「なあに、それ?」
「僕が毎日言って、勉強したりなんだりしているところだよ」
そこでふと、時計に目をやる。
「やべ、もうこんな時間。じゃあ、行ってきます」
慌てて玄関へ。
「ガッコウとやらに行くの?」
後ろから来夢の声が追いかけてきた。
軽く手を挙げて応える。
鍵…かけてこなかったけど、来夢はしっかりしているようだし大丈夫だろう。
放課後。
今日こそ生徒会がある日だ。
生徒会室へ向かう。
ドアを開けると駿河君がいた。
彼は昨日と同じように僕のもとへ走ってきた。
どーん
すごいスピードで僕に抱きついた。
「ごふっ」
よ、避けきれなかった…。
そのまま勢い余って廊下に倒れ込む。
ごちん
「はぅあっ!?」
床に頭をぶつけた。
後頭部がじんじんする。
一方、駿河君はというと、僕の上に覆い被さるようにだきついて、僕の胸のあたりに頬擦りしている。
「はぁ~会長の胸です~。ちょっと貧弱な気がしますが、そこがまたいいですぅ~」
貧弱とかいうな貧弱とか。
「あの…苦しいのでそろそろ退いてもらえると嬉しいんだけど…」
僕の体から動こうとしない駿河君におそるおそる言うと。
「ボク、今会長に苦しみを与えているんですね!これはこれで素敵です!」
あーあ、駄目だこりゃ。
そのとき。
ドサッという、何か重そうな物が落ちる音と「ひっ」という小さな声。
見ると、長い艶やかな黒髪のサイドをピンクのピンで止めた少女が、カバンを落とした姿勢で固まっている。
彼女は確か・・・・・、生徒会メンバーだ。名前は覚えていないけど。
足元には紺色のスクールバック。
気まずい雰囲気が流れた。
「あ、あわわわわわ…」
「えーっと…?」
彼女は僕と駿河君を指差し、ビシッと言った。
「お、男同士でそ、そんな…!だ、駄目です!そんなこと…!」
あ、なんか誤解されている。
しかし、それを聞いて駿河君は。
「な、何なんですか!あなたは!いきなり来てそんなことを言うなんて!ボクが誰を好きになろうと自由じゃないですか!どうしてあなたにそれを否定する義務があるんです?いいですか?恋愛というのは必ずしも異性同士というふうには決まってないんです!ボクと会長の清い交際を邪魔するというのならば…いいでしょう。受けてたちますよ」
え?え?
僕、駿河君と付き合っていたっけ?
駿河君の言葉を聞いて彼女は顔を真っ赤にする。
「だ、駄目です!とにかく同性愛は駄目なんです!私が認めません!」
「あなたが認めなくてもボクが認めているからいいんです」
「駄目です!駄目です!」
もうほとんど泣き叫んでいるような彼女。
どうしよう…この状況…。
途方にくれかけたとき。
「実結、やめなさい」
彼女の後ろから彼女と全く同じ顔をした少女が現れた。
髪を止めているピンの色まで一緒とはどういうことだ。
彼女も生徒会メンバーだ。
同じ顔の人がいるなーと思った覚えがあるから間違いないだろう。
「そんな昔女の子と付き合って破滅したからってヤキモチやかないの」
「ここでそんなこと言わないでよ!真結のばか!」
どうやら彼女―実結は同性と付き合っていた過去があるらしい。
「とにかく、私は同性愛を推奨するから」
実結と同じ顔をした少女―名前は真結だったか―は僕たちを見て言った。
「うちの実結がご迷惑かけてすみません。どうぞ続けてください」
そしてスッとカバンからビデオカメラを出す。
…何に使うんだ…?
駿河君も不審に思ったらしい。
「あ、いえ…そろそろ生徒会始まりますので…」
と言って、僕から体をはなした。
「それでは第二回生徒会を始めます」
生徒会室に円上に並べられた机と椅子。
黒板側の真ん中に座っているのは僕。
右には実結さん。彼女は生徒会副会長だ。左は本来、生徒会書記長である良太の席なのだが、彼は何故か欠席。
一年生のころから生徒会を欠席することはたまにあったのであまり気にしていない。
その空いた良太の席の左隣に生徒会会計長の真結さん。黒板の前には書記次長の駿河君。
白いチョークで「第二回生徒会」と書いている。
あれ、こんなに少なかったっけ・・・・?
そう思ったとき。
「待たせたな!」
バーンとドアを開け放って一人の男が入ってきた。
こいつは・・・・・!
紛れもない先日の自己紹介で「我が名は愛飢男!いつも愛に飢えている!そこでこの学校を愛の溢れる学校にしたい!まずは全校生徒でカップルを作ろう!」とか言って生徒会の先生に怒られた奴だ。
愛飢男というのはもちろん本名ではないだろう。
本名は・・・・なんだったかな・・・・?
あれ、本当になんだっけ?
とりあえず彼の名札を見る。
名札がついてないっ・・・・・!?
「遅いぞ。もう生徒会は始まっている」
とりあえず名前を呼ばないで叱る。
「おや、会長。私の名前をお忘れかな?我が名は愛飢男!常に愛に飢えている!」
「そっちの名前じゃねぇーーーーーーーーーーっ!!!!!」
思わず絶叫してしまった。
「ん?私の真名の方か?いいだろう。ルシファー・クリステル・フィボナッチだ」
何だその聞いたことのある文字の羅列。
「違うよ。君の本名だよ」
「あの名は捨てた。もうその名で私を呼ばないでくれ」
だから呼ぶも何もこいつの本名を知らないんだって・・・・・!
もうやだ。
「まあ、どうしても俺の本名を知りたいのならばそこにいる会長の愛人、駿河君に聞いてみてくれたまえ。彼は僕と同じ一年生だからな。当然、一学年の間では有名な正義のヒーローである、私の名を知っているはずだ」
駿河君は僕の愛人じゃないんだけどな。あと一人称が変わってる。こいつ、有名なのかよ。
駄目だ。ツッコミが追いつかない。
「駿河君」
「鋼銀河さんです」
即答する駿河君。
「かっこぇぇーーーーー!!」
本名かっこいいじゃん。
いい名前じゃん。捨てるなよ。
「鋼銀河君」
「くっ・・・・!支配魔法をかける気か・・・・!ぐあっ!やはり名前の支配力は強い。だから本名を教えたくなかったのだ」
「とりあえずウザいから黙ってくれるかな?」
にっこり笑って言う。
「あ・・・・・・・はい、すんません・・・・・」
「じゃあ生徒会を始めようか。まずは後期の活動計画を確認しよう・・・・・・」
こうしてようやく生徒会は始まったのだった。
生徒会ってよく雰囲気がわからないんですよね・・・・。私のそういう経験って小学校の書記局くらいで・・・・。私の通っている学校ではちょっとやらかしまして、私は生徒会室入室禁止令出されちゃったんです。